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死の受容 - 今週のおかえりモネから -

ああ、りょーちん...心の糸が切れかかっている….。
気がかりがついに現実に(いや、ドラマの中での話ですが!)

■ 全部やめていいかな

金曜日(8/27)の「おかえりモネ」。
主人公モネの親友、亮が築地に用があるから、と船にのって東京へ遊びに来る。
ところが深夜の母親から気仙沼に戻る船に乗っていないと電話が。

その後、モネからの電話に出たりょーちん。ひとこと

俺、ぜんぶやめていいかな。
俺、モネにしか言える相手いない

といってまた電話をきる。

その数日前。
震災で行方不明になった母親の死亡届を出してほしい、と祖母が父親に頼みに来た。娘をきちんと見送ってから、自分も死を迎えたいという高齢の母親の悲しい、そして苦しい願いだ。
一方「そんなことはできない」と父親はまた一時辞めていた酒に手を出し、また荒れ狂い、警察の世話に。

りょーちん、もう耐えられなくなったのだろう。
震災で母を、家を失い、父はアルコール依存症に。
モネにしか言えない…一人でどれだけ苦しみを抱えていたことだろう。

りょーちんに思いを寄せるみーちゃん(モネの妹)は「がんばってきているのに」「逃げられられない」と叫ぶ。彼の心のうちを代弁しているようだ。

いいこなんだもの、りょーちんは。


妻(りょーちんにとっては母)の死を受け入れられない父。
受け入れられないくらいに、喪失感は深く、心は悲鳴をあげている。
けれども、その喪失感は、やはり本人がひきうけるしかない。

■ 死の受容の5段階

アメリカの医師エリザベス・キュプラーロスは、死を受け入れるまでの受容過程を次の5段階に分類している。

1.  否認: 死の訪れを認めない。「ありえない」と目を逸らす
2.  怒り: 死(の訪れ)に対する怒り。「なんでこんなことが!」
3. 取引:死から逃れるための取引。「〜するから助けてください」
4. 抑うつ:死から逃れられないとわかり、無力感に陥る。
5. 受容 :死を受け入れる。心に穏やかさが訪れる。

順番は必ずしもこの通りではない。また自分自身の「死」に対する受容過程だといわれているが、個人的には自分の大切な人に対しても同様におきると思う。

りょーちんの父、新次は時にお酒を飲んで荒れることもある。
行動だけをみると、一見「否認」「怒り」の段階にあるように見えるだろう。

けれど、以前「(震災から5年経って)全く変わらない」と言っていたことから、むしろ「抑うつ」状態が長く続いているのだと思う。お酒は「抑うつ」を誤魔化すための「痛み止め」だ。

■大切な人を自分だけで大切にしようとしない

自分の大切な人には幸せでいてほしい。
ただ、そうしてがんばっても、相手が幸せにならないこともある。
そうすると、悲しいかな、相手も自分も不幸せになってしまうことがある。

いまの新次、りょーちん親子はまさにそういう状態。

「深刻な問題に対処する時は、
当事者ではない人間のほうがより深く考えるべきだ。
今痛みを抱えている人や近しい人は考えることすらつらい」

という菅波先生(坂口健太郎)の言葉どおり、
りょーちんは、新次の問題から一旦距離をおいたほうがいい。
距離を置くことは、親を愛することをやめることではないのだから。
自分を幸せにすることからはじめよう。

「モネにしかいえない」と言えたりょーちん。
じゃあ、新次には誰か言える人がいるのだろうか。
全くもって似たもの親子に思える

りょーちんにとってのモネのような存在が
新次にも現れますように。
お酒ではなく、彼が彼を生きる力を取り戻せるように。

大切な人を自分だけで大切にしようとしなくていい。
誰かの力を借りて、そのぶん、自分自身を大切にしよう。

その前に、お願いだから、二人でちゃんと泣いてくれ…
(前と同じこと言ってる、わたし:w)


【追伸】
話は違うけれど、永瀬廉の演技力に感心。「すーちゃんと会うとホッとする」「みーちゃんかわいいね」という一見明るい言葉、彼が言うとどことなく翳りがある。りょーちんがずっと抱えているあやうさ、張り詰めている感じ、寂しさが見え隠れする。

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