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スリーパー効果〜何を言うか、誰が言うか|臨床心理士への随録 心理学

「結局、何を言うかより、誰が言うかだよね。」会社員時代に同僚がよく半ば自虐的に呟いていたセリフです。これって本当なのでしょうか。

社会心理学者ホブランドは、信憑性の高い説得者低い説得者による説得効果を比較する調査を行いました。いうなれば著名なご意見番と一般市民に同じ内容で説得させてみて、説得を受けた人がどう態度変容するかをみる、という様な実験です。

説得直後は前者の影響による態度変容は多く、後者の影響による態度変容は少ないこと、しかし時間の経過とともにその差は縮まり、ついには説得の効果にほとんど差がなくなることを発見しました。この、信憑性の低い説得者からの説得が、時間の経過とともに説得効果が増加する現象が「スリーパー効果」です。

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こうした現象が生じる理由は、時間の経過とともに、説得者の信憑性に関する記憶と、説得内容に関する記憶が分離し、前者は比較的早く忘却され、人への信憑性によって抑制を受けていた説得効果(内容)が回復するためと考えられています。スリーパー効果は仮眠効果、居眠り効果などと訳されることもあり、説得者の信憑性が眠ってしまう…という意味でこの名が付けられたそうです。

誰が言おうが、内容がもっともであれば、説得効果はある。ただし、誰が言うかによって、効果が最大化する時間差が違うということです。

この調査では時間の経過を四週間とっています。「1ヶ月も待てないよ」という場合には、信憑性の高い人に説得してもらう方が良いみたいですね。

本質でいえば、誰が言うかより、何を言うかの方が大事なようです。

【参考】河合塾KALS 大学院入試対策講座テキスト