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「グループスーパービジョンでのバイジー体験」 臨床心理士への随録 心理学

「下手糞の、上級者への道のりは、己が下手さを、知りて一歩目」(スラムダンク・安西監督)

9月中旬に院生同士でセラピストとクライエントに分かれて1対1の心理面接ロールプレイを行い、その様子を記録した映像と音声で逐語記録を作成し、先日、教授を含む7名でグループスーパービジョン(以下GSV)を実施しました。スーパービジョンとは、対人援助職者(スーパーバイジー)が指導者(スーパーバイザー)から教育を受ける過程をいいます。 指導者が援助者と規則的に面接を行い、継続的な訓練を通じて、専門的スキルを向上させることを目的としています。

7年前に通った産業カウンセラー養成講座では、傾聴のロールプレイをたくさん行いました。当時は「相手に対して無関心な印象を受ける」「クライエントの気持ちに注目できていない」「言い換えがズレている」など、基本的な部分をよく指摘されましたが、その後「話を聴く」意識を高めて仕事に取り組んできた効果があったのか、今回のGSVでは「話を聴く姿勢」や「気持ちへの寄り添い」についてはお褒めの言葉をいただけました。

ロールプレイでの設定は、初回インテーク面接を終えての2回目の心理面接。本セラピストとクライエントは初対面。クライエントは22歳の大学四年生。厳格な父と優秀な妹と優柔不断な母の四人家族。就職活動中で、企業面接に行くと会社のドアの前で足が動かなくなるという主訴をお持ちです。30分間のロープレなので、クライエントの気持ちに寄り添うことと、家族などの生活環境の情報を得ることを目的に臨みました。

掲げていた目標はある程度クリアできました。GSVで気がついた、足りなかった部分は主訴の堀り下げです。足が動かなくなると困りますね、お辛いですよね、という共感に止まり、精神医学的に真っ先に疑うべきパニック症候群のことがすっぽり抜けていました。また、どんな企業を志望しているのか等の就活自体についての深堀りがあってもよかったし、足が動かない状況についての聞き込みが足りなかったように感じます。セラピストは自分で勝手に判った気になって面接を進めていた気がします。

教授からは「傾聴一辺倒ではなく、自分が感じたことを言葉でFBしてクライエントに促すと、やり取りに動きが出てくる時もある」と指導を受けました。「話を聞いていて、私としては妹さんに対する気持ちと就活の事が関連しているように感じたのですけど、どう思われますか?」「企業面接では入口で足が止まるけど、今日の心理面接は足が止まらなかったですか?違いって何だと思われますか?」こんな質問があってもよかったのでしょう。

あとは、最後の締め方です。「で、あなたはどうしたいですか?」というクライエントの意思を確認した方がよかった。主訴やこの面接の意義についての確認質問は、何回も繰り返し行うことで双方のズレがなくなります。「今回来てよかった。話ができた、わかってもらえた。次回も来てみよう。」と思ってもらえることが、最初の面接で一番大事なことなのです。

書籍には「(特に初回面接では)クライエントの話を内容で聴くのではなく、構造からその人を理解しようとすることも必要である」とありますが、そんな余裕は持てませんでした。次回は意識してみようと思います。

スーパービジョンは自分の癖や傾向を客観的に知るよい機会になります。クライエントの最大利益のためにとても重要なことだと実感できました。