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「有能感の落とし穴 〜来談者中心療法」 臨床心理士への随録 心理学

心理面接を行っていると、セラピストの一言でクライエントの表情やこころが一瞬にして晴れるときがあり。

もちろんクライエントにとっては良いことである。恐ろしいのはその時セラピストのこころに生じた有能感。この反応を生み出したのは俺の手柄、俺ってすげえ、という自動思考。芸人のサンドウィッチマンが「お笑いを、してやってる、という感じになったら終わりだと思ってる」と答えたインタビューを思い出した。

有能感。それ自体は人が生きていくために必要な感覚だ。自分は何かをできる人間で、少なからずとも世と人の役に立てている、と思えない人生は余りにもきつい。

本当にセラピストが凄いのだろうか。

来談者中心療法の創始者カール・ロジャースは「人は誰もが自己概念(≒理想)と経験(≒現実)を一致させていこうとする自己実現傾向をもっている」という前提に立ち、「クライエントはセラピストとの関係を通じて、あるがままの自分と問題に気がつき(自己洞察)、あるがままの自分と問題を受け入れ(自己受容)、より自己一致した状態(自己実現)に近づいていく」と唱えている。

自分の力で道を切り開くクライエントが凄いのだ。セラピストは「共感的理解」「無条件の肯定的配慮」「自己一致」の3つの態度を磨き、クライエントとの適切な関係性、つまり環境を整えることに尽力する。

セラピストは傲るなかれ。勘違いの美酒に酔い潰れたら終わってしまう。