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夢の中の探しものが、ポストに届いた朝の回想



夢を見た。


夢の中のわたしは、かつて弾いたことのある曲の楽譜を必死で探しているのだけど、見つからない。

まとわりつくような焦燥感に、しだいに身動きが取れなくなっていく。



朝、目が覚めたら、しばらく夢のことはすっかり忘れていた。

そしてポストには、随分前に予約していた書籍が届いていた。

封を開けて、中身を出し、パラパラとめくって適当なページを開いてみる。

その瞬間、涙が溢れてきた。

と同時に、夢の中で楽譜を探していたことを思い出す。

そしてそれが、リアルに目の前に現れたような現象に驚く。

夢と現実の境目が曖昧な、不思議なタイミングだった。

届いたのは藤井風「HELP EVER HURT NEVER」のピアノスコア。

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わたしは彼の歌がめちゃくちゃ好きだ。多分今、誰よりも好きだ。同じアルバムをかれこれ3ヶ月近く聴いているが、全く飽きない。それどころか、一曲ずつゆっくりと自分の中に染み込んできてる感じがしていて、アルバムの上から順番にハマる曲が入れ替わっていく。彼のメッセージが少しずつ細胞の隅々まで行き渡っていこうとしているのがわかる。

彼の曲を歌うためにピアノが弾きたい。そんな風に思わずにいられなかった。それからまもなく、ピアノスコアが発売されることがわかった。すぐに予約した。こんなに純粋にピアノを弾きたいと思ったのは初めてのことだった。

ようやくわたしにも、自由に心からピアノに触れられる時がきたような気がした。


わたしは4歳からピアノを習っていた。

楽しいと思った記憶は、エレクトーンを使ったグループレッスンのアンサンブル演奏と楽典くらいだ。

中でも、聴音や作曲、変奏などを学んでいるときは、なぜかめちゃくちゃ楽しかった。

個人レッスンでは、ほとんど嫌々弾いていた。練習もレッスンギリギリまでしなかった。仮病で休んだことも何度もある。

その反面、学校の合唱コンクールのピアノ伴奏や音楽の授業、作曲コンクールなどになると、なぜか楽しかった。でもその当時、音楽にまつわる“楽しい”と“楽しくない”の間にどんな違いがあるのかまで掘り下げることはなかった。

何年か前までは、ピアノの練習を全くしていないのにレッスン日がやってきて、どうしようどうしようと慌てては、とてつもないストレスを感じている夢をよく見ていたほどだった。


転機は、高2の時に訪れた。

選択音楽の授業で、自由な音楽表現をする課題を出された時だ。わたしは友人とピアノ&ボーカルのデュオを組んで、オリジナル曲を作ることにした。友人がピアノで作曲し、わたしがボーカルで歌詞を書いた。それを授業内で発表したとき、ものすごい反響が起きて違うクラスにまで広まった。その時はあまり実感がなかったけれど、今となってはそれがわたしの創作を加速させる原点だったのかもしれないなと思う。

自由に音楽を表現するのはこんなに楽しいのに、ピアノのレッスンだけは相変わらず楽しめなかった。

それでもわたしは、高2の夏、音大(短大部)に進学することを決めた。理由は安易だ。今更ペンを持ってノートに向かう気力はなかったし、花のキャンパスライフ的な雰囲気のキャピキャピした大学生活には馴染める気がしなかったからだ。音大のような専門教育に特化している目的意識が明確な場所の方が、自分には合っているような気がした。

それが正解だったかどうかわからないが、ピアノに向かう姿勢は特に変わることなく、大きな試験の前だけ練習して、あとは居酒屋のアルバイトに明け暮れた。

そして卒業以来、ピアノを弾くことはなかった。



わたしがピアノに費やした時間はおおよそ16年だ。

両親に習わされていた感があるのはやはり否めないと思う。それでも16年もつづけて、音大に進学することは自分で決めた。そして卒業後も頭の片隅では気になるのに、ずっと触れずにきたピアノ。

ここ数年の間に、わたしはジャズボーカルを習ったり、アコースティックギターを習ったりする機会に恵まれた。だけど、何故か途中で問題が起こり、続けられなくなった。ギターをやめたのも今年の初めで、習い事どころではなくなってしまったからだ。

どうしても音楽がしたくなるのに、別の問題が浮上していつもシャットダウンさせられる。不思議でしかたなかった。

でも最近、いろんなことがクリアになってきてる日々の中で、本当に向き合いたかったのはピアノだったのかもしれない。そんな気がしている。

習わなくても弾けるし、それこそ、好きな曲を好きなように演奏できる。娘に教えてあげることだってできる。

ピアノを離れてから、もう21年が経った。いつのまにか、ピアノに費やしてきた時間よりも随分と時は過ぎてしまっていた。

でも、きっと必要な年月だったんだろうなって今となっては思う。なんとなくではなく、純粋に“弾きたい”その意志を持って、ピアノと向き合うために。

最初の一音はどんな風に響いてくるだろう。久々の再会の瞬間を想像すると、胸がキュッとなる。








しかし、ひじょーに残念なお知らせなのですが…

我が家にはまだ、ピアノがないのです…

わたしの気が変わる前に、早く買ってほしい。

宮古島の旅でリラックスしてるときの旦那さまに、さりげなく頼む作戦でいかせていただく予定です!

買ってもらえたあかつきには、テンションMAXで ご報告いたします!

勝手にポチッてしまいたい衝動をなんとか抑えつつ、他にもグッドなアイデアがないか、ちょっと考えてみよう。

健闘をお祈りくださるとうれしいです ❤︎






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