見出し画像

一歩を踏み出す…

私は湖畔のカフェにきている。
少し古びたイメージのあるテラスのような造り、白のペンキが所々剥げていてアンティーク感が素敵。

私が通されたのは屋外のガーデン席。
目の前に広がる広大な湖畔と森林が見渡せる。

「うわぁ~、綺麗!」

湖畔にキラキラと反射する光、飛び立つ鳥たちの鳴き声。自然の持つ美しさにしばらくうっとりしていた。
というのも現実世界では、忙しさに心が押さえつけられ苦しくて呼吸すらままならない…
ゆっくりと休みたい、眠りたいと思っていたからだ。

「お待たせしました。」

驚き振り返ると、ウェイターが料理を運んできた。
湯気が立ち昇りジュ~っと音を立てて、なんとも食欲をそそる分厚いステーキに、お皿に広げられた真っ白なお米がツヤツヤしてて美味しそう。

いつ注文したんだろ?と思いながらも、「ありがとう」とにこやかに伝え、ナイフとフォークをもつ。

するとあたりが一気に夕焼け色に…
さっきまで湖畔でキラキラと反射していた光はなく、沈む夕日が今度は湖面を照らす。

『えっ!なに?』

外に気を取られ気づかなかったが、先程まで賑わっていた店内や、テーブルに置かれた料理もなく私は誰もいない店内に立っていた。

『どういうこと?何も食べてないよ!』
状況の変化より、食事ができなかったことのほうに苛立ちを感じていた。

店内をゆっくりと窓辺に向かって歩いていく。
先ほど自分が通されたガーデン席へと繋がる観音扉が見えたので開く。

ギギィ〜

扉の錆ついた音が静かな店内に響く。
ゆっくりと庭に出るとそこはすぐ湖のほとり。

…誰もいない。

夕日がゆっくり沈み、あたりが薄暗く月明かりに照らされている。よく見ると湖畔に蛍が飛んでいるのが見えた。

『うわぁ~、綺麗。この景色凄く画になるなぁ』

昼間から夕方、そして夜の湖畔が見せてくれる色々な表情に感銘を受けた。
夢の世界だとわかっているが、記憶にしっかり残しておきたい!この気持と一緒に…


私はしっかりと景色に目を向け記憶に刻んでいたその時。

バキッ!!枝の折れる音に驚き振り返って、さらに私は悲鳴を上げそうになる口を押さえた。

そこにいたのは湯婆婆に似た雰囲気を持つ老婆(以後老婆)と、かっぱや狸に天狗など、多くの妖怪と呼ばれる者達が立っていた。

「ふぅ〜、やぁっと来たか」と老婆が杖をつきながら私の方へ近づいてくる。

「ん゙ん゙~…」私は品定めでもされているのだろうか、足元からゆっくり頭の上まで見た老婆が話し始めた。

「お前は固い!固いのじゃ!それでは何も見えんし変わらない。」

いきなり何の事?意味が分からない。
しかし何故か声が出せないのだ。

「さて、目の前をみよ」老婆は私にそう言うと、杖を湖畔に向けて指す。「ここにいる者たちもお前と同じ、お前がこの者達の道標となり導け!」そういうと老婆は杖を地面に突き刺すと大きく両手を空に向け広げた。

「さぁ!行け!一歩を踏み出すのだ!」

その迫力に怖さを覚える。
しかも、行けと言われても目の間には広大な湖しかない。一歩踏み出せば湖に沈むだけだしどうすればいいの?とパニックになっていた。

すると老婆は杖を取り、それを私に向けて叫んだ。

「それがお前の弱い所だ!固定概念に囚われ恐れ一歩を踏み込めぬ!己を信じて進め、できぬことはない!」

もう、その迫力に私は恐る恐る足先を湖につけてみる。やはり普通の水…沈むのは当然。

しかし『己を信じろ…か…』
もしかしたら水の上は歩けないと思い込んでるだけで、歩けると信じれば?自分ならできると信じれば歩ける?と気持ちが座る。

もう一度目を閉じ『私ならできる!歩けるんだ』と歩いているイメージをし、一歩踏み込んでみた。


すると不思議なことに決心して進めたその足は、沈むことなく湖の上に立っているのだ。

後ろからは沸き立つ声。
そして老婆が吠える。

「さぁ!皆のもの続け!」

わぁー!!と私が歩を進めるペースに合わせ、後ろにいた妖怪たちがついてくるのだ。

私は目的もなくただ歩を進める。

そして思った。歩けないと決めつけてた自分が愚かだと、勇気を持って進めたその先にはこんなにも大きな達成感と自信に満ち溢れ、心の底から沸き立つ心地よさがあるのだと。


この進めた歩の先にはまだ続きがあり、妖怪城のようなところに行き、探索するといった話があります。メッセージ性があまり感じられなかったので省略します。

この夢を見たあと、やりたいと思った事にチャレンジするようになりました。その結果自分の求めていた働き方や資格もとったりと、どんどん叶っていったんです。自分を信じてポジティブでいることの大事さに気づかせてくれた夢だなと思います。

現在は色々あり心の病気になってしまいました。またこの時のような自分に戻れるようにカウンセリングなど取り組んでいきたいと思ってます。





この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?