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なるほど東照宮(7)

それでは続きです。

日光市観光協会
パンフレットより


陽明門

陽明門

東照宮の中でも一番有名なのが陽明門。
高さ11.1m、幅7m、奥行4.4m、12本の柱による二層造りの門です。
その名は、京都御所の十二門のひとつに由来します。
江戸初期の彫刻・錺金具・彩色などの技術の粋が集約されたもので、一日中眺めていてもあきないことから「日暮し門」とも呼ばれます。
東照宮には、5000を超える彫刻が施されていますが、この門だけでも508の花・鳥・動物・霊獣などの彫刻があります。
この後、少しづつご紹介しましょう。

額と麒麟(きりん)

額と麒麟

後水尾天皇の筆による勅額の両横にあるのが麒麟の彫刻です。
もちろん、首の長いキリンではなく、霊獣の麒麟です。
ビールのラベルでよく見かけますが、少し違うところがあります。
それは、体の鱗。
ビールのラベルのものは、鱗がありますが、こちらのものは鱗がありません。
比べてみるとおもしろいですね。

竜と息

竜と息

勅額の下に、2段に並んだ霊獣、上段が竜、下段が息。
「息」はその読み方すらいまだ不明だそうです。(通常「いき」と呼んでいます。)
息が竜と違うのは、牙があること、ひげがないこと、上唇に鼻孔があることです。
ちなみに、この竜と息、同じものが並んでいるように見えますが、ひとつひとつの彫刻が口の開け方などが違います。
十人十色、同じもの(人)はないという意味が込められているのでしょうか。

目抜きの竜と竜馬(りゅうば)

目抜きの竜と竜馬

横木に彫られた宙を舞う竜が「目抜きの竜」です。
勢いを感じる造形ですね。
その左右が竜馬(りゅうば)、足に蹄のある竜です。
麒麟にも似ていますが、竜馬は2つの角を持ち、牙がありません。
また、蹄も割れていない奇蹄です。

司馬温公の瓶割(しばおんこうのかめわり)

高欄に並ぶのが「唐子遊び」、中国の子どもの遊びの彫刻です。そのいくつかをご紹介しましょう。

司馬温公の瓶割

中央にあるのが、「司馬温公の瓶割」、中国の故事に基づくものです。
中国の政治家・司馬温公が、子ども時代、友達を助けるために父親の大切にしていた瓶を割ってしまいましたが、父親に怒られなかったという、命の大切さを教えるエピソードです。

孟母三遷(もうぼさんせん)

孟母三遷

正面に向かって右端にあるのが「孟母三遷」。
ご存知のとおり、孟子の母が孟子のために、墓地の近く→市場の近く→学校の近くと住環境を変えた故事に基づくものです。

この他、鬼ごっこや雪遊びなど、20の彫刻があります。
家康公が、子どもたちが安心して遊べる平和な世の中を願いここに配置したと言われています。

周公聴訴(しゅうこうちょうそ)

下層組物間にあるのが、中国の故事・伝説に基づく人物の彫刻です。
そのいくつかをご紹介しましょう。

周公聴訴

中央にあるのが、「周公聴訴(しゅうこうちょうそ)」。
古代中国の政治家・周公が、髪を洗いながらも人々の訴えを聴いた故事によるものです。
向って右隣には、訴える人の彫刻があります。

孔子観河(こうしかんが)

孔子観河

「孔子観河(こうしかんが)」。
孔子が河を観ている様子で、過ぎ去るものは川の流れのように休むことがないことを表しています。

琴棋書画(きんきしょが)

琴棋書画

そして、左右両端の2つずつは、「琴・棋・書・画」の彫刻です。
(*写真は「棋」)
「琴・棋・書・画」とは、為政者に求められる教養で次のような意味合いがあります。
弾琴(琴) みんなの心がひとつになれる音楽の大切さ
囲碁(棋) ルール・規則を守る大切さ
展書(書) 文字や言葉でとるコミュニケーションの大切さ
観画(画) 素晴らしいものを素晴らしいと認める大切さ
これらは、家康公の理想、幕府の政治理念を表すものと言われています。

随神

随神

陽明門の左右両側にいるのが、随神。門番・守り神です。
その衣装に桔梗の紋があることから、徳川三代に仕えた天海大僧正が明智光秀(家紋が桔梗紋)と同一人物だとする夢のあるミステリーもあります。(事実ではないと思われます。)

昇竜・降竜

昇竜・降竜

陽明門の通路の天井に描かれているのが狩野探幽作の昇竜(のぼりりゅう)・降竜(くだりりゅう)です。
昇竜は別名「八方にらみの竜」、降竜は別名「四方にらみの竜」とも呼ばれます。

ところで、竜の爪の数にご注目ください。竜の爪は3本ですね。
これが、中国では5本、朝鮮では4本なのです。
中国に敬意を払って、数が少なくなっていると言われています。

逆柱(さかさばしら)

逆柱

陽明門は、12本のケヤキの柱からできており、表面には貝殻をつぶした白い顔料(胡紛)で塗られています。
柱には、猿の顔のような模様(グリ紋)が付いていますが、1本だけ上下逆になっています。(写真の右から2本目)。
これは、完成したものを造ると崩壊が始まる(たとえば、満月は欠けていく・・・)という発想から、それを避けるため意図的に造られたものです。


以上、陽明門のご紹介でした。


(つづく)

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