見出し画像

大切な人が突然に

第1章 「春の朝の悲劇」

春の日差しが優しく降り注ぐある朝、私はいつものように家族と過ごしていました。小学生の三人の子供たちと妻と一緒に、賑やかに朝食を楽しんでいたその時、突然、妻が倒れました。驚愕と恐怖が一瞬で家中を包み、私の心は凍りつきました。

「救急車を!」私は慌てて叫びました。
時間が止まったかのように感じられる数分後、救急車が到着し、妻を病院へ運びました。

病院での診断は「脳卒中」。
その言葉が私たちの心に重くのしかかり、未来が暗闇に包まれました。

なぜ?さっきまで元気だった妻が?

職場に連絡をして、数日の休暇を申し出て、学校へも連絡を済ませたが、
何の予備知識もない私は、妻の意識が戻るのを待つしかなかった。

手当が早く、妻の命が助かったことに感謝し、リハビリが始まりました。


第2章 「変わりゆく日常」

妻が入院している間、私は家事と子供たちの世話を一手に引き受けることになりました。朝は子供たちの支度を整え、学校へ送り出し、その後仕事へ向かいます。仕事が終われば急いで病院へ行き、妻の様子を見に行く毎日。
子供たちは不安な気持ちを抱えながらも、できる限りのことを手伝ってくれました。長男は妹たちを励まし、次女は洗濯物を畳むのを手伝い、末っ子も精一杯の笑顔で家族を支えました。

病院では、リハビリを受ける妻の姿に心が痛みましたが、同時に希望も感じました。彼女は必死にリハビリに取り組み、少しずつ回復の兆しを見せていました。
入院中の病室では、同じようにリハビリに励む人々との出会いがありました。彼らの努力や前向きな姿勢に触れることで、私たちも勇気をもらいました。


第3章 「社会の狭間で」

妻が退院してからも、私たちは多くの問題に直面しました。リハビリは続けなければならず、在宅ケアの準備も必要でした。
しかし、行政や福祉の制度は複雑で、どのような支援が受けられるのか分かりづらいものでした。病院のソーシャルワーカーに相談することで少しずつ情報を得ることができましたが、すべてを理解し、適用するには多くの時間と労力が必要でした。

特に、在宅ケアの費用負担は大きな悩みの種でした。医療保険の範囲外となる部分が多く、家計への負担が増すばかり。地域の支援団体やボランティアもあることはあったが、症状が重度の方に優先する雰囲気もあり、十分なサービスを受けることができないまま進みました。ネットなどで調べながら、少しずつ前進していきました。


第4章 「共に生きる力」

何より、同じ障害となった方々との交流が何よりも勉強になり、彼らの助けがあってこそ、私たちは日々の困難を乗り越えることができました。彼らの経験談やアドバイスは実際の生活に役立つものばかりで、心の支えにもなりました。
ある日、病室で隣に入院していたおじいさんと話す機会がありました。
彼は長い間リハビリを続けており、家族との再会を心待ちにしていました。「諦めないことが大事だ」と彼の言葉に励まされ、妻も私もさらに頑張ろうという気持ちが強まりました。

また、病院のスタッフも私たちを支えてくれました。看護師さんたちは常に笑顔で接し、リハビリの担当医は丁寧に説明をしてくれました。彼らの温かいサポートが、私たち家族にとって大きな支えとなりました。

新たな生活は確かに困難を伴いましたが、家族一丸となって乗り越えていく中で、私たちの絆はより一層強くなりました。子供たちも、困難な状況を通じて成長し、お互いを思いやる気持ちが育まれました。


第5章 「未来への希望」

この経験を通じて、私は共生・共創の社会を実現するためには、以下の三つのことが重要だと感じました。

  1. 情報の透明性とアクセスの向上:制度や支援の情報が一元化され、誰でも簡単にアクセスできるようにすることが必要です。インターネットや地域の情報センターなど、様々なチャネルを活用して情報提供を行うことが重要です。

  2. 包括的な支援体制の構築医療、福祉、行政の連携を強化し、利用者が一つの窓口で必要な支援を受けられるようにすることが求められます。例えば、地域ごとに統合的なケアマネージャーを配置し、個々のニーズに応じた支援を提供することが考えられます。

  3. コミュニティの力を活用する:地域コミュニティの力を活かし、支援ネットワークを広げることが必要です。ボランティア活動や地域のイベントを通じて、助け合いの精神を醸成し、誰もが安心して暮らせる社会を目指すべきです。


結びに

日本の人手不足は深刻で、特に福祉サービスはシビアです。その反面、必要のないサービスを提供されることもあり、ミスマッチもあります。有限な保険制度の根本的な見直しがされないまま、裕福だった日本の制度では、成り立たなくなるということは、まず、一番、障害になった当事者が感じることだと思います。健常者が考えた制度がすべて正しいわけではない。当事者の要望がすべていいわけでもない。お互いの立場も思いも、理解しあって、制度化できるようになるダイバーシティインクルーシブ社会を日本人全員が身に着けて、それを、日本の品格として誇れるようになることを願います。

いつそうなるか、わからない。

災害も、認知症も、がんも、たくさんの方の経験と理解と知識で、いまの予防や支援方法が定着しました。
脳卒中について、まだまだ、患者のデータ数値化すらされていない状況です。担当医やセラピスト・施設も少ない。医学の進歩で死亡者は減ったが、その分、後遺症を抱えて長い時間、不自由な生活をしていく患者や家族は増加しています。明日、どんな病気や事故で、あなたも同じような状況になるかわからない。だから、しっかりした予防できる知識を持てるよう、ひとり一人が興味を持って、共に支え合い、共に生きる社会を築くために、一歩ずつ前進していきましょう。


#創作大賞2024

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?