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自分が幸福か不幸か分からない感覚。これもまた、きわめて現代的な感覚だと僕は思っています。【読書感想文】

鴻上 尚史の「名セリフ!」を読んだ。
『演劇』と聞いて、何が思い浮かぶだろうか。
有名なロミオとジュリエット、レ・ミゼラブルなどの作品名や、
劇場、そして役者やミュージカルというようなジャンルなど、、
連想できる言葉はいくつも存在する。
私の中では、幼少期に鑑賞会という名で、はらぺこあおむしの作品を観たのが最初の記憶だ。

演劇は、どこか馴染みがないようで私たちの生活とは深い関わりがあるもの
だとこの「名セリフ!」を読んで思う。

人形は、自分の頭で考える必要がないから、人形なのです。
そして、自分で責任を取る必要がないから人形でもあります。
そして、自分の頭で考えないこと、責任を取らないことは、
じつはとても楽なことぐらい、みんな知っています。

「名セリフ!」鴻上 尚史

この一節を読んだとき、こんなにも人間の泥臭く素晴らしい側面を
言葉にしているのか、と感動すら覚えた。

思わず声に出したくなるような演劇の名セリフを集めたこの本は、
名場面がぎゅっと詰め込まれており、窮屈な気もするが、
そんなことはなく、
自分の魂の叫びというか、言い表せない、
自分でも自覚していない感情がいくつも芽生えた本だった。

名セリフだけでなく、役者さんの掛け合いのコツや作品に対しての想いも
率直に描かれているのが、この本のもうひとつの魅力だ。
ドラマや映画を観るのが好きな私にとって、
ただ作品を楽しむだけでなく、
『このセリフを自分が話すとどのような表情 / 感情になるのだろう?』
と新たな視点を得ることができた。

おまけに、というと
私の好きな星野源の楽曲に「喜劇」というものがある。
アニメSPY×FAMILYのエンディング曲にもなったこの曲は
どこまでも続くと信じている私たちの平和な日常を
歌っている。

つまり、私たちの日常は「喜劇」であり、
演劇は私たちの日常を鏡のようにそのままうつしているのだ、と
この本を読み解釈が深まった。

毎日働いて、ごはんを食べ、眠る
そんなサイクルが続く私の日常はどのような演劇になるのか
自分はどのようにこの演劇(=人生)を生き抜くのか
考えるきっかけになった
そんな1冊でした。

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