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映画『LOVE!TAMAGAWA!』脚本【VOL.6】

○204号室

寛人、冷蔵庫を開けてぎっしりつまっている食材を見て困りそうな顔。

左手でスマホを持ってレシピを見なが ら右手で鶏肉を炒める寛人。

寛人「にんにくおろし、にんにくおろし、どこ?」

フライ返しを置いてにんにくを探す。

寛人「ここ!あった!」

焦げたにおいがする。

慌てて肉をひっくり返す寛人。それでも何枚か焦げてしまった。

寛人「やっぱりできないな」

焦げっぽいクリームチキンとブロッコ リの煮込みを食べながらテレビを見る寛人。何度もチャネルを変えても小林裕のCMが目に入る。

小林裕の料理を作るCMがテレビスクリーンに映っている。

○203号室

瞬、同じCMを見ている。

瞬「かっこいい!そうだ、台本の主人公にも料理を作るシーンを書いておこう」

○204号室

寛人「ただの演技だろう。どう見ても家では全く料理をしないで、奥さんに食わせてもらうタイプ」

○203号室・ベランダ(夜)

壁にかかりよってiPadで台本を書いている。

瞬(小さな声で)「女主人公は男主人公の料理を作る姿を見て、まるで近距離で芸術品を鑑賞するように…それから、男主人公は『出来上がり、どうぞ』って、女主人公は…何と言おうかな…普通は何と言うのかな…ありがとう?それともおいしい?…セリフが出て来ない…きゃあ…なんか小林さんは目の前で料理を作ってくれてるみたい…」

隣からベランダのドアを開ける音が届く。

○204号室・ベランダ

寛人、壁にかかりよって座る。ギターを抱えて米津玄師の「アイネクライネ」を弾きながら歌う。

隣のスマホにチャットの画面にとどま っている。

平井へのメッセージ「とは言っても、隣からの料理のにおいも、洗剤のにおいも、それから多摩川の眺めも、大好き。ありがとう平井さん」

平井から「どういたしまして」の大げさなスタンプが届く。

○203号室・ベランダ

瞬、寛人の歌声を聞いて和らぐ。うっとり。

外には多摩川の夜景が広がる。

○教員室(朝)

授業用のテキストを片付ける瞬。

前田「大岡先生、この四日間ご迷惑をおかけしました」

瞬「いいえ、お子さま、体調はもう大丈夫ですか」

前田「気をかけてくれてありがとうございます。だいぶ治っています。これから授業なんで、お先に」

三浦「大岡先生、教頭先生のお呼びです」

前田との会話を終わらせて教頭室に向 かう瞬。

○教頭室

瞬、教頭の机に向かって立っている。

教頭「成績優秀の3年A組の代わりに、学校で一番できが悪いクラスを担当させたこと、多少不公平に思ってるかもしれないが、大岡先生本人が一番よくわかるはず。やはり大岡先生において、学校内でほかにはいないんですから」

瞬「はい」

教頭「この仕事の大変さがよくわかります。なので、普段どのように教えているのか私は一度も関与したことがありません。けど、さっき言ったように、『生徒の成績が悪いのは大岡先生のせいじゃないか』という保護者がいらして…何と言うんですかね、教師という仕事は思ったほど単純ではない。性格も成績も違う生徒にはどのような教え方をするのか、また保護者たちにどのように対応するのか、もう少し頑張って知恵を絞らないとね。二週間後の期末テスト、生徒たちの成績に期待してますよ。失敗しないようにね。まだ若いでしょう、また文句をつけられたら、教育業界には居場所なくなっちゃうかもしれませんよ」

瞬「はい。おっしゃった意味承知しました」

○教員室

宿題を添削する瞬、ノートに生徒が間違えやすい問題を写している。

スマホにメッセージの音。

チャットを開いて、高校時代の同級生玉から結婚式の誘いが届く。

玉「瞬ちゃん、結婚することになったの。日曜日の結婚式、ぜひ来てね」

瞬「おめでとう。日曜日、時間通りに向かいます」

○204号室

寛人、起きて、何日間も積み上がった洗濯物を洗濯機に入れる。洗濯機をたたき、合掌して頭を下げる。

寛人「麗ちゃん、今回もお願い」

スマホのメッセージの音。

チャットを開いて、高校時代の同級生務久から結婚式の誘いが届く。

務久「スーパースター、日曜日都合はどう?俺の結婚式、ぜひ参加してください」

寛人「おめでとう。行きます」

寛人のM「高校時代の同級生結婚してるのはほかにいるのかな」

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