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税理士・会計事務所が目指す自動化の先に何を求めるのか?


最近、経理の自動化という言葉が流行りだしています。

情報がデータ化され、APIなどを活用したデータ間連携が進んでいます。
なので、会計業務は、わざわざ人が記帳なんてしなくても、会計ソフトにデータを取り込んでお終い!
そういう時代に突入しています。

これ自体はいいのです。
今までやっていた作業が楽になり、代わりに他のことができるようになる。
大いに結構なことです。これはやるべきです。

でもそれは中身が分かっている人にとっては、という話で、会計や税務が分からない人にとっては、取り込んでみたものの、それが正しいのかどうかの判断がつきません。
そこで、専門家に委託するわけです。
自動化を進めて、業務を効率して、多くの顧客を獲得しようと謳う事務所も最近増えてきました。
こうやれば、もっと業務を効率化できますよ。
こうすれば、在宅業務の知識がないパートさんでも、ある程度の仕事をこなせるようになりますよ。
顧問先に会うなんて時間の無駄! 
徹底的な効率化によって、1人月100件の会社を知識がなくても誰でも回せます!

うん。なんだかすごそうに聞こえるんだけどね。
凄くないんだよね。
こういう事務所に本当に見てもらいたいの? と思う。

確かに数をこなして儲かるのかもしれない。
でも、税理士1人で500件のクライアントがいたとして、見れないでしょ?
試算表を作ったり、決算書や税務申告書を作るのは、そりゃぁ、できるよ。
作るのがゴールでいいのであればね。
それで、顧問をしていると言えるのか、ということ。
顧問先のことは、集まる資料とデータ以外、何もわかっていない。
税務調査があったって、答えられないし、ザルだよね。
仮に、1割の調査があったとしたら、年間の調査件数50件でしょ。
実質はじめましての会社の調査に50件も年間立ち会うなんて、考えるだけでもぞっとする。

一方で、顧客目線。
税理士事務所に書類を送ったり、資料をスキャンするなどしてデータ化すると、最短5日から2週間後には試算表が送られてくる。
税務申告もやってくれる。
でも、それだけ。
安くやってもらっているけれど、それだけ。

送られてくる試算表の意味も経営者は理解していないだろうし、日々の経営相談を誰にしたらいいのかもわからない。
そういう会社が辿るのは大体、次の2パターン。

業績が上がらず、やがて廃業。
常に資金繰りに困っていて、忙しいけれど、儲からない。

または、事業が拡大するにつれ、税理との関係に限界を感じて、ちゃんと相談に乗ってくれる税理士に切り替える。

たぶん、いずれかなんだよね。

業務を効率化していくことは、当然、当たり前にやるべきだけれどね。
その効率化した結果、その余剰で何をするかだよね。

従来の仕事の仕方を変えずに、余剰を作り出せない事務所は論外だけれど。
作り出した余剰で、数ばかりを増やしたって意味がない。
その余剰を顧問先に還元していかないとね。
会計を税理士事務所の中だけで効率化したって、意味がないんだよね。
その会社の中の、あらゆる業務が効率化した結果として、経理や会計業務がほとんどなくなるという流れにしないと、意味がない。
そして、それができちゃえば、税理士事務所や会計事務所の中で、試算表や決算だけを打つ人なんていらないんだよね。

会社に行けば、その会社にはもう自動で作れたものがある、というのがこれからの当たり前になったとき、作る作業をどう効率化するかなんて世界の話はなくなってるんだ。

国の施策として、世界の流れとして、すべての情報は電子化され、紐づけられていく流れにあります。
その先には、申告納税制度なんて要らなくなる世界も待っています。
皆が望めば、当たり前にそうなります。
それが良い社会だとは、微塵も思わないけれど、そこに向かっている中で、試算表を作る業務を効率化したって、それは短期的な需要でしかないと思うんだよね。
まぁ、それで5年、10年稼げばそれでいいっていう考えなら、間違ってはいないんだろうけれど。

俺は、ちゃんとお客さんの会社が良くなっていくことに時間を使いたい。
それは税理士の仕事ではないかもしれないけれど、そんな業種で仕事の幅を区切る時代なんて終わったんだ。
まぁ、考え方は人それぞれだからいいんだけれどね。
俺は、儲からなくたっていいから、泥臭く、相手の会社の中に入っていきます。





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