No cat, no life.

東京都在住。某私立大学国際学部教授。学会役員×3。某市都市計画審議会委員。兼任講師×3…

No cat, no life.

東京都在住。某私立大学国際学部教授。学会役員×3。某市都市計画審議会委員。兼任講師×3。グローバル・イノベーション学研究センター長。EUの環境・エネルギー・気候変動政治・政策が専門。ポーランド情勢やウクライナ関連の仕事も。無類の愛猫家だが猫アレルギー。

最近の記事

留学生はマキャベリを知らない?

数日前にFBで、知識があるが英語で話せない日本人と、知識がないが英語で話せる留学生は、後者がリーダーシップを発揮するという件について、幾つか論争があった。 これは、トレードオフの関係と言え、aかbしか取れないという前提で話が進んでいる。 私は、日本の教育に一定の知識を与える強みがあるならば、それに加えて英語での議論・プレゼン・交渉の能力開発をonすべきだと考えている。 小学生が遊んでいる姿を想像しよう。 何とでも勝ちたい子は、ルールを自分の良いように変更しようする。そして、他

    • SSR(造語)

      企業の社会的責任という言葉がある。CSRと呼ばれる。環境・社会・ガバナンスに関して、きちんとしたビジョンを持ち、その企業のもつ特性や人財を生かして、社会に貢献するあり方を言う。 このCSRの一環なのだろうか、多くの企業さんからご寄付をいただいた。しかし、CSRは投資・株価と強い関係があることから、非上場企業にとっては大きなインセンティブにはなり得ない「こともある」(もちろん、多くの非常勤企業さまからも多くのご寄付を頂いたのだが)。 環境報告書が非財務諸表・サステナビリティ報告

      • リスクをとらないヒトが利益を得られるわけがないのだ

        こんばんは。 胃痛に悩まされています。 今日はリスクと利益の話です。我が学科はグローバル・イノベーション学科なので、アントレプレナー領域というドメインがあり、そこでグローバル・アントレプレナーシップを教えることになる。 とはいえ、私は経営学など門外漢なので、そこで国際関係を教えている。学者としては安定軌道に入り、あとは定年で無事着陸するだけの人生なのだが、やはり人並みは面白くない。せっかく研究だけではなく教育も仕事としたので、日本の教育界を一気通貫で改革したい。 最近、このよ

        • 関西出張

          こんばんは。ようやく金曜日からの関西出張から帰宅しました。大切な会議→市川ゼミ関西OBOG会→学会→大切な会議→大切な打ち合わせ。 関学から離職してからあえて近づかなかった西宮北口にも行ったし、なんばのショットバーにも行ったし、最先端すぎてこれは潰れないなというオーラを放つ立命館茨木キャンパスにも行った。 関西のゼミOBOGたちは、最近の私の学校づくりプロジェクトのことを知っていて、彼ら彼女らなりに手伝ってくれたり、知恵を貸してくれたりするという。 そうか、もう教え子は2人も

        留学生はマキャベリを知らない?

          五十嵐誠一・酒井啓子(2020)『ローカルと世界を結ぶ』岩波書店

          本書は「グローバル関係学」シリーズの第7巻である。重視されるべきは、グローバルとローカルの間の意味の交換と相互作用である。グローバリゼーションによって、ナショナルに抑圧されていたローカルが、グローバルと手を組んで、もしくは、グローバルな舞台で行動することによって、自らの主張や利益を訴えるという現象は、今日では自明のことである。 また、グローバルの側でも、ナショナルを飛び越えて、自らの規範の魅力をローカルに訴えかけるという手法も自明のこととなっている。 このようなグローバル・ナ

          五十嵐誠一・酒井啓子(2020)『ローカルと世界を結ぶ』岩波書店

          カルダー,ケント・E(2023)(中山雅司訳)『グローバル政治都市ーアクターとアリーナ:国際関係における影響力ー』潮出版社

          友人といっては失礼だが、本学顧問であり、来日時には本学総長と共にディスカッションをする仲であるケント・E・カルダー氏による最新著である。 グローバリゼーションを動かす国家を凌駕する(可能性のある)力として、グローバル政治都市の存在を指摘する本書における最重要概念は「近接性の力」である。 この指摘は、経営学においてもクラスターに関する議論で用いられるが、カルダーはあくまで国際関係論のなかの議論として、グローバリゼーションにおける都市の強さの源泉を探る。 このような国境を超え

          カルダー,ケント・E(2023)(中山雅司訳)『グローバル政治都市ーアクターとアリーナ:国際関係における影響力ー』潮出版社

          滝田賢治(2006)編著『東アジア共同体への道』中央大学出版部

          今日もまた古い本を紹介する。17年ほど前の本である。まだリーマンショックも起こっておらず、中国の海洋進出も今日ほど目立っておらず、さらにはASEAN+3の経済的互恵関係も強化されていたから、あたかもEUのように何らかの形で「東アジア共同体」なるものができるのではないか、という期待に満ちた頃だった。 本書は、今をときめくトルコ研究者である今井宏平さんが第三章ジョン・カートン「東アジア・サミットと地域共同体の創設」の訳者をやっているほどに豪華な布陣によって編まれている。 「東

          滝田賢治(2006)編著『東アジア共同体への道』中央大学出版部

          浅岡美恵(2009)編著『世界の地球温暖化対策ー再生可能エネルギーと排出量取引ー』学芸出版社

          かなり古い本だが、かつてどのような議論があったのかを検証するのも大切な仕事である。学生たちに気候変動・環境・エネルギー政治/政策を教える上で、重要なのは、気候変動対策を有効にするには「市場のルールを変えること」であり、残念なことに「人々の善意に頼る」方法はほぼ無力だということだ。 概して日本人は制度設計が苦手である。それは、幼稚園から「ルールは守りなさい」と言われて育ってきたからかもしれない。ルールの中では最高のパフォーマンスを出すが、ルールを疑うことについては、苦手である

          浅岡美恵(2009)編著『世界の地球温暖化対策ー再生可能エネルギーと排出量取引ー』学芸出版社

          内藤正典(2018)『限界の現代史ーイスラームが破壊する欺瞞の世界秩序ー』集英社新書

          今もガザ地区では激しい戦闘が行われていることだろう。今回、私の研究対象であるEUは即座にイスラエル支持を表明した。ロシアによるウクライナ侵攻に対しては、強硬姿勢でロシアを非難したが、こちらはそういうことらしい。 そもそも冷戦後、西側(市場経済・民主主義)体制は一時的に、敵を無くした。これがグローバリゼーションの進展を促したが、他方でBRICsをはじめとする新興国の経済成長や、国境を跨いだテロ組織の伸長を産んだ。 人間とは、愚かなものであり、敵がいると生き生きするものだ。人間に

          内藤正典(2018)『限界の現代史ーイスラームが破壊する欺瞞の世界秩序ー』集英社新書

          フォーク, リチャード(2020)『パワー・シフトー新しい世界秩序に向かってー』岩波書店

          実はnoteを使うのは初めてである。コロナの二年間に十分に仕事ができなかった自分と比して、畏友である小松崎利明氏が訳者の一人に参加したのが、フォーク, リチャード(2020)『パワー・シフトー新しい世界秩序に向かってー』岩波書店である。 フォークの議論は深淵で、現実政治を見ている人間からはかなり厳しい議論が続くが、その中でも重要な指摘だと思う一節だけ抜き出しておこう。 「グローバル・ガバナンスについての覇権主義的な理解では、実現可能性という認識枠組みと特権、搾取、および階

          フォーク, リチャード(2020)『パワー・シフトー新しい世界秩序に向かってー』岩波書店