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フォーク, リチャード(2020)『パワー・シフトー新しい世界秩序に向かってー』岩波書店

実はnoteを使うのは初めてである。コロナの二年間に十分に仕事ができなかった自分と比して、畏友である小松崎利明氏が訳者の一人に参加したのが、フォーク, リチャード(2020)『パワー・シフトー新しい世界秩序に向かってー』岩波書店である。

フォークの議論は深淵で、現実政治を見ている人間からはかなり厳しい議論が続くが、その中でも重要な指摘だと思う一節だけ抜き出しておこう。

「グローバル・ガバナンスについての覇権主義的な理解では、実現可能性という認識枠組みと特権、搾取、および階層性の構造の有機的な結びつきを認識することは、有益である。これら構造、実践、精神構造、そして規範といったものは裕福な権力者による、貧しく、弱く、脆弱な立場にある人々に対する支配を恒久化する上で役に立つ。」(p.104)

フォークは、1989年以降の冷戦崩壊以降のブレトン・ウッズ体制におけるグローバリゼーションにおいて、新たな階層が市場での優位性をもとに恒久的な(もしくは擬似的に合法的な)優位な位置に立っていることを(当たり前のことながら)指摘する。

そんな「ダボス会議」連中が支配するグローバリゼーションが、今日の世界が直面する問題に解決可能な回答を出すのであろうか。それなりの報告書は毎年出てくるが、実際の政治はほぼこれらの文章を無視している。

そういえば先日、東洋大学でシンポジウムを開催した。

多様な方々がご自身のご意見を開陳したが、大切なことは以下のことだ。
私たちは、そもそも、家庭での教育において子どもたちに地域の尊厳を伝えているだろうか。もちろん、GAFA(グローバル経済)やロードサイド経済(ナショナル経済)を否定するものではない。しかし、労働集約的な、朝起きて、夜寝るまで、何か手を動かして、それなりに幸せな、地域の方々とコミュニケーションの取れる、そんなローカル経済を無くしていないか?

グローバリゼーションは圧倒的にローカルやナショナルを上回る。
それでもローカルやナショナルを維持したいのであれば、
1)市民としての声を上げること
2)ローカルに労働集約的な産業を創出すること
3)知識産業に移行することに畏れを抱かないこと

日本のローカルは宝の山である。
今、若年層とともに頑張れなければ、悲しいかな結果は見えている。

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