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「トラウマの回復5段階 理論」第15回コア学サロン(2020年11月)


この記事は

毎月開催されるコア学研究所の講義を書き起こししたテキスト(有料記事)となります。コア学研究所プレミアメンバーには毎月読むテキストとしてPDFをお送りしております。

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はじめに


今回は『トラウマの回復5段階理論』という話をしていきます。この理論にはベースになっている理論があって、その理論を中心に私が自分なりにまとめたものになっています。

『トラウマの回復5段階理論』って聞くと、ハードなトラウマとかコンプレックスとか重たいものを持ってる人にしか適応されない感覚があるかも知れませんが、全くそうではなくて、大なり小なり誰でもトラウマを持っていると私は基本的に考えています。

なので、皆さんも何かしらトラウマがあると思います。それが自分の人生に大きな影響を及ぼしてなくても、何かしら自分の中のネガティブな感情とかリアクションがトラウマに関係してると考えて、今回の5段階理論をざっと理解してもらえたら と思います。

理論のベースになるもの


5段階理論の参考になった本が2冊あるので紹介します。

ひとつは『身体はトラウマを記録する (ベッセル・ヴァン・デア・コーク著)』 という結構分厚い本です。この本はブログでも紹介したので読んだことがある方もいるかも知れません。いろんな方とのセッション、やりとりの記録や解説について書かれたものです。素晴らしい本で非常に参 考にしています。頭から読むと結構しんど いので頑張って頭から読まなくてもいいかと思います。

もう1冊は『ポリヴェーガル理論入門(ス テファン・W・ポージェス著)』です。ポリヴェーガル理論はセラピーの中でも有名な理論なので知ってる方もいるかも知れませんが、神経系の話が多いです。

迷走神経とかいろんな神経や脳の話が出てきますが、私なりにざっくり一言でまとめると、 ポリヴェーガル理論とは安心安全であることが一番大事だよねという理論です。まず安心安全が重要。それも頭で考える安心安全じゃなくて、細胞が感じるとか大きな本当の意味での安心安全。いろいろと安心安全であることに特化している理論です。非常に面白いです。

ポリヴェーガル理論はコア学を学んでいる方はたぶんみんな好きだと思います。生理学的なところとか脳科学とか神経学とか出てくるのでちょっと難解 なところもあるかも知れませんが、興味ある方は読んでみてください。ポリヴェーガル理論は他にも本がありますが、今回紹介した2冊を中心にまとめたものが『トラウマの回復5段階理論』になります。


トラウマ体験の発端


では資料を見ながらお話していきます。


表裏一体
1失感情症――――――ゾーン 
2無力感無価値観―――自己奉仕状態
3自己嫌悪・罪悪感――慈愛・慈悲・真心
4屈辱・怒り・恨み――革命・情熱・引率
5悲しみ・孤独感―――喜び・豊潤


まず左側を見てください。1失感情症 2無力感無価値観 3自己嫌悪・罪悪感 4屈辱・ 怒り・恨み 5悲しみ・孤独感という5段階があります。


イメージで言うと、冷凍された自分の何かがどのようなステップ、フェーズを通して 解凍されていくかというプロセスの5段階だと考えてほしいんですね。トラウマ的な体験をすることで、私たちの中にある何かが冷凍保存されてしまうとイメージしてください。トラウマ体験にまつわる感情や感覚が潜在意識の下に封じ込められてしまうとか、潜在下に記憶が閉じ込められてしまうイメージをまず持ってください。

それがふわふわっていろんなことを通して解凍されていくと、回復というか自分が元の自然な状態に戻っていくことになりま す。だけど、5段階を歩んで解凍されるのはいいことなんだけど、実際の反応は左側に書いてあるようなネガティブなイメージのしんどいリアクションや反応になります。だけどこれは自分が閉じ込めてた何かが元に戻ったり、固くなった何かが解きほ ぐされたりしたときに出る症状や反応なんだととらえることで、自分の身にいま何が起きているかがより理解できるようになります。


そうすると前回の復習になりますが、サバイバルモードが発動しにくくなります。サバイバルモードが発動しにくいことで、自分の中にわいた反応とか現象、症状に対して距離を置いて、自分に何が起きているかがより明確に見えるようになるわけです。

何度も繰り返しになるけど、トラウマ体験を通して冷凍されて出せなくなってしまった感情とか、できなくなってしまったこととか、この部分はダメでこの部分はいいよって区切られてしまったことが、この5 段階を経てニュートラルに戻っていくよってことです。

とても重要なことをひとつお伝えするので しっかり覚えておいてください。回復の5 段階理論と聞くと1→2→3→4→5を経るイメージがあると思いますが、じゃあ12345を経て完了かというとそうとは 限らず、12345を行ったり来たりする ことがよくあります。調子が悪い時は一気に1失感情症の状態になることもあるし、 この5段階を完全にクリアしたら必ずしも終わりってことはなく、自分の調子によって3の状態が出てきたり、5の状態に入り込むタイミングがあったり、いろんなシチュエーションにおいて出てきます。


大げさにとらえる必要はないですけど、皆さんも日常で調子悪いことがあったら思い出してみてください。5つの中に当て込むとしたらいまは一体どの状態だろう?って 探してみてほしいんです。それを知っておくと、裏で何が起きてるか、潜在的なところで何が起きてるかわかるので、それだけでも全然違います。今回はこれを学ぶ回だと思ってください。真剣にっていうより、 ふ〜んくらいの気持ちで自分のことを振り返ってみてください。あんまり真剣に取り組むとしんどくなるので軽くとらえながら、ふ〜んなんか面白いな〜くらいに思っておいてください。

12345って書くと1スタートかなって 思うかもしれませんが。トラウマ体験ができあがる順番は実は5からなんです。逆からなんです。5から始まって 4→3→2→1と、私たちの中でトラウマはできあがっていきます。もちろん、 54321という段階を経ないこともあります。体験の種類によってはバン!って すっ飛ばして、いきなり1の状態になることもありますが、小さいときの自分の中の ネガティブなセルフイメージがどういう風に作られていくか思い出してみるといいです。

そうするとだいたい最初にあるのが、悲しみ、孤独、分離感、分裂感、違い、 差別...と言ってもちっちゃな差別ですよ?比較されたとか。よくあるのが自分の妹とか弟とか生まれたときに、それまでは自分のことをいっぱい見てくれていた両親が急に自分以外の弟とか妹とかを愛でるようになったことがきっかけで、自分の中でトラウマっていうと大きく聞こえるかも知れないけど、小さなトラウマとかコンプレック スとかセルフイメージとか、そういうものが5とか4からスタートしてるわけです。 だから最初は分離感とか分裂される感じとか、つながりを断たれる、断たれたっていう体験がいろんな意味でコンプレックスとかトラウマの発端になることが多いです。


そうなるとバーストラウマって言われる0 歳のときの誕生の次元になってくるんですよ。赤ちゃんのときの分離感、分裂感、つながりを断たれたってところ。子供がギャ アギャア泣くとお母さんがこっちを見てくれて、あるときお母さんがプイって自分の方を向いてくれなかったくらいの些細なことでも始まるんですよ。これ聞いてみてどうですか?


この業界って自分のコンプレックスを癒すとか、変えられないクセとかトラウマとか、嫌な自分が出てきて自分を責める、あるいは自分の両親のせいにする、あるいは 自分の裏側とか潜在的な部分に原因があるんじゃないかって原因探しをしちゃうところがあります。

みんな通ってきた道だと思います。私も通ってきました。だけど、トラウマ体験のスタートなんて死ぬほどありふれてるんです。自分たちの記憶にないレベルの小さな分離感、すべてのトラウマの発端になるような小さな分裂、つながりを断たれるということ。区別されるとか一体感から切り離されるってことですよね。


トラウマを全く持ってない人はいないんです。私が言いたいのは、持っててどうってことないし、大小関係ないし、原因の追究にキリがないわけなんです。小さいときの環境のせいにしたり、両親のせいにしたり、原因を見つけて何かのせいにするのは簡単だけど、それって無意味で、へその緒を切られた段階で分断なんですよ。それがトラウマみたいなものだとしたら、自分の 細胞とか頭が覚えてないレベルの本当にささいなことで傷ついてきたんだなって思ってほしいんです。

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