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声にならない声の化身

病院のベッド上。

背中に少し痛みを感じる。

でも、なんだかスッキリした。
ずっといたそいつはもういない。

今、思えば
あの時、会社を辞めることを決めた。

「憑き物が落ちる」なんて言うけれど、
まさにそれだったみたい。

背中には
コブシ大の腫瘍があって、

まるでそれは
僕の声にならない声が
成長した物のように思えた。

嫌なものは嫌だ、
とはっきり態度と行動に示してきた僕も

いつのまにか
「とは言え仕方ない」なんていう
大人になってしまっていた。

4人の子どもたちに
教えられることは特にないけれど

パパの望むことは
自分の自由に生きることだ。

じゃあ、そう生きてない僕は
どうなんだ。

子どもたちに言ってあげたい。

「思う通りに生きなさい。
きっと大丈夫だから。」

ずっと我慢してきた声にならない声の化身。

腫瘍を取り除く手術。

バイバイ。
臆病な僕。

僕はそれで決めた。
会社を辞めてどうするか、どうなるか
なんて、
どうにでもなる。
大丈夫だ。

信じられないくらい
視界が開けた思いだった。

まだ何もしてない。
でも、気分は爽快。
きっと大丈夫。

嫌なものは嫌だ
そう言える自分が誇らしかった。

母親のスカートの後ろに隠れていた
サバイバルを始める前の幼い僕。

そいつが
じっと僕のことを見ていた。

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