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自信がないお客様

大通りから路地に入ると
そこはどこか昭和の雰囲気が残る下町の住宅街。

その一角にひっそりと佇むお店。

ここはコーチのお店。

決して多くの人がたどり着くわけではない
ようだけど、

そのお店には、コーチと名乗る店主がいて、
様々なお客の悩みを聞いてくれるという。

そして、どうやら
そのコーチには不思議な力があるらしく、
噂を聞きつけてやってくる人たちがいるらしい。

今日も一人のお客が来たようだ。


「私、自信がないんです。」

コーチ
「どうしたの?」

彼女の悩みは仕事の悩み。

スキルを身につけたり、
いろんな知識を学んでいるけれど、

自信がないという。

コーチ
「どうなったら自信がつくと思う?」


「わからない。何かを成し遂げたり、いい結果が出たら
もしかしたら、自信がつくのかもしれない。」

コーチ
「なるほど。じゃあ今すぐ自信がつくとしたらどう?」


「そんなことありえないでしょ。
だって何をやってもずっと自信がないんだから。」

コーチ
「とにかく、自信が欲しいんだよね?
自信がいますぐ手に入るとしたらどんな気分なの?」


「それは、きっと自信が溢れる私になっているだろうから、
もっとアクティブで、もっといきいきしてて、もっと輝いていると思う。
毎日が楽しいに決まっている。」

コーチ
「そう。じゃあそのようになってみたら?今から」


「何言ってんの?だからそうなりたいから自信が欲しいって。」

コーチ
「自信がないから、自信のない私になっている、よね。」


「ん?どういうこと?」

コーチ
「自信のあるだろう私になってみたら、自信がある、ということじゃないかな。」


「……?よくわかんない。」

コーチ
「まあ、よく頑張ってきたんじゃない?どう思う?」


「頑張ってきたよ。でも、自信がないの。」

コーチ
「頑張ってきた、ということは信じられるよね。」


「誰が何と言おうと私は頑張ってきた。」

コーチ
「なら、よかった。「頑張ってきた私」そうなっているじゃないか。」


「頑張ってきた私を私は信じている、ということ?」

コーチ
「そうじゃない?」


「うん…。」

コーチ
「そゆこと。頑張ってきた私を信じてあげたら?いや、もう信じてるよね。だから、自信があるだろう私になっているはずだ。どう?」


「あれ??そうかもしれない(笑)」

パッと顔が明るくなった彼女は、
足取り軽く店を後にした。

夕日が沈む路地をいく。

彼女の後ろ姿は、
自信に満ち溢れ輝いていた。

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コーチのお店メモ:

僕たちはよくわからない
目に見えないものを信じる。
それは自信も同じ。

「何かを手に入れたら自信がつく」という前提もまた
勝手に信じていること。

ないと思えば、ないことを信じているし、
あると思えば、あることを信じている。






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