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楽しくて仕方がないこと

人生、楽しくて仕方がないことだけをやり続けられたら、どんなにいいだろう。

長い間会社員として働いていたが、同じ会社で働いていた上司、同僚、部下を見ても、楽しくて仕方がなくて仕事をしている人はめずらしい存在だった。

そもそも「楽しくて、仕方がないことは何?」と聞かれて、自分でも答えに窮するようなところもあるのだが、あまり複雑に考えず「これだよな」というものはある。分かりやすいもので言うと、私にとって「自転車に乗ること」は楽しくて仕方のないことである。英語や中国語など外国語を学んでいる時も、いきさつは違うがそうかもしれない。

「自転車に乗ること」は、これはもう3歳の頃から好きだったので、理由を聞かれても、乗っているととにかく楽しいからとしか答えようがない。小学校や中学校では自転車で塾や習い事に通っていたので、週に何度も自転車に乗っていた。高校の時は寮生活だったので、最初は寮に自転車を持ち込むのを躊躇したが、2年生の時に千葉の館山まで輪行して旅行するために実家からランドナー(旅向きの自転車)を持ち込んだ。大学の時にロードバイクを買って、そのまま社会人になっても持ち続け、気が向けば自転車で出かけるような生活だった。その後、10年ほど前に新しいロードバイクを買って、毎週のように乗っている。しばらく自転車に乗らない日が続くと落ち着かなくなるのである。

外国語を学ぶのは中学で英語を学んだのが最初だが、いや、そう言えばその前に、幼稚園で数回英語のクラスがあったのを思い出した。普段話しているのとは別の言語でコミュニケーションが成立していることに、すごく驚いたというか、不思議な感じがしたような記憶がある。もしかしたら、そこに原点があるのかもしれない。

中学の時は、高校受験を目指していたので、好きだからということではなく、とにかくひたすら頑張るという学び方だった。それでも、新しい単語やフレーズを覚えたり、文法を学んで日本語との構造の違いを知ったりすることは楽しかった。これまで知らなかった世界を徐々に解き明かしていくような感覚だ。それにある程度基礎ができてくると、今度は英語を話して、世界中の人とコミュニケーションしたいという欲求も出てきたりした。こうなると自然と海外旅行を想像するようになって、外国の人や文化、土地のことについてももっと知りたくなった。いま思えば、最初は小さな「楽しい」が、転がっていくうちに大きくなり、ここまで来てしまった感じだ。

さて、ここで仕事のことに戻ろう。

仕事の場合は、その時々の所属やポジションによって組織から要請される業務があるので、常に楽しくて仕方がない、やりたいことだけを仕事にするというのは難しいだろう。趣味や生涯学習のように自分一人で何をするのか決められない。そうかといって、やりたいことをまったく追求できないわけではないと思う。ただ、やりたい仕事の担当になるには、一定の知識やスキルに到達していないとダメかもしれないし、新たに仕事を作り出すのなら、上司や会社と交渉が必要だから、そのための交渉力や人脈、プレゼン力も必要になるだろう。様々な人との交渉や調整を経て、やりたいことを仕事として獲得していくようなイメージだ。

最初からやりたい仕事がイメージできていればこのように進められるだろうが、そもそも今の職場で何をやっている時が楽しくて仕方がないのか、何がやりたいのかが分からないければ、どうすればよいだろう?入社する前はきっとその会社で楽しくて仕方がない仕事ができると期待していたとしても、入ってしばらくすると、想像していたのとは大きく違うというのはよくある話だ。もしその会社を辞めて、他へ行くつもりがないのであれば、そこにいたまま楽しくて仕方がない仕事を見つけざるを得ない。

いまの会社で自分に何ができるだろう?どんな仕事に一番興味が持てるだろう?と自分に意識を向けて考えるだけではなく、もう少し自分以外の人、モノ、環境にも考えを巡らしてみてはどうだろうか?人について言えば、一緒に働いてみたい同僚や上司はいないか?その同僚や上司と仕事をするなら、どんなことがしたいか、何ができそうか?転職先としてもいいと思えるような取引先といますぐに一緒にできる仕事はないか?自分の勤めている会社と世の中にある別の会社を結びつけたら何か面白いことができるんじゃないか?こんな風に考えるだけでも、いろいろ思いつくことはあるのではないだろうか?そんなに抽象度は上がっていないと思うが、そうやってちょっと視点を上げて眺めてみたりするとよいだろう。今まで気づかなかった、自分が楽しいと感じること、興味が湧くことが見つかるかもしれない。

まずは身近な人を含めた範囲を想像しながら、楽しくて仕方がない仕事について考えたら、その次はもっと広く地域社会、国や世界、人間を取り巻く環境にまで意識が向くようになるのではないだろうか?元々会社は社会の中で何らかの役割があって商売が成り立っているのだから、ひとつの会社の一社員としてしか自分を認識できないと想像力が働かない。もっと他者との関係性の中で自分を位置付ければ違った見方ができる。

楽しくて仕方がないこと。それを日々やっているのはもちろん楽しいのだが、仕事でも趣味でも新たな楽しくて仕方がないことを探すのも楽しいものである。

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