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「転妻」にしか分からないこと

 少し前に、夫の仕事の都合で引っ越した。子どもたちが通う新しい小学校と園。新しい担任の先生。クラスのライングループにも入れてもらった。また、一から人間関係がはじまる。公園も、子供服を買う店(西松屋とか)も、病院も、スーパーも、美容院も、マッサージ店も、しっくりくるところを、また探しなおさなくてはいけない。納得して引っ越したものの、ちょっと孤独だ。

ライター塾に参加して下さった「転妻」、高橋翠さんの作品をご紹介します。ああ、共感……。「各地の暮らし」を知る高橋さんならではの発信、もっと読みたいです。ライター塾で伝えたかった思いを、分かりやすく文章化してくださっています。ありがとうございます!

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 私はいわゆる「転妻」だ。夫の仕事の都合で、自分や子供の意思や都合は関係なく、転居を迫られる立場にある。子供は二人で、年少と年長の男の子。
 次の転勤辞令時期は未定。実家も遠く、うまく周りに頼る環境が整いにくい状況からして、外で働くということは非常にハードルが高い。なかなか踏みだすことができない。
 3月まで住んでいた先の赴任地では、地元で起業したり、フリーランスとして働くママが集まる「ママたちのためのビジネス団体」に関わったりしていた。それぞれが特技を活かし講師やライター、ハンドメイド作家、デザイナーなど様々な仕事をしていた。
 多くのママが「どんな職種であろうとまず必要なのは『発信力』だよ」ということを教えてくれた。「あなただからお願いしたい」と言ってもらえるよう「自分を知ってもらう」、「あなたが作っているものだから」と選んでもらえるよう「商品を知ってもらう」――。上手に発信するためには運動と一緒でひたすら反復練習が欠かせないことを知った。
 まだ私の子供達は幼く、ずっと一緒に過ごしている。けれど、何年も経って目の届かない場所に巣立って行った時、私には何が残されるだろう。「転妻」だから親しく話せる友人が近くにいない、打ち込めるような趣味もない。だけどそれは、「転妻」ということを言い訳にした悲しすぎる結末だ。
 だからこそ、私は自分自身が打ち込める「何か」を見つけたい。
もっと言ってしまえば広い社会とつながり、自立する手段の一つである「報酬」を得ることができるような「仕事」を見つけたい。
 どのようなことをやれるかまだ手探りの状態だ。でも、どんなことに取り掛かるにしろ「発信力」があれば、武器になると思っている。だから「発信力」を磨くためにママライター塾に参加した。
 今回参加して、自分では体験したことのないことを様々な土地に住む他のママたちから聞くことができ、置かれた環境が少し違うだけで価値観が変わることを感じた。それだけでも視野が広がったが、インタビューを通して話を聞く中で興味を持って物事に向き合うことの大切さを改めて知ることができた。
 文章をまとめ、伝えることも必要なスキルであるが、興味を持って他人と対話し、自分の気持ちとも向き合うことで、物事が整理でき、次のステップに進む手がかりをつかめる。その過程を改めて感じられたことで、自分自身のしたいことを明確化する手がかりが掴めたような気がする。