見出し画像

島根大学社会教育主事講習の授業を紹介します:協働探究ゼミ

島根大学の社会教育主事講習で実施している「社会教育演習」の授業をご紹介します。

島根大学社会教育主事講習の「社会教育演習」(通称「ゼミ」)では、受講者の所属・勤務する現場を題材とした問題解決型学習(PBL:Project Based Learning)に取り組んでいます。ゼミは、受講者5名、講師2名程度の少人数で行い、受講者相互の学び合いや講師による丁寧な伴走を大切にしています。

この記事では、2022年度に実施した12のゼミの中から1つをご紹介します。

----------

協働探究ゼミ

「協働探究」ゼミのサポーターの沼田です。私は、普段、群馬県で教育NPOの経営&高校現場のコーディネートをしています。

本ゼミのメインサポーターは、島根県雲南市で行政職員としてお仕事をされている福島さん。日々、様々なステークホルダーと関わり、協働しながら、地域をよりよくしていらっしゃいます。

そんな行政の立場である福島さんと、NPOの立場である私が、まさに「協働」して取り組んできたのが「協働探究ゼミ」です。

「協働」って、必要!・・・でも、そもそもなんで?「協働」ありきを一旦問い直すゼミ!

ゼミを運営するにあたって、福島さんと打合せ。その時に共通していた想いは、「協働って、必要と言われている。けれど、何でもかんでも協働がよいわけではない」ということ。

  • 「そもそも、協働って何故必要なのか?」

  • 「何を達成していたら、自分たちとは異なる立場の方々と協働できたことになるのか?」

  • 「それぞれの現場で、よりよい協働を進めていくためには?」

そんな問いを土台にしながら、半年間のゼミで、学習者のみなさんと学んできました。

集まったのは、多様な背景をお持ちの学習者のみなさん

各ゼミでは、5名程度の学習者が集います。「協働探究ゼミ」を選択した学習者の方は、所属や背景に共通項が見当たりづらいみなさんでした。

  • 高等学校のコーディネーターとして

  • 県職員として

  • 地域おこし協力隊として

  • 図書館職員(前年まで特別支援学校の教員)として

  • 基礎自治体の議員/フリースクールを運営するNPOとして

ゼミの初回から数回、なかなか共通言語が見出せません。いや、同じ言葉を使って表現していたとしても、意味することが違う感じで、空中戦もしばしば。しかし、これらの環境や経験こそ「協働探究ゼミ」の真骨頂。

同じ感覚で、同じスタンスで、物事をともに進められることよりも、違和感を言葉にし、違うスタンスだからこそ、物事をともに進められること。「互いのわかりあえなさ」を前提にしながら、進めていくゼミでした。

自分たちの現場での協働実践、ほかの現場での協働事例を探究

ゼミでは、基本的には学習者の現場で取り組んでいる実践について、対話を通じてリフレーミングしてきました。そこに「そもそも協働は必要?」「何を目指している?」「誰と手を組んでいくことでよりよくなる?」などと協働の観点も併せて。

また時に、「すでに協働に取り組んでいる方々から話を聴いてみたい」という学習者のニーズに応えるべく、全国で実践されている方からのゲストトークも行いました。協働の枠組みを作っていく経験があるゲスト、現場レベルで日々協働しながら物事を進めているゲストなどなど…。(人材育成の会社出身の方、教育NPOとしてコーディネーターとしてお勤めの方、時にはスピンオフで特別支援学校に通う子どもたちの進路先である就労施設の方など…)

いろいろな方々の考えや背景を理解していく。このプロセスを「協働探究ゼミ」の基本スタンスとして運営してきました。

学習者のみなさんの感想(一部抜粋)

講座全体を通しても、僕はこのゼミが一番居心地のいい場所でしたし、自分の半径3mでの課題に向き合うことができた時間でした。R5年度、ここでの学びを大切にして奥出雲の町に新しい学びの舞台を創出したいと思います。みなみなさま、講座が終わっても末永くお付き合いいただけると嬉しいです。

実践から得られた協働のポイントをとてもわかりやすく教えていただきました。私も協働的にプロジェクトをすすめる際に意識していきたいと思います。私の出した、協働する相手とのベストなパワーバランスについての問いでは、「5:5がベストだと思うが6:4かな」とコメントをいただきました。5:5をベストとする理由を聞いてみたかったです。「5:5が本当にベストと言えるのか?」という問いが、新たに私の中にできました。私は「5:5よりは6:4とか、5.5:4.5とか、それくらいがベストではないか?」などといろいろ考えてみています。また機会があれば、ゼミのみなさんの考えるベストなバランスとその理由も聞いてみたいなと思いました。
今月末、仕事で重要な会議があり、そこで私のこの半年考えてきたことをぶつけるプレゼンをしようと企てています。が、ことなかれ主義、保守的、ちょっとかわったことをすると変なやつに思われる、そういった雰囲気がある私の業界で、どこまで個を出していけるのだろうか、、と不安に思いながら準備をしている毎日です。この会議には、関係各所が集うので、今回学んだ協働のポイントを意識して、プレゼンを頑張ってみたいと思います。

(最終ゼミで事例から学んだ後の感想)これまでの教員生活において、なかなか「協働」という言葉を聞く機会がなかったのですが、社会教育主事講習を受講したこの半年で1番聞く言葉となりました。聞くたびに、なんとなく頭の中で「協働」のイメージをすることはできるのですが、この言葉を知らない第三者に話をするときに、認識のずれが生じていることがありました。この認識のずれを解消するために、もう一度「協働」とは何なのかという視点で話を聞かせていただきました。実践されてきたことを踏まえてのお話でしたので、とても聞きやすくイメージしながら理解することができました。ただ、意味づけのところで、「関係者が役割と責任を分担し・・」というご説明をしていただいたかと思うのですが、ここのバランスが自分に近しい人であれば、容易いのですが、相手の立場が自分より遠かったり、年齢が上であったりすると関係性の保持ができていないことが自分の課題として挙げることができるのかなと感じました。年齢に関係なく関係性を保持するための工夫があれば、知りたいところです。関係性の遠い人と対話することで、自分の意図しない合意形成が図られることにならないように気をつけようと思いました。図書館に勤務しているので、学んだことを参考にしながら、何らかのワークショップができればいいなと感じました。実践できるように計画を立てようと思います。

さあ、いざ協働?!

という感じで、「協働探究」してきたわけです。

では、いざ協働できるか?

それはもちろん、難しい。

けれど、

  • 自分たちだけでは成し得ない『何か』をイメージすること

  • 目の前のことから始めてみること

  • 互いの扱う言葉の意味を理解すること

そんなことに取り組んできたのが協働探究ゼミです。

サポーター 沼田翔二朗

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?