個人と地域と世界と繋がり、生きづらさを可能性にしていく。〜CMC5周年記念イベントレポート〜
Change Makers’ Collegeは、陸前高田市広田町で「生き方をつくる学び舎」を運営しており、今年5周年を迎えました。
よくわからない学び舎が、5年間も続くことは奇跡のような話で、精一杯お祝いしたい。そして5年間やってきたからこそ見える、Change Makers` Collegeの魅力や価値があるはず。
それを今まで関わってくださった方と考えよう!
ということで、2023年1月14日に5周年記念イベントが開催されました。
イベントでは過去の参加者が話す個性的なエピソードや、地域づくりの文脈から見た学び舎の魅力、そして世界の目線から見たこの場所の価値まで、様々な視点から見たChange Makers` Collegeの姿を垣間見ることになった時間となりました。
今回はCMC卒業生のゆりが、イベントの様子をお伝えします。
Change Makers` College5年間の軌跡
イベントの最初はそれぞれのタームごとに卒業生をゲストに迎え、CMC5年間の軌跡を振り返りました。
卒業生にCMC期間中の一番印象的なエピソードを聞いてみると、砂浜に風車を100個くらいおいた展覧会を企画したり、広田町で気球を飛ばした一大プロジェクトの話。
メンバーでご飯を作っている時の会話や、冬に水道管が凍って困ってしまった話。一緒に暮らしているのが辛くて家出を企てた話まで。卒業生から出てくるエピソードは、どれひとつ同じものがない個性的な話ばかりでした。
卒業生のエピソードからCMCの軌跡を振り返ると、どれほどCMCの時間や学びを1つに定義しにくいかが理解できます。
しかしセッション1を通して、CMCの大きな変化も見えてきました。それは「コロナ禍」をきっかけに暮らしといった個人の生活にフォーカスが置かれていることです。
CMC初期は何かイベントやプロジェクトの話が多い一方で、コロナの影響を受けた4期以降に出てくるエピソードは、メンバーとの生活などの暮らしにフォーカスしたものが多く登場しています。
これはコロナ禍によって地域での大規模なイベントが出来なくなったからこその変化です。しかし、それによって参加者が自分の生き方を暮らしや、たわいもない会話からヒントを得て、学びに変えていることも示しています。
5年間CMCの学びをつくってきた校長の岡ちゃん曰く、CMCは各タームごとのイメージカラーが全然違うそう。その理由はそれぞれの生き方を探求し、
異なる生き方をメンバーが共につくっていくからなのだと思います。
これまでのカラフルな学びに心がほっこりしつつ、これからまたどんな色が加わるのか楽しみになる時間となりました。
地域の「圧倒的な余白」が、若者を遊ばせ癒していく
セッション2では、CMCメンバーの何人かが通う学校の先生である静岡県立大学教授の津富宏先生と、CMC3期生のゆいさん、6期生のともかさんを迎え、CMCにおける地域との繋がりについて探求しました。
セッションの冒頭では、岡ちゃんより「コロナ禍でCMCと地域との繋がり方が大きく変わった。コロナもそろそろ落ち着いてくる中で、CMCと地域との関係性の未来についてみんなで考えたい。CMCは地域にとってどのような意味があるのか?」という問いを提示しました。
その後、広田町在住の村上誠二さんからのビデオメッセージが紹介されました。誠二さんはCMCの活動をいつも様々な形でサポートしてくださっており、CMCに対する印象を話してくださいました。
誠二さんのお話から、CMCが「学び舎」ではなく「地域のコミュニティ」
としての側面が見えてきました。その後の津富先生と卒業生の対話では、
卒業生の二人がCMC期間中に何をしていたのかという話に。
3期生のゆいさんと6期生のともかさんは、CMC期間中地域住民の人との関わりがとても多く、よく近所の人のお家にご飯を食べに行ったり、梅仕事といったお手伝いをしていたそう。
2人が口を揃えていっていたのは「CMC期間中は暇だっだから、普通の大学生ではできないことができた」ということでした。
暇だからこそ口実を見つけて近所の人のお家に遊びに行ったり、偶然あった人とどこかにいくことができる。そのような偶発的な出来事がメンバーの学びに繋がり、関心が広がっていくことが何度もあったそうです。
津富先生は卒業生たちのエピソードを聞いた上で、こう話します。
卒業生に「広田町ってどんなところですか?」と聞くと、よく「何もないところです!」という答えが返ってきます。
それは決して悪い意味ではなく、何もないからこそ、若者にとっては何かできる「余白」が残っていることを意味します。
また、CMC期間中は基本的に指示は何もなく、自分たちのやりたいことを優先させてくれます。参加者は近所の人に会いにいってもいいし、散歩してもいいし、ただ眠り続けてもいい。
時間の使い方はすべて、参加者に委ねられます。
余白のある場所と時間が自分に与えられることで、若者は遊び、遊ぶことを通して他者と繋がり社会とつながっていきます。地域が持つ場所や空間の余白が、CMCと地域をつなぐ上でも重要なキーワードになるかもしれません。
CMCが抱える問題と可能性の先に、世界がつながっている
セッション3では、デンマークよりノーフュンスフォルケホイスコーレ教員のルイーザさん、フォルケホイスコーレ協会のサラさんをゲストにお迎えました。
モデレーターは、北海道東川町でフォルケをモデルにした学び舎「Compath」をつくっている安井早希さんを迎え、「世界とつながる」をテーマに、CMCの活動が世界につながっていく未来を探求しました。
CMCは2018年より、デンマークのホイスコーレコミュニティと協働を始めました。
CMC3期生の入学式ではデンマークより音楽隊を招待。2021年にはフォルケ協会が主催するpeople’s Future labに参画し、2022年のCMC7期生の時には、ノーフュンスフォルケホイスコーレの提携先として、デンマークから生徒を迎えています。
コロナ禍も落ち着きつつある中で、これからデンマークを始めとしたグローバルな協働が予想されます。CMCやフォルケホイスコーレのような
草の根運動はこれからどうなっていくのでしょうか?
対話の中で特に印象的だったのは、「草の根運動という長期間かつ効果が見えにくい活動の中で、グローバルな関係性を持つ意味は?」というさきさんからの問いです。
この問いに対し、ルイーザさんはこう話します。
ルイーザさんの話に岡ちゃんが重ねます。
対話を通して見えてきたのは、今若者が抱えている精神的なプレッシャーや生きづらさは、世界共通の課題であること。フォルケホイスコーレ発祥の地で、先進的な教育で知られるデンマークでも若者の生きづらさはいまだに存在しています。
その中で、異なる背景を持つ人たちが同じ課題を見据えながら回答を出していく。その回答を共有することで、生きづらい人は試すことができ、その人にとって起死回生の一手になるかもしれない。
関係性は個人に対する選択肢を増やすことに繋がる。それが多様性を持つことの価値ではないでしょうか?
個人の可能性を信じながら、生き方に対する選択肢をたくさん見つけることができる。生き方の選択肢がたくさんあることを肯定できる人を増やしていく。
それをグローバルに進めていくことができることが、CMCが世界とつながっている大きな魅力なのではないでしょうか?
5年間を通して見えてきたCMCの価値
イベントでの岡ちゃんの言葉です。CMCの核はこの言葉に凝縮されている。イベントを通してそう感じました。
今までの生活や生き方に違和感を感じる。なぜかわからないけど苦しい。
そういった「生きづらさ」を価値や可能性として捉えること。それは言い換えると、「自分がどう生きるのかを問う」ことにつながると思います。
そしてその答えは、誰かにとっての選択肢になり、異なる背景の人と多くの選択肢を共有することで、ひいては社会に対する答えになっていく。その小さな実験場がCMCなのだと思います。
その実験場を支えるのは5年間大切に紡いできた関係性です。CMCは5年間を通して、多くの参加者と繋がり、地域の人たちにサポートいただき、世界との関係性を広げてきました。
これからもその関係性はCMCにとって必要不可欠なものであり続ける。それもイベントを通して強く感じたことです。
関係性を通して、生きづらさを可能性や価値に変えていく。CMCの探求は続きます。
執筆・編集:外村祐理子
グラフィックレコーディング:渡辺奈緒
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NPO法人SET
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山本晃平