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私なりのスポーツとSDGs(前)-私の目線と国内外の現状

SDGsが採択されてからもう5年。これを書いている時点で、その最終目標の2020年までほぼ10年である。ここまで、さまざまな分野で、SDGsと連携した取り組みが進められるようになってきた。スポーツの分野もそのひとつである。
私なりには、「夏の甲子園」の切り口からまず気候変動との関わりが問題意識にあった一方、特に日本の実際のスポーツの現場では、社会的課題解決の観点から、パートナーシップを切り口としたアプローチが進められている感じがある。

SDGsとは

人によってさまざまな解釈の仕方はあるが、私なりに解釈して簡単にまとめると、以下になるか。
「2030年に住みよい世界を実現するための世界共通の目標」

このSDGsは、以下のアイコンにあるような17の目標と169のターゲットから構成され、2030年までにこれらすべての目標の達成を目指している。すべてのステークホルダーがこの目標達成に協力して取り組むものとしている。ターゲットには具体的な数値目標設定もあり、2030年までの達成に向け逆算して今からどうすべきかという、いわば「バックキャスティング」の視点が重視される。17の目標やターゲットは独立したものでなく、相互に連関している。

国際連合広報センターによる説明は、以下を参照。
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/


私のSDGsとスポーツの関係の目線

私なりの「SDGsとスポーツの接点」としてまず考えていたのが、一言でいうと「環境と健康」の観点である。意識の重点にあったのが「地球温暖化」であり、その象徴として私なりに位置付けたのが、「夏の甲子園」である。

スポーツとSDGsの関係、スポーツと地球環境の関係に関して、私は、以下のNote記事を書いたことがある。

「甲子園を、スポーツ発のグローバルな温暖化対策のモデルに」
「高校野球交流試合」に思うこと=甲子園を守ることはSDGsのバロメータ

これらの要旨は、「夏の甲子園」を守るためにはパリ協定の定める気温上昇抑制目標(痕跡末まで+1.5~2℃)を守ることが重要、さらに、現在の暑さからプレイヤーを守るテクノロジーの活用が重要であることである。この地球環境を守るためのメルクマークとして甲子園を位置づけ、甲子園をスポーツと地球環境共生のモデルにすべき、というものだ。

この考えをベースに、2019年末くらいに、現在のスポーツビジネスの動向を踏まえ、SDGsとスポーツとの関わりにつき、とある機会でこんな絵を描いたことがある。

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私の考えの趣旨は、スポーツでの気候変動や地球環境対策、プレイヤーを気候変動から守る対策の実現が、暑熱環境下での活動を必要とするエッセンシャルワーカー等(※)の権利拡大や活動機会の保証につながるものだ、というものだ。そのための柱がSDGsであり、そのエンジンが、スポーツビジネスの成長力や資金力であるというものだ。該当する目標に置き換えると、目標13(気候変動)、目標3(健康)、目標4(教育)、目標6(水)、目標8(経済成長)なるか。

(※)
農業従事者、災害復旧のボランティア、建設労働者、工場労働者、医療従事者、消防士、警察・警備会社、宅配ドライバー、海外の環境保全プロジェクト従事者、自衛隊など。最近では、ウーバーイーツの配送者なども考えられる。これ以外にもあるだろう。

一方、私のこのチャートには、スポーツの現場の目線から、実は大事なものが欠落していることにもこの数か月で気づいた。これは、以下の2つの目標である。実はこれらは、SDGsの目標の中で、現在の日本のスポーツの現場で重視されているものといえる。
16.平和と公正をすべての人に
17.パートナーシップで目標を達成しよう


現在進められているスポーツからのSDGsの展開

スポーツからのSDGsの展開としては、地球温暖化対策、気候変動対策の観点の取り組みもある一方、上記の「パートナーシップ」を重視した、社会的な交流の促進が重視されている感がある。

「スポーツからの気候変動対策」の観点から2018年11月に立ち上がったのが、「スポーツを通じた気候行動枠組み(Sports for Climate Action Framework)」である。詳細は、以下の国際連合広報センターの記事を参照。当初枠組みに署名した17組織のうち、7組織が日本からのものである。
スポーツ界、COP24で気候行動枠組みを立ち上げ
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/32129/

現在の加盟組織数は147、東京オリンピック組織委員会、FIFA、NBA、ニューヨークヤンキースなど、多くの組織が名を連ねている。

一方、「パートナーシップ」の観点を重視した取り組みも進んでいる。さらにブレイクダウンすれば「まちづくり、地域活性化」「スポーツの価値の社会への還元」「スポーツからの社会課題解決」ともいえる。日本では、むしろこちらの方が「スポーツとSDGs」の主流かもしれない。
2020年10月6日に開催されたスポーツビジネスジャパン主催のオンラインイベント「SPORTS × SBJ2020」で重視・協調されたのは、スポーツの持つ力を原動力としたSDGsの達成への取り組みの推進である。詳細は以下のリンクにあるが、ここで重点目標として掲げられているものは以下の5つである。
・4 質の高い教育をみんなに
・8 働きがいも経済成長も
・9 産業と技術革新の基盤をつくろう
・11 住み続けられるまちづくりを
・17 パートナーシップで目標を達成しよう
https://www.sportsbusiness.jp/sdgs/

上記イベントにも紹介された、主なSDGs関連の取り組みとして、以下があげられる。
・公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の「シャレン」活動
 社会課題や共通のテーマに、地域の人・企業や団体・自治体・学校などとJリーグ・Jクラブが連携して取り組む活動
・公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(B.LEAGUE)の「B.Hope」活動
 「Social Innovationの実現」を目指し、ステークホルダーとともにさまざまな社会的責任活動を推進
・NPO法人Being ALIVE Japanの「TEAMMATES」活動
 長期療養児の自立支援やこれを支えるコミュニティの創出を目的とした長期療養児のスポーツチーム入団事業

そして、現在日本のスポーツ界で意識が高まっているのが、「スポーツの社会的価値の向上」「スポーツからの社会貢献」といったものであり、もはや、スポーツは地域社会と切って離せないものという流れが定着したといっていい。これを実現するための手段として「SDGs」を活用しようという流れがあり、その切り口として、選手やファンに身近な「目標17 パートナーシップ」の観点が生かされてようとしている。スポーツビジネスは、スポンサー、ファン、地域自治体などといったステークホルダーが多いのがその理由だろう。その先の広がりとして、教育、まちづくり、産業、技術革新への展開が進むという流れになるか。一方で、気候変動へのアプローチへの動きは、海外と比較して、日本のスポーツ界では相対的に少なく見える。日本ではまだ「自分事」として感じとり切れていない人が多いのが理由なのだろう。

なお、海外では、2020年に、アメリカのブラック・ライブズ・マター(BLM)運動の流れを受け、スポーツから、平等や公正、人種差別解消をアピールしようという動きも強まった。4大スポーツの試合前のセレモニーへの繁栄、NBAファイナル会場での数々の「Black Lives Matter」の文字、MLBの試合などでの抗議活動の一環としての選手からの自発的な試合のキャンセル、というものがあげられる。テニス界では大坂なおみ選手が、人種差別による網力での死者名を書いたマスクを着けて登場したのが記憶に新しい。この動きも、SDGsに大きくつながるものがあるはずだ。

日本では、草の根のレベルでスポーツと環境を考える動きがいくつかある。例えば、ランニングと地域の清掃を結び付けた活動を行うとともに、SDGsに関するセミナーを自ら開催する市民ランナー団体「Spossa」はその一例だろう。
https://spossa.org/

このように、スポーツとSDGsは、社会的パートナーシップを軸にその結びつきを強めているように見えるが…現場レベル、市民レベルでは、周辺や私がまだ気づかないスポーツとSDGsの壁があるような気が実はするのだ。後編では、その例を挙げるとともに、私なりにスポーツとSDGsの関わり方について考察する。

(後編に続く)

後編は以下。
私なりのスポーツとSDGs(後)-両者を隔てる壁



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