スーパーマンみたいになれた(詩集5-7)

ある日突然 僕のステータスがいろいろ強化された

要するにスーパーマンみたいになれた

空は飛べないけど 車より速く走れるようになった

アスファルトを軽く殴るとヒビが入った

女子にモテるようになった 宝くじ当たった

親が僕を丁寧に愛するようになった

僕は親を正常に愛せるようになった

ある雨の日 川で老人が熊に襲われていた

雨脚が弱まる中 川で老人が熊に襲われていた

なんでもう少しで晴れそうなのに

あいつは熊なんかに襲われているんだよと

ムカつきながら持っていた傘を投げ捨て

土手からその川の方へ走り出した

走り出した

走り出したつもりだった その川の方へ

気づけば住宅街の方へ 僕は走っていた

曲がり角で車にクラクションを鳴らされながら

僕は車よりも危ない風となって住宅街を駆けた

怖かった 情けなかった 見なかったことにして

とにかく逃げたかった よって逃げたのだ

いつの間にか晴れやがって ちくしょうちくしょう

僕は再びムカついて 違法駐車されてる車を持って

でけえ面しやがる太陽に向かって思い切り投げた

翌日 近所の川で老人が熊に殺されたらしい

それよりも今朝 太陽が何者かに殺されたらしい

そういったニュースを横目に

寝ぼけ眼をこすりながら

僕は最期のコーヒーを啜っていた

生まれ変わったら

またスーパーマンみたいになりたいな

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