蜘蛛 in the モンブラン(詩集6-2)
僕が愛してやまない黄色いモンブランの中には
いつも真っ黒な蜘蛛が潜んでいた
マロンクリームをさくっさくっと切り開くと
脚が2本取れている彼がいる
取れた脚は昨日の僕の
新しく生まれた鼻毛の1本だ
昨日の昨日の 僕の僕の僕の僕の
基本の基本の真ん中にいる希望みたいな味がする
真っ白の生クリームを見ると
昨年雪に溺れて死んだ彼女を思い出す
白銀の世界はいつだって残酷なのだ
容赦ない冷たさと甘さが
今だって僕の喉の奥の奥を襲う 突き刺す
ザクッザクッ ぬちゃりぐちゃりキリキリキリキリ
ヒューヒューがふぁっ ううううううふふうぅぅぅ
店内の椅子に血と烏龍茶が飛び散る
見るな店員 その眼で僕を心配そうに睨むな
蜘蛛の手先め いつもそうやって
僕に毒を投げかける 非力なくせに!!
鼻毛が 鼻毛が無限に伸びる
がうわぁううくっすすんぅがぐぅぅぅあ
やがて僕の体内に侵入し 無数の血管と性交して
西高東低の気圧配置によって
日本海側では大量の僕の遺伝子が降り注いだそうだ
回遊する煌めきと出来損ないの残骸のブレンド
君にとっては無意味な光景にすぎない
君が愛してやまなかった黒いモンブラン
次は僕が蜘蛛に生まれ変わって君を愛す番だ
猛毒だけど殺すつもりのない
贅沢な愛を召し上がれ ちゃんと食べれ!!
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