窒息(詩集5-4)

少し息が苦しくなってきた

いつの間にか 私は水の中にいた

だいぶ沈んだからなのか

それとも水が汚いからなのか

周りは何も見えないまま

水の中というか闇の中

川か海かすらも分からない

居心地はかなり悪いが

地上よりいくらかマシに思えた

そういえば 私は自発的に飛び込んだんだっけ

誰かに突き落とされたんだっけ

これって夢なんだっけ

なんだっけ

少なくとも今 明らかなのは

とっくに私の身体は水の冷たさに慣れたということ

それと 息が苦しくなっていくことによる焦りが

血流に混ざり私の身体を熱くしているということだ

息が苦しくなってきた

恋をしていた

浴びるほど酒を飲んで

枯れるほど名前を呼んで

情熱的なセックスをしたときも

たしか今みたいに息が苦しかった

苦しくて 恋は惰性になって

苦しくなくなって 惰性は愛になって

愛が宙返りする前に胃に入れて消化した

やがて脂肪が増えていって

排泄物が私の周りを濁していって

そうやって私は満たされていったんだっけ

かなり息が苦しくなってきた

心臓が凄く動いてる

凄く苦しいから激しくもがく 私

ひたすら水の塊の感触に翻弄される

せめて魚とか木の枝とかに触れたかったが

一切なかった ここは本当に水の中なのか?

ヤバいほんとに  死ぬ 息が   できない

汗が吹き出る 水の中だというのに

涙が止まらない 水の中だというのに

ほんとに  苦しい    助けて 助けて

どうやっても無理だ 助からない 助けて助けて 

今までほんの少しでも死にたいと思ったときの私を

すべて否定したい 殺したくなる

死にたくない 生きたい 死にたくない死にたくない

死にたくない死にたくない苦しい無理無理無理無理

ねぇ 生きるってあんなに素晴らしいのに

どうして私は素晴らしがれなかった

どうして今になって 私は どうしてどうして












光が差し込んでも その光は光でしかない

相変わらず水は酷く濁っている

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