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5ヶ月と17日

 このままもしこの人が目を覚まさなかったならば・・・お昼寝についた赤ちゃんを前に、そんな縁起でもないことが頭をよぎる自分は少し疲れている。在宅ワークの女社長は、いつもそんな私の辛い気持ちを呼び覚ます。本当はもう関わりたくないけれど、今更辞めづらい。ただそれだけで、嫌な気持ちになりながら、今日もチャットワークに目を通す。

 自分の内側から原因がなくなれば、嫌な人は目の前からいなくなると良く聞く。どうかこの女社長に目の前からいなくなってほしい一心で、今日も自分の心を掘り下げる。

 構ってちゃん、察してちゃん、図々しい。頭が悪い、自分の長所を履き違えている。ギャンギャンうるさい。偉そうさを極めていたのに、給料2ヶ月連続で遅れる。嫌いな点を挙げたらきりがない。この人は自分の内側の何を映し出して現実に現われた?

 先日知り合いに「エンプティーチェアー」というワークをやってもらって、父方の祖母を投影しているんだとわかったけど、その後も怒りは薄れたとはいえ、その女社長への嫌な気持ちは続いていた。

 「本当はもう、縁切りたいんだよね。」ついとでた独り言。まるでその社長はメンヘラな彼女みたいだ。一生、この人に、俺の人生乗っかられるの?という悪寒が真夏にも関わらず背筋を走る。投影元は母親か。

 赤ちゃんの将来のためにも、自分のためにも、内にある曇りはいっさい無くしたい。ピッタリと一切の隙間なく見張りパーソナルスペースを土足で侵してくる女社長は、きっと私の心の手放しを待っている。

 母親が夕食をつくる音。シンクに水が流れる音。キラキラと太陽を反射して輝く渓流を彷彿とさせる水音の中に、生きていける活路を見出す。夕食の後片付けは私がする。ここから世界のすべてが浄化されますように、という丁寧な気持ちで汚れた食器を洗う。美しい人を守りたい。美しいものを守りたい。

 今日も明日も「許せない」を手放す修行のよう。

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