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【断食体験記】『果てなき食欲』からの解放は可能か?〜IARP根府川道場 前篇〜

(この記事は、2018年9月、12月、2019年4月にお伺いした【IARP根府川】というファスティング道場での体験を紹介している。そのため、記事は当時掲載したものを一部リライトしています)

断食道場なるものに行ってみた。

前職時代からずっと行ってみたかった「断食合宿」に2泊3日で参加した。
今回は2回に分けたシリーズものとして記事を書いていく。
・1本目の記事では、「どんなことをしたのか」を写真を交えて具体的に、
・2本目の記事では「事後どうなったか」「そこから何を考えたのか」について、
それぞれ書いてみたい。

[前篇]「合宿参加のきっかけ」「道場がどのようなところだったか」「どのような1日を過ごしたか」←今回はこちら!
[後篇]「回復食期の自らの変化」「この合宿の意味合い」 

きっかけ

中高時代からの友人から、断食合宿に行った、という話を聞いた。

かねてより、自身の食欲コントロールに問題を抱えており、食との向き合い方を人生の中で考える機会も多く、また、食の福利厚生に関する企業に入社してしまうくらいには「食の業」と私の人生の関わりは根深い。

この関係について、今一度見直し、自分の心身の健康について、向き合う機会がほしいと思い、断食道場の門を叩くことにした。

断食道場にも目的ごとのタイプがある

断食道場に行こう、ということで、断食の出来る宿泊施設を調べてみると(これは別の記事でも紹介するが)、目的によって使うべき施設が異なることを発見した。

(本気度が高い順に)
精神修養を目的とするもの
※成田山など、宗教的要素も多分に含まれる。基本絶食、摂取OKなのは水のみ、ネットなどもNGのことが多い
体力増進を目的とするもの
※1日10km程度のウォーキングなど、筋肉痛になる程度の運動を伴うもの
リセットを目的とするもの
※酵素ジュースなど。アクティビティもあるが、楽しさも多分に考慮されているもの
リラックスを目的とするもの
※伊豆などリゾート地に多い。ヨガやエステなどをしつつバランス食を食べる、身体を動かすことを前提とした少食

IARP根府川道場を選んだ理由 

このなかで、IARP根府川道場を選んだのは以下の理由からだ。

・2泊3日の比較的短期でも参加できる(当時まだ有給休暇がなかった)
開始日が限定されていない(金曜日開始、など開始曜日が固定ではない)
東京から電車で行きやすい(免許は持っていないため電車/伊豆はやや遠い)
・価格がリーズナブル(1泊10,000円以内くらいを目安)
ストイックすぎず、ゆるすぎず(上記で言う②くらいをイメージ。絶食は怖いがちゃんとご飯を食べたいわけではない)
個室がある(作業時間がほしい、集団生活でのストレス回避)

上記の制約をすべて満たしているのがこの施設だった。
地元に近く馴染みがあったのも、選定理由のひとつかもしれない。 

基本的なスケジュール 

基本的には滞在中は、以下のようなスケジュールで過ごしていく。

06:00 ~ 世界平和のお祈りと瞑想
07:00 ~ 足揉み・経絡体操
09:05 ~ 朝食 りんごとにんじんのジュース
09:45 ~  掃除(15分程度)・休憩
10:00 ~ チェックアウト & チェックイン
11:00 ~  オプション(ハイキング、ウォーキング、登山)
13:30 ~ 海や山で玄米おにぎり、その他
15:30 ~ 温泉(湯河原温泉など)
17:30 ~ 夕食 サラダと味噌汁、豆乳など
18:30 ~ ヨーガクラス
20:00 ~ 瞑想(30分程度)
22:00 ~ 消灯

 以下に、実際の体験記を記していく。

断食前日

明日から断食!ということで、本来であれば【通常時の半分程度】の食事量に抑えるべきとのこと。
しかし、最後の晩餐とのことで気合が入り、ついお気に入りの温野菜でたらふく鍋を食す。自分の食べたいものだけを食べられるのも今日が最後。大好きな肉や野菜を注文しまくる。

断食1日目

<移動>
友人と2人での旅行だ。朝品川駅で集合し、東海道線にて根府川駅まで移動する。東海道線に乗る品川駅では、とにかく食品類が目につく。電車まで時間があるため、駅ナカのパン屋さんを散々見る。食事を手放すと思えば思うほどつのる食欲。

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電車に揺られること片道約1時間半。学生時代は通い慣れた道のりではあるが、とにかく眠い。電車の中では爆睡。

神社的な役割を担う場所における合宿ということで、怪しくないだろうか、という一抹の不安を抱えながらも到着。到着したら、根府川駅までお迎えサービスあり。優しそうな道場長が迎えに来てくれた。

なんか、大丈夫そう、という予感を持ち、向かう。 

到着後、根府川駅から山の方へ車で約10分。そこに道場はあった。緑に囲まれた、質素ではあるが、眺めの良い、気持ちの良い場所だ。

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到着後は(神社の敷地内なので)手を清めてから居間へ。

<アクティビティ>
オリエンテーションを終え、部屋に荷物を置き、アクティビティが始まる。到着早々、早速ウォーキングへ。所要時間2時間程度、距離にして11km。普段運動不足の自分としては、突然のハードルに困惑。

気温はちょうどよく、歩いていても心地よい。ときおり見える滝や川の音に癒やされながら、友人と話をしながら歩いていた。

 <昼食>
道中休憩。シートを敷いて、さながら遠足である。小豆の入っている酵素玄米おにぎりは、3日寝かせたもの。空腹には無条件に沁みる。さらにプルーンも。元来プルーンは苦手なのだが、酸っぱさと甘みと食感に、思わず好きになっていた。
また、この道場では各食事のときに「生姜湯」が振る舞われるのだが、これが非常に美味だった。シンプルに、スライスした生姜を入れて、熱湯を注いだだけのものなのだが、これが絶妙に胃に心地よく、何度もお代わりしたいと思うような、不思議な飲み物だった。

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 <ラストスパートからのご褒美>
さて、昼食も終わり、ラストスパート。女子2人お構いなしでエンドレストーク。もっぱらこの友人とは恋バナ(というかパートナーとの苦労話)やキャリアの話が中心であるが、永遠に喋っていられる。隊列には度々遅れ、行方不明になることもあったが、マイペースながらもなんとかゴールまで到達。その後はお待ちかねの、湯河原温泉。

全体を通じて、緩急というか、アメとムチが上手に設計されていると思った。温泉は最高のご褒美だ。 

<帰宅後のアクティビティ>
温泉から帰宅してからは、息つく間もなくヨガと瞑想へ。ハードなものではなく、疲れた体と来たるべき筋肉痛をいたわるような優しいヨガで、身体の詰まりが取れるような気がした。

ドアを開けると外では金木犀の匂いが。
嗅覚が敏感になっているのだろうか、寒さも相まって、鼻の奥がきゅ、と閉まるような感覚を受けた。

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<夕食>
20時すぎには夕食。サラダがメインなのだが、これが意外とお腹いっぱいになる。しかし、その後の空腹が不安で、ドレッシングまで飲み干してしまった。

食後はウォーキングの疲れからか、部屋に帰ったら速攻で入眠。

断食2日目

<朝活>
早朝(3時半)に予定されていた赤富士見学は、悪天候により中止に。(開催時は起こしてくれるらしい。)
それでも起床は5時50分。ギリギリの目覚め。

6時からは世界平和のお祈り。お祈りや般若心経を読む時間。耳慣れないお経などもあったが、声をだすことで、気持ちが不思議と落ち着く。声を出している自分が、また、自分の心が、たしかにここにある、という感覚を持つ。

瞑想中は、まどろみのなかで、肌にひんやりする空気が気持ちよく、鳥の声と自分の呼吸だけが聞こえる中、とても心地よい時間を過ごした。

<朝の体操> 
その後、こちらも息つく間もなく朝の体操。ここまで合計2時間程度、時間をかけて、じんわりと身体をほぐしていく。
普段なら朝から胃もたれに悩まされているが、感覚としては心地よい眠気と空腹。贅沢な朝の時間を過ごす。 

<朝食>
体操終了後にようやく朝ごはん。にんじんとりんごのジュースは、グラスになみなみ注がれていて、意外にもお腹いっぱいになった。
(ちなみに、お腹いっぱいの秘訣は作り方にもあるらしい。「バイタミクス」というスムージーに適したちょっとお高いブレンダーで作ることで、食材が潰れすぎないような塩梅になっているんだとか。)
ちなみに奥に見えるのは「スピルリナ」という最近注目のスーパー食材。これのおかげだったのか?元気に過ごせていた感覚があった。

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<昼のアクティビティ>
昼間は山登りかウォーキングの好きな方を選択できる。しかし、私達は前日の疲労もあり完全にへたっていたため、近くの【ヒルトン小田原】の温泉に行くことに。それでも坂道を4.5km、1時間弱歩いたのでなかなかの疲れ。

<昼食>
とはいえ、昼は道場から渡されていた管理食。おにぎりとプルーン@まさかのヒルトンのお庭にていただく。
アフタヌーンティーやブッフェが有名なヒルトンで、おにぎりという背徳感。それでも自然とお腹がいっぱいになるのが、驚きだった。

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小田原ヒルトンの成り立ちなどについて友人と話しながら、温泉に浸かり、一息つく(かつては勤労者福祉施設スパウザ小田原だったものを、破格で買収した、という経緯だったらしい。そのせいもあってか、ちょこちょこと古びた施設などもあり、なんだか不思議な感覚だった)。

<夕方のアクティビティ・夕食>
その後は道場長に根府川駅まで迎えに来てもらい、昨日同様、2時間程度のヨガと瞑想。
その後、夕食。サラダだけではなく、高野豆腐が出ていたため、食感を楽しみながら食べることができた。

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<突然の食欲、そして水分>
夕飯後は就寝時間。あまり当日は体を動かしていなかったからか、眠れない。所在なさを埋めるべく、なぜかひたすら食べログで美味しそうなパン屋さんを調べる、テロ行為。やはり「案外食欲は(食べなくても)大丈夫なんだ」という自らの感想に嘘偽りを感じはじめる

また、断食中は努めて水を飲んでいたので、トイレが近い。日常生活においても、早起きのためには夜のうちの大量な水分摂取が必要なんじゃないか、など、どうでもいいことを考えながら眠りにつく。 

断食3日目(終了日)

<朝活>
朝、5時50分に起床。自然と早起きできるようになったことに驚く。
昨日通り、お祈りと体操を行う。この体操では、棒を使って経絡(けいらく)と呼ばれるツボを刺激し、気を流していくことで体をほぐしていくというものなのだが、これが絶妙に痛気持ち良い。足の裏のツボの痛みで、どこに滞りがあるかわかるそうなのだが、見事に肝臓と胃がキテいるとのことで、深く反省をする。
またこの棒、道場の方が鉋で削り自作しているもののようだ。思わず感銘を受け、2本で6,000円(当時の価格です)とのことで、思わず購入してしまった。家でもやりたいという意思の現れである。

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<朝食>
朝は昨日同様のにんじん・りんごのミックスジュース。美味しい。空腹だからか、味覚に対する感度が高くなっているからか、感動的な美味しさに感じた。

そんなこんなをしているうちに、あっと言う間に解散の時間に。別れを惜しみつつ、庭になっている夏みかんをもいでもいいと言われ、初の夏みかん狩りを経験する。その間他の参加者の方とも少しコミュニケーションを取りつつ、これも道場の醍醐味だな、と思う。(私達は個室、皆さんは大部屋だったため、話す機会は少なかったことは少し悔やまれる)。

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ここまでが、合宿終了までの記録である。あくまで個人のレポートであるが、断食道場に行かれたい方には何かの役に立つと嬉しい。

後篇は、現実に戻ってからの記録、考えたことなどを記載していく。

UXコンサル、BtoBマーケ、人事を経てコミュニケーションマネージャー(広報、マーケ、採用広報、組織開発)なう。 書くこと:パン偏愛、可愛いもの布教、働くこと、生きること、1日1考、新サービス考察、旅行、読書録、銭湯、恋愛。 頂いたサポートは、もれなくパンの研究に使われます。