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双子の星/宮沢賢治

2020.1.3

天の川の西の岸にお宮を持つ双子のお星さまの物語。
彼らは毎晩、夜に空のほしめぐりの歌に合わせて銀笛をふきます。
彼らはとても無垢で、善人で、運命に従順です。
ある日は傷を負った蠍星を身を粉にして家まで送り届けたり、ある日は悪戯な箒星に騙され海の底に落ちてしまったり。そんな彼らのほんの少しの冒険譚のようなお話です。

「銀河鉄道の夜」の天の川に住む星たち

双子の星の作中には、蠍星や空の星めぐりの歌が登場します。これは銀河鉄道の夜の作中でも登場するものです。特に蠍星は色濃く私の記憶に残っています。
銀河鉄道の夜では、蠍星は赤色に煌煌と輝き空の道標として登場します。蠍星を見ていたジョバンニとカムパネルラ(銀河鉄道の夜の登場人物、主人公とその親友)は乗り合わせた他の乗客から蠍星についての話を聞きます。もしかしたらここで出てくる蠍星は双子の星に助けられた蠍なのかな?なんて想像をふくらませると、早く銀河鉄道の夜が読みたくなってきます。

清く、従順な心に満ちた双子の星

双子の星、チュンセ童子とポウセ童子はとても清く善意に溢れたお星様です。作中で傷を負った蠍を家の方まで二人で背負って連れてゆくという場面がありますが、この蠍が傷をおっているのは完全に自業自得です。しかし、 二人の星は実に重い蠍星を顔を真っ赤にしながらも文句一つ言わずに背負って歩きます。また、箒星に騙され海の底に落ちてしまったときも、それをあまり呪うことなく運命として受け入れているように見えます。彼らを私が持ちうる言葉で表すならば「聖人」でしょうか。清く、優しい。ただ、このどこまでも運命へ従順な姿勢と言葉たちが彼らの感情を感じさせない。まるで運命の操り人形のような二人の無感傷さに寂しさを感じました。

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