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2024年劇場初めは、やはりロンドンで(1)

2024年、始まりましたね。
今年も劇場でどんな作品と出会えるか、
どんな観客と出会えるか、楽しみです。

2024年の劇場初めは、やはりロンドンでした!1月5日に現地入り、18日まで劇場を巡っておりました。

気になる作品リストはこちら👇
1月6日 Hansel & Gretel @Globe /
Sunset BLVD. / Sondheim's Old Friends
1月7日
Hansel & Gretel @Royal Opera / Frozen
1月8日 Brief Encounter @ Manchester
1月9日 Oliver! @ Leeds /
The King & I @ Manchester
1月10日 White Christmas @ Sheffield
1月11日 The Lion,The Witch & The Wardrobe@Birmingham / Evita@Leister
1月12日 Time Traveler's Wife
1月13日 Kin/Back to the Future
1月14日 Edward Scissorhands / Jenufa
1月15日 Totoro
1月16日 Stranger Things
1月17日 Moulin Rouge / Home
1月18日 The Big Little Thing / The Witches

このnoteでは1月6日の3公演について触れたいと思います。
(キャプションなしの画像は公式サイト等から拝借しています)

Hansel & Gretel @ Globe

カーテンコールの様子

シェイクスピア・グローブ座の『ヘンゼルとグレーテル』。朝11時からの公演です。
ファミリー連れだけでなく、大人もかなりの数訪れていました。もちろんグローブスタイルで僕はStandingで鑑賞。たったの£5(¥900強)で楽しめるのも魅力的です。

Standingエリアを森に見立てヘンゼルとグレーテルが彷徨ったり、降ってきた雪(風船)をStandingの観客が跳ね返しあったり、観客が舞台装置のように作品に入っていける楽しい演出でした。

以前、Old Vic(ロンドンの南にある劇場)制作の『クリスマス・キャロル』をニューヨークで観た時に、スクルージが改心して街中にプレゼントを渡すシーンで、後ろから野菜や果物やパンが観客の手で運ばれてきて、舞台に渡されるという演出に、とても感銘を受けた記憶があるのですが、こういった観客を気持ちよく舞台演出に関与させるのは、グローブ座での上演の歴史・慣習というのが受け継がれているような気がします。観客は装置であり、出演者でもある、と。

本演出では、「なぜ、ヘンゼルとグレーテルは森に行かなければいけなかったのか?」という点が、しっかりデザインされていたことに、好感を抱きました。

もちろん貧しくなったから、というベースは変わらないのですが、そこに戦時下の疎開という意味を加えている点が、現在の世界情勢を意識させ、ファミリーで観る意味を感じさせました。同時間軸に、このヘンゼルとグレーテルのような子どもたちがいるかもしれない、とロンドンの子どもたち自身が考えさせるきっかけとなるからです。物語の終盤、ヘンゼルとグレーテルが帰宅すると、父親は戦死してしまっているのですが、この点でも、ただお伽噺では終わらせない、メディアとしての劇場の意義と底力を感じました。

追伸:ヘンゼルとグレーテルが寝ている間、夢の中を描くシーンでは、ラップに乗ってお菓子が舞っていて、大盛り上がりでした。

SUNSET BOULEVARD(サンセット大通り)

このシーズン最大の話題作、といっても過言ではない、ロイド=ウェバーの名作『サンセット大通り』。原作は映画ですが、映画では薄いサロメ要素がロイド=ウェバー版ではくっきり出てきて、よりノーマ(本作のヒロイン)の狂気が垣間見えます。

さて今回の演出、何がすごいのか?
言葉で説明するよりも、まずは舞台写真をご覧ください。

今回の演出はJamie Lloyd。ミニマリズムな観点での演出は、ウエストエンドでの演劇を再定義し、別階層に誘う、と大絶賛されている演出家です。少し前にはNational Theatreで上演された"The Effect"も好評で、ニューヨークに進出するようです。

驚きの演出はまず第一幕、序曲の部分。
今回演出は、カメラが舞台上を縦横無尽に動き回り、俳優たちの表情を映画のように追い続ける点が最大の特徴。そのカメラは逃げる車のハンドルに見立て、逃げるジョー(主人公)が感じている緊迫感を伝えてくれます。その後に、”SUNSEST BLVD.”と映し出された時には大歓声。まるで映画館にいるような雰囲気でした。

次に印象的だったのは第一幕の終盤。
ここは、年越しパーティーが行われるなかで、三角関係が生まれる転換点でもあるのですが、その3名それぞれにカメラがつき、アンサンブルがパーティーで盛り上がるなか走る、3名間の緊張感が、際立って感じられました。

そして最もすごかったのは第二幕の頭。
まずオーケストラだけによる楽曲が流れている間、楽屋サイドにいるジョーがカンパニーに挨拶しながら、舞台に向かっていく部分をカメラが追う映像がライブで流れます。

そして楽曲が終わると、なんとジョーが劇場の外で歌い始めます。ウエストエンドの劇場街でライブで歌いながら、劇場の中に入り、舞台に上がってくるのです。演劇における「第4の壁」を完璧に打破する演出。この第二幕の劇場街での歌唱は、公演期間中、名物となっていたようです。

圧巻だったのは、久々に撮影スタジオに来たノーマが歌う”As If We Never Said Goodbye”。昔の彼女の輝きが再現されるシーンなのですが、主演のNicole Scherzingerによる歌唱が圧巻でした。たまにある舞台進行が止まるほどの大歓声が、ここでは起きました。

カーテンコールのあと、映画のエンドロールのように、映像が流れるのですが、それがまたよかった。原作が映画という点と映像を用いた演出が完全にマッチした名演出のこの公演の締め方として最高でした。

ドラマを支えるロイド=ウェバーの音楽は、芳醇さが唯一無二だなと改めて感じさせます。ロンドンは彼のお膝元ということもありますが、人気は健在。昨年は"Aspects of Love"や”Love Never Dies”(後者はコンサート形式)を観ましたが、どちらもトロけるような芳醇さ。後者では観客が劇場を去る時に、劇中歌を口ずさみながら帰っていく姿を見て、愛を肌で感じました(なお同公演にロイド=ウェバーが登場し、休憩中にスタンディングオベーションがおきました)。

カーテンコールの様子

今年は伝説のミュージカル”Starlight Express”がロンドンで、ドラァグクイーンの世界に置き換えた演出の”Cats”がニューヨークで上演されるとのこと。またこの”SUNSEST BLVD.”はブロードウェイ進出が決定しました。まだまだロイド=ウェバーの魔法は解けそうにありません。

Steven Sondheim's Old Friends

ソンドハイムの名作によるメドレー形式のショー。バーナデット・ピーターズとレア・サロンガというミュージカル界を背負ってきたレジェンドを中心に、溢れるソンドハイム愛を爆発させるショーが展開されました。

歌われる楽曲は、なんと40曲。
彼の遊び心満載の楽曲が次々と披露されていきます。

最終盤、ソンドハイムの写真を見てバーナデットが歌う"Not a Day Goes Bye"の後に"Being Alive""Old Friends"と続いていくのですが、ここはソンドハイムファンからすれば、大号泣間違いなしではないでしょうか。

彼の死から2年強。家族で過ごしたThanksgiving Dayの翌日に亡くなったというエピソードが、彼の温かさ、優しさを感じさせてなりません。

この日の公演は、最終公演。会場も生粋のソンドハイムファンで満たされていたのではないでしょうか。カーテンコールでは、会場中で”Old Friends”の大合唱が起きました。

ロンドンでは2010年のBBC Proms(音楽祭)で80歳記念のコンサートが開かれました。その映像を観て、ソンドハイムの魅力に取り憑かれた僕にとっては、ロンドンでこのような体験ができることが夢のようでした。

カーテンコールの様子

Day1は現代ミュージカルの礎となっている、ロイド=ウェバーとソンドハイムの音楽に溺れる幸せな1日でした。次回は、Day2のHansel & Gretel @Royal Opera / FrozenとDay3のBrief Encounter @ Manchesterについて触れたいと思います!

ご覧いただきありがとうございました。

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