星の出ているうちに帰っておいで*覚醒*she said epi52
数年ぶりに出会った驚きより、自然体でいられる2人に驚いた。ユウがコーヒーを買いに行くと言ってくれたけど、そのままいなくなっちゃうんじゃないかと思って怖くなる。うっすらとした「怖い」という気持ちは、きっと昔のワタシが顔を出しただけ。気持ちはすぐに落ち着いた。
ユウが缶コーヒーを片手に戻ってくる。
「どうしてこんなところに?」
「ふとドライブがてら、なんとなくだよ。カコだって笑」
「私もなんとなく笑。気持ち良い日だから、何も考えずドライブしたくて。一緒だね笑」
「再会してからは、シンクロばっかしてたよな笑」
声を聞くだけで落ち着く。自然と手を繋いでユウのぬくもりを感じていた。
このまま時間が止まっちゃえばいいのに。難しいことも何も考えたくない。ただこの空間が心地よくて仕方がない。
「カコ…俺、離婚して仕事も辞めて実家に帰ってきたんだ」
想像していない言葉だった。正直、ユウは家族からは離れられないと思っていたから…。
「俺たちは一緒になるために生まれてきたんだ」
ユウは別れる前にそう言っていたけど、
先の期待はしていなかった。ユウから愛される存在であることだけで、いつも近くにいるような感覚があった。だから、もう誰かで自分の満たされない心を満たす必要もなかった。ツインレイとか、そんなことさえもどうでもよくなっていた。
「カコ。これ」
そう言って、ユウはティファニーの箱を取り出した。思考がついていかない。頭の中は、何が起きているのかわからないまま、涙だけがただただ溢れていた。
「本当は…スーツで花束でも持ってさ。もっとドラマチックな渡し方を考えていたんだけど(笑)顔を見たら抑えきれなくなっちゃった(笑)」
「一緒になろう。これからは2人で乗り越えていこう」
早く「YES」と応えたいのに、言葉にならない。ユウの目を見て頷くだけで精一杯だった。
私の震える手を、温かいユウの手が包み込む。
2人でリボンをゆっくりとほどいていく。
2人で箱を開けると、マリッジリングが並んでいた。
エンゲージリングはいらないって言っていた。さらに涙が溢れてくる。私の薬指に指輪をつけてくれた。不思議とピッタリで驚く。
「俺にもつけてよ」
まるで少年のような、屈託ない笑顔で左手を差し出してきた。その仕草が、なんだかかわいくて仕方ない。ユウの左手を私の左手を空にかざす。銀杏の黄色と、薬指で輝く指輪に二人で顔を合わせて笑った。
ここまで、10年。離れている時間は4年…。何度も自信を無くして、苦しくて…忘れられないし、嫌いにもなれない。どうしても心にユウがいて、「執着が酷い」と自分を責めていた時もあった。
それでも、いまここにいる。何ごともなかったように…。格好いい言葉なんてない。何年も会っていなくても、あの時の二人のまま。
偶然が繋がり必然になる。
会っていない時、驚くほどの「一緒」があった。
まるで、離れていても繋がっている感覚の答え合わせをしているのよう…。
「こっちで一緒に暮らさないか?カコは、まだライターやってるの?」
「うん。ずっとそうしたいと思ってた。仕事は変ってないよ。今はほとんど在宅になってる。てかさ、ユウの方だよ!今何してるの?」
「前に勤めてた印刷会社の営業だよ。今度は部長だ。ゆっくり話そう…。沢山話していこう」
「うん。そうだね。沢山話そう。私、今小説書いてるんだ。ネットだけだし、全然売れてないけどさ(笑)本になったらいいなー。って私の夢なんだ」
「すごいじゃん!なんてやつ?」
「恥ずかしいな…。『星の出ているうちに帰っておいで』ってタイトル。私たちのことを…。ツインレイの物語が描きたくて。ごめんね。勝手に言葉とか使っちゃってた」
「そのタイトル…。由来はなんなの?」
「由来?夢で見たの。とっても素敵な言葉だなって。それから、なんか小説書きたくなって…」
「読んだよ…。それ。途中で有料になっちゃってて。その先は読んでないけど。まじで…?すげーじゃん!!」
恥ずかしい…でも嬉しかった。ユウはそう言うと思ってた。
二人で手を繋いで、そのままユウの家に挨拶に行く。
そして、その夜私たちは繋がった。
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