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川人博著『過労自殺』自ら命を断つということ

※本記事はヘビーな表現を含みます。あらかじめご了承ください。

自殺志願者は人の意見を聞こうとしない。
「一人で悩まず相談してね」とか「自殺専用ダイヤルは何番」とか世間の皆さんは自殺を止めようとしてくれるけど、ほんとに死のうと思ってる人は、わざわざ、電話したり、相談したり、しない。「周りに相談できなくて死んだ」んじゃない。相談したくなかった。自分がいなくなれば一番いい、自分の考えが絶対正しいんだって、本気で考え抜いた回答を否定してもらいたくない。否定され続けて、最後に見つけた答えを、それさえも否定されたくないから。
これを書いている僕も本気で自殺を考えたことがある。あるとき何もかも嫌になって、深夜、流しの前で突き立てた包丁の先を腹に刺しそうになって、結局手が震えてやめた。あの時の感覚は今でも忘れない。多分一生忘れない。

川人博著「過労自殺 第二版」。本書は労働における問題の中自ら命を断った方の遺書をもとに、彼らの置かれた当時の労働環境、追い込まれた原因の解明、対策をまとめている。

僕自身、現在の職場では繁忙期で週6勤務の仕事をしている。残業代もちゃんと出してくれるし、職場の方々にも恵まれていると思う。けれども、自分の仕事ミスが多すぎて上司に小言をもらうことも毎日あるし、なんなら今、退職を勧められている。自業自得、職場に行くのが前より怖くなった。けれども昔ほど自殺しようは考えなくなった。

彼らは自殺しなくてよかった。休みが取れなくて、評価されなくて、脅されて、ハラスメントに悩まされて、彼らは死んだ。背景には何があったのか。本書では遺書を通して、その背景を浮き彫りにしている。遺書の特徴としては「生きていてすみません」「こんな自分ですみません」といった自責が目立つことがわかる。
ウルセェ。逃げろ。彼らがわざわざ死んでやる必要なんてなかったのだ。
現代でも続く「辞めづらい」社会体質。この背景には「恩義を裏切ってしまうから」とか「逃げようとしてると思われるから」などと言った礼儀、恩が原因になることがあるのだと思う。

自殺志願者は人の意見を聞こうとしないの前述のくだり、思うに、人の意見なんてほんとは聞かなくてもいいのだとも思う。親の意見も、友達の意見も、先生の意見も、上司の意見も、ありがたい教祖様の意見も聞かなくてもいい。
ただ、自分の意見だけはよく聞いてあげて欲しい。他人がどう意見しようと、結局はあなたを助けてあげられるのは他でもないあなたなのだ。
元自殺志願者の僕も、今こうして呑気に記事を書いたり社畜してご飯食べたりしている。会社に行くのは毎日憂鬱だけど、やり遂げたいことも見つけたし、生きている。生きていこうと思えている。
それは自分の意見を聞いていたからだと思う。結論は急がなくていい。自分のペースでいい。弱音でもいい、きったねえ欲望でもいい、この際嫌いな奴の悪口でもいい。自分の意見を少しでも聞いてあげて欲しい。ほんとうはどうしたいのか。
どうせ人は死ぬ。延命したっても無駄。何やっても結局死ぬ。だから自分から嫌いな奴らのために死に急いでやる必要なんてひとつもない。
体が不自由だって、ブスだって、頭が悪くたって、無能と呆れられたって、いじめられたって構わない。こうして生きている以上、存分に生を享受して死んでやれ。大暴れして、他人に迷惑かけまくって、愛されて死ね。
僕もそのつもりでいる。元自殺志願者として。

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