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江部航平
2023年9月16日 17:25
夜半の中途覚醒だった。夜のぬるさに肉体の輪郭が溶け出していた。自然と意識が目覚め、僕の意識は闇の天井を見つめ出した。 窓の外からはぱたぱたと雨音が聞こえていて、まどろみの浮くような感覚は特別な高揚感をともなう。時間の支配のない、この全く希少な感覚を損なわないように、僕は暗い部屋の中から玄関へ向かった。 外の雨は柔らかい霧のようにひやりとした。身一つで見やる外の景色は平面的で、部屋のアパートも