プロダクションにとっての「ホスピタリティ」とは


■エキストラにも人生がある。


実は、私はあまり映画をみません。

この業界に長くいて、あんまり言わないようにしているのですが、
一番好きな映画は「タイタニック」です笑
これ言うと、大体の人にバカにされます。

そんな中、先日、映画「宮松と山下」を観ました。

ざっくり言うと、エキストラの人生を香川さんが演じる映画です。
(関係者の皆さん、こんな雑な説明からですみません、、自分が言っても全く説得力ないですが、、すごく深い良い映画です)

映像業界あるある的な要素もたくさんあり、そういう意味でも面白く観れたのですが、 一番は、エキストラという仕事にも、その人たちの人生があるということを、改めて感じさせてくれたことでした。

どうしても現場で、対応がないがしろになりがちなエキストラの方々。
その人たちにも人生があり、制作に関わる全ての人たちのことを、ちゃんと現場で考えてやっていたのかと、自問自答してしまいました。

それで、今回「ホスピタリティ」というテーマで書こうと思いました。


■自分を変えた串八


小学6年生の時、とあるトラウマが原因で、完全に自分に自信が持てなくなりました。
「自分はいてもいなくてもいいのではないか…」
それを今でも引きずっており、私の最大のコンプレックスとなっています。

時は流れ、、大学の時にアルバイトをした京都の「串八」という居酒屋が、 そんな自分の人生を大きく変えてくれました。

当時は「ホスピタリティ」という言葉も今ほど一般的ではなかった時代。
帝国ホテルやJAL、オリエンタルランドといった、一流のおもてなし=ホスピタリティを、1本60円からの格安居酒屋で実践するお店でした。

歩き方、所作、笑顔の作り方という表面的な部分はもちろんですが、
なによりも、「数多くのお店の中から、特別な外食に串八を選んで頂きありがとうございます」という感謝の気持ちを、一切の妥協をせず、一人一人のお客様全てに伝えること。

この考え方に共感し、実践した4年間。
全アルバイトのリーダーになり、初めて自分は、人のために働くことで居場所を見つけられたと思いました。完全に自分の原点です。

今年、恩返しとして串八のリクルーティング映像を作成させて頂きました。
もし良ければ見て頂けたら嬉しいです。(注:かなり長いです、、)


■コミュニケーション能力を鍛えるために


バイトで自信をつけた私は、社会人になり、また大きな壁にぶつかります。

この仕事において最も必要な能力、コミュニケーション能力です。

自分に自信のない人間は、本能的にコミュニケーションにおいて奥手になってしまいます。 「自分の話など周りは興味がない」というマインドになり、自分のことは話さなくなります。
(自分から発信することは苦手だと、最初のnoteに書いた理由です。)

そこで、自分がやったことは、大きく2つ。

1:コミュニケーションお化けの人を観察して、真似すること。
→ありがたいことに、自分の同期にはこの能力に長けている人が多かったので、 とにかく観察しました。そしてバカになって、真似しました。
ここでプライドなどは不要であることを学びました。

2:話のネタになることは、なるべくやってみること。
→人の2倍努力して、やっと周りの人たちと対等になれる。
だから、自分が努力してネタになる物理的なことは、なるべくやってきたと思います。

特に仕事面で役に立つと思えば、ゴルフ・ダイエット・ワイン・脱毛など、いろいろやります笑

もちろん、これは自分が楽しんでやっているので、無理はしていないのですが、 周りの人が興味をもってくれる話題をもっておくことは、とても大事だと思っています。


■私が考える「ホスピタリティ」


そして、やっと本題です。(自分語り多すぎ、、)

私が考える「ホスピタリティ」は、以下4つのステップが重要です。

① 相手の立場になって考える。
② その相手が最も感動する対応・サービスを考え、結果を予測する。
③ それを妥協なく実践する。
④ これらを関わる人全てに対してやり続ける。

① は、相手はプロですから、それなりの知識と経験が必要です。
なので、最低限の勉強や興味を持つことが大切。
これが、ホスピタリティの土台になり、大前提でもあります。

② は、相手に対してのリスペクトが必要です。
自分にしかできないことはなにかを真摯に考えないと、感動させるレベルには行きません。 そして、リスペクトがあれば、自然にこれはできることだと思っています。

③ は、自分に厳しいかどうか。
結局、行動に移さなければ、相手に伝わりません。 忙しさを理由に「めんどくせ」とか「こんな感じでいっか」となってしまうことも多々あると思いますが、妥協せずやることが、人の心を打つと思っています。

④ は、一番難しい。これをやるには広い視野と想像力が必要です。
①〜③までを完璧にやるだけでも大変なのに、関わる人全員にそれをやることは不可能だと思うでしょう。でもやる。少なくともやろうとしなければダメです。制作に関わる誰1人として、無駄な人などいないのですから。

これらを例えば、弁当の話に置き換えてみるとわかりやすいです。

① ができない人は、弁当の発注すら忘れるでしょう。
エディターさんに飯抜きでずっと作業させている人です。

② ができない人は、いつも同じ弁当を発注するでしょう。
食えたらいいでしょ的なセレクトになります。

③ ができない人は、いい弁当を発注したが、ただ置いておくだけでしょう。
食事の時間を作るために、現場を仕切ることをしない。せっかくの弁当が台無しになり、余ることになります。

④ ができない人は、弁当の個数を間違えるでしょう。
スタッフや関係者に対して自分の中で序列・優劣を作ってしまう人です。

いろいろ偉そうに言っていますが、自分も全部できるわけではありません。。あくまで目標というか、理想をこうやって書くことで改めてちゃんとしなきゃなと思う次第です。。


■ホスピタリティがいいものをつくる理由


私が掲げる「Creative×Hospitality」という点。
弁当を例にしたことで、ここが少しわかりにくくなってしまいました。。

プロダクションの仕事は、「0→1」ではなく「1→100」だと思っています。
生み出す仕事ではなく、生まれた企画をアウトプットするために必要な行程において、クオリティを左右する仕事。

そこがうまくいかなければ、80点止まりになってしまうし、120点になることもある。

誤解を恐れずに言うと、「0→1」よりも「1→100」の方が99点分やることが多いし、 それだけ、過程が大事であり、関わる人たちも多くなります。

だから、その人たちの力を最大限に発揮させるために、 ホスピタリティは欠かすことができない大切な要素です。

そして、それがアウトプットのクオリティに直結すると思っています。


■人のために生きる


陸上選手の為末大さんが「コンプレックスとアイデンティティは表裏一体」というお話をされていました。
自分のコンプレックスをバネに成長できるか。

私の場合「自分は不要」というコンプレックスが深ければ深いほど、 自身の幸せは度外視して、まわりのために頑張りたいという気持ちになります。
逆に、感謝された時の喜びは、何にも変えがたいものがあります。

「人のために生きる」

めちゃくちゃ偽善者っぽく聞こえるのですが、 本当にそう思っているからこそ、いまの立場にいるのだと思っています。
コンプレックスが自分の唯一の強みになっていると思います。

そして、それが絶対に自分に返ってくるということも無意識的に理解しています。 だから、「人のために生きる」ことが、最終的に「自分を幸せにする」ことだと信じています。決して自虐的ではなく。

自分が考える「ホスピタリティ」は、表面的なことではなく、その人のことや、その先の人生も考えたサービスになっているか。そのために、深層心理に深く根付く、感動させるための努力と、バカになれる真摯さがあるか。
自分に厳しくないと、真のホスピタリティは発揮できないと思っています。

キープロルールを書いた時、これを全員が守る必要ないと伝えたのは、
すこしでも、自分がやってきたことのエッセンスだけでも感じてもらえたらいいなと思ったからです。

そして、いま業界全体を少しでも良くするためにどうすればいいか、こうしてnoteを書いていますが、その動機は、今まで自分の周りの人が幸せになればという考え方を、もう少し範囲を広げていけたら、きっとその先、自分がもっと幸せになれるんじゃないかと思ったからだと思います。

「人のために生きる」と言っておきながら、結局は自分のためなんですよね苦笑


■おわりに


いろいろとこのnoteを話題にしてくださり、大変嬉しく思っています。
その際、私が一番大事に思っているホスピタリティという言葉が、少し表面的な意味に捉えられている気がして、今回はこのテーマで書いてみました。

映画みたり、後輩と会話したりする中で、急遽テーマを変えたこともあり、 今回は時間がなくて、バーっと思いのまま書いたので、脈絡ない文章になっています、、苦笑

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
今年最後のnoteになると思うので、少し早いですが、みなさん良いお年を!

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