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轟音シアターで映画を観る

240830。

『きみの色』というアニメ映画を公開日に鑑賞した。

ネタバレしたくないので軽くあらすじだけ。

この映画は、トツ子、きみ、ルイ、という、それぞれ悩みを抱える3人の高校生が、バンドを結成して音楽を作っていく話だ。

特に映像のカラフルさが出色の出来だった。




そんな「きみの色」という映画をTOHOシネマズで観たのだが、僕が入ったスクリーンは、「轟音シアター」と呼ばれるところだった。

轟音シアターとは、TOHOシネマズのウェブサイトの説明によると、

「音の体感・迫力あるサウンドを意識したシアターです。スピーカーユニットを向かい合わせで駆動させることで通常の1.5倍~2倍のパワーを発揮するアイソバリック方式を採用したサブウーハーを導入します。これまでに体感したことのない、身体を震わせる【轟音】の音圧と【静寂】のコントラストを、ぜひお楽しみください。

TOHOシネマズ ウェブサイトより引用

とのことだった。

簡単に言えば、通常のスクリーンよりも大きい音圧や音の震えを楽しめるということだと思う。

結論から言えば轟音シアター、はじめて体験したのだがとても素晴らしかった。

なんせ『きみの色』という映画は音楽の映画なので、例えば演奏シーンなどでド迫力の音が流れた時、まるで本当にライブ会場にいるかのような臨場感が味わえるからだ。

また上映中はずっとバカでかい音が流れている訳ではなく、穏やかなシーンはより静かに、激しいシーンはより激しく、音を楽しむことが出来るからだ。

轟音シアターは秀逸なサービス。例えば音楽映画だけでなく、アクション映画やホラー映画だとより力を発揮するんだろうなと感じた。




ただ、個人的に後悔しているのが、鑑賞中に「轟音」か「轟音ではないか」で、作品の状況を予測してしまったことだ。

例えば冒頭のパート、轟音ではないシーンが続いた時は、

「なるほど。映画が始まって数分、まだ轟音は感じられない。ということはこの映画は現在、導入部分!映画の状況説明をしているシーンなんだ!主要人物をとりあえずひと通り出演させているシーンなんだ!大事なところを聞き逃さず観よ」

と、作品の流れを、音量によって判断してしまったのだ。

また、女の子がひとりで葛藤する、かつ、轟音でないシーンでは、

「今は轟音じゃない。ということはこのシーン、実は繊細で重苦しい思春期の悩みを描いているのではないか?だって10代の多感な時期の悩みを大音量で聞かせたい演出なんて、この世に無いもんな。やさしい気持ちで集中して観よ」

と、轟音が流れてないという理由で、繊細なシーンだと決めつけてしまった。

あと逆に、上映が始まって以来いちばんの轟音シーンだと、

「はいはい分かりました。今はクライマックスなんですね。最大の盛り上がりなんですね。いくらトイレに行きたい膀胱肥大野郎もこの場面だけは座席から立ってはいけないんですね。ということはさぞ、格好いい演奏が聴けるのでしょうね。背筋伸ばしてシャキッと観よ」

などと、轟音が流れたから、ワクワクするシーンが来ると予測してしまった。

またクライマックスの演奏シーンで、
「このシーン、逆にめちゃくちゃ音量小さかったら、さぞおもしろいだろうな」
とか、余計な妄想もしてしまった。







鑑賞後、やや後悔した。

しまった。

音の大小で、物語を判断しなければよかった。

だってそいつ集中してねえもん。

物語に集中してる奴は、音の大小でストーリーの状況や展開を読まない。

物語に集中してる奴は、音の大小でキャラクターの感情を読まない。

物語に集中してる奴は、そもそも音量に集中していない。

「轟音かどうか」に気を取られすぎて、「今、この瞬間の映画の快楽」にのめり込むことが出来なかった。本当は、のめり込むための轟音なのに。

なにをやってんだ僕は。




瞬間の集中度と人生の充実度は比例する。

作中のメインキャラ3人は、圧倒的青春の「今」に集中して、心を込めて音楽をしていた。

僕もそれくらいの集中力で、映画を今後は楽しみたい。

でも、作品と轟音シアターは、魂を震わせる良き物だった。

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