マガジンのカバー画像

まほろば流麗譚

39
運営しているクリエイター

2024年7月の記事一覧

思慕一途柳問答 10

皆さ、勇也を誤解してるよね。
勇也は大胆だし決断力もある。
判断は早い方だと思う。

でもさ、この人は意外と繊細なのよ。
だから物凄い早さで色々考えてる。
そして決めてる。

口では何と言ってても、約束した事は守る。
守れないとひどく落ち込む。

あたしがろくろ首に関わるな!って言ったから、今回はそのつもりに決めてたんだね。

だから澪さんが屋台に来た時、嫌な顔をしてたんだ。
深入りすると放ってお

もっとみる

思慕一途柳問答 9

「へえ?どういう事ったよ!?」

訳が分からないのは勇也も同じである。

「あんた、お節介なんだよぉ。
 そうやって目に映る連中に片っ端から関わるから
 当たりを引いちまうって話さぁね。」

「ああ、確かに勇さんは、それだ。」

珍しく信幸が口を挟んだ。
澪がその信幸を見る。

「あんた、武士だったねぇい。」

「お恥ずかしい、、
 身に付いたものはぁ、どうにも。」

「澪さん、何で分かるの?」

もっとみる

思慕一途柳問答 8

「ひゃっあ!!」

不意に後ろから声を掛けられた女は、やはり素っ頓狂な声を出し小さく身体を飛び上がらせた。

「お妙、、はい。以前はそう呼ばれていましたけれど
 ぉ、、どちら様ですかぁ?」

それから振り返らないままで答えた。

「お妙、あっしの事が分からねぇのかい?」

「あのぅ、誰かと間違えてませんかぁ。今の私を妙と
 呼ぶ人はいませんからぁ。」

そこに堪らず勇也も来る。

「流園さん、どう

もっとみる

思慕一途柳問答 7

信幸の屋台は柳の前の小道を進んでいくとある。   
同じ川沿いにはなる。
その小道の先には少し開けた場所がある。
川の水が使え、人数が居る事も出来る。
元は勇也の組が大八車や仕事道具を置くのに使っていた。

今はそこに余った切り株やら樽やらが置いてある。
そこに大八車に乗っかった形に鉄斎が作ってくれた屋台が入り、皆で輪になり飲み食いをする。
冬になってからは三箇所に火鉢を置き、そこにそれぞれが座る

もっとみる