水溜まり
動きを止めて 張りつめた動物のように
ぴんと水を張り詰めた 大きな大きな水溜まり
銀色の空と
グレージュの裏山が 静かに映り込んでいる
水溜まりの手前には
ピンクの真新しいながぐつ
しばし立ち止まって
水溜まりを値踏みして
ためらっている
思いとどまってくれるのか……?
しかし、
そうっと、一歩……
そうっと、もう一歩、
入ってしまえば、
バシャバシャ! バシャバシャバシャバシャ!!
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ!!!
だんだんはやく、だんだんはげしく、
バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ!!!!!!
水溜まりは 見る見る淀んで 眩んでいく
ありゃ~、もう、空も山も見えなくなっちゃったね。
・・・・・・・
ふと水溜まりから目を上げると、遠くから
ごみ出し帰りの うちの母……
というか、うちのおばあさん。
笑いながら、小さく手を振ってくる
・・・急に現在に引き戻される
「雲子、今日はコープさんの配達曜日だよ?」
「おっ、そうだ、忘れてた!」
「あんた、おばあさんより忘れっぽいんじゃないかね?」
「わたしだって、もう立派なおばさん、いい歳だからね~」
おばさんであることを なぜか誇ってしまう
10年前も、もっともっとずーっと前も、
雨の日にはこの道にできる この 大きな大きな水溜まり。
ちゃぽん。
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