見出し画像

大した夢ではないが叶ってる

時間を止めてスーパー内にある
シャウエッセンを食べ尽したい。

シャウエッセンが宝石と同等の価値を持っていた、子供時代の夢だ。



お母さんと手を繋ぎスーパーへ行くと
大抵ウインナーの試食会をしていた。

ウインナーを買おうと思っている日は
試食をもらってOK、と許可がおりるが
買わない日は絶対にNGなので


試食のお姉さんに熱視線を送りつつ
指を咥えながらウインナー前を通り過ぎる。


シャウエッセンを食い尽くすことと同じくらい、あの試食の人になることも夢だった。

お腹の空いている私に
美味しいウインナーを試食させてくれる、
しあわせをくれる素晴らしい仕事だ。


試食をさせてもらい、
お母さんが商品を買う。

なんでもないただの買い物が
幸せな時間に変わる瞬間。
みんなが満たされている幸福な空間。


大人になってすぐ
私は子供の頃の夢を叶えた。

スーパー内のシャウエッセンを食べ尽くすことはできなかったけど、飽きるまでシャウエッセンを食べた。

2袋でギブアップした。



新卒で入社した会社を一瞬で辞めたあと
いっとき引きこもり、その後リハビリを兼ねていろんな仕事をしてみた。

その中には
もう一つの夢だった試食の人も含まれている。

たくさんのアルバイトをしてみたけど
二度目ましてがない人間と
初めましてを繰り返す試食の人、
通称マネキンの仕事が一番好きだ。





子供と関わる時はいつも
試食の人にウインナーをもらって
幸せだったあの瞬間を思い出した。

なんでもない今日が
なんかちょっと良い1日、
ちょっと楽しかった1日として
この子達の記憶に残れたらいいと思いながら
試食を渡す。



こうして考えてみると
大した内容じゃないけど案外夢は叶っているものなのだと思う。

ここまで書いた
二つの夢はもちろんそうだけど

他にも、めちゃくちゃ誰かを好きになってボロボロに傷ついてみたい

とか、

制服のスカート短くしてプリクラ撮りたい
とか、
今日はどんな文章を書こうかと悩んでみたい
とか、
ロングヘアーにしてふわふわのパーマかけてみたい
とか、
一人暮らしをしてみたい
とか。

まだまだたくさんあるし
どれもこれも大した夢じゃなさすぎて
よう書いたな、と思いもするが…
ちゃんと叶ってるんだよなぁ。


なので今現在の私がぼんやり思い描いている夢も身の丈にぴったり合う形でちゃんと叶ってくれるんだろうと思っている。

楽しみにしていよう。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?