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不妊治療とおかね

不妊治療と切ってもきれない話は、おかねのことだ。

不妊治療と一口に言っても何段階かを総合して「不妊治療」と言う。

人によりけり踏むステップは変わるが、まず多くの人が最初に取り組むのがタイミング治療。つまり、排卵する日を特定をするために通院を重ね、「この日に夫婦生活(病院では、性交を夫婦生活と表現する。つまり法律上の夫婦でないと不妊治療を受けられないということでもある)を持ってください」との指示を受けるという治療。

症状にもよるが、タイミング治療の場合は月に3〜5回の通院が一般的ではないだろうか。検査や初診にかかるまとまったおかねを除いて考えると月に1万〜2万円の出費だろう。

これを数回続けて難しい場合、年齢が高ければ体外授精にいく人もいるが一般的には次のステップは人工授精。採取した精子を子宮内に置いてくるという治療で通常の性交よりも人工的に精子を卵子に距離を近づける作業だ。ただ置いてくるだけなので、受精するか着床するかは女性の妊娠力や年齢に依存する。

この治療は人工授精の治療単体で1〜2万円、それ以外にタイミング同様に月に3〜6回程度の通院、排卵がしにくい場合は投薬や注射をするため1〜2万円かかるので総額2〜4万円がかかる。

健康で大きな病気にかからず生きてきた場合、毎月病院に3〜5回通い(しかも全ては卵のタイミング、育成状況に自分を合わせるため時間や曜日は選べない。どんな事情があってもたいがい病院を優先する)毎月数万円が出ていくのすら、今までにないことだろう。

しかし、真のおかね問題は最終ステップの体外授精だ。

私の場合は体外授精専門の病院に転院し、また一から検査などの初期投資をしたうえで二ヶ月後、初めての採卵をした。不妊治療に明るくない人向けに説明しておくと、タイミングと人工授精に関しては自分の体内に毎月起きる排卵はエコーで観察するのみだが、体外授精は卵子を体外にとりだして人工的に精子と出会わせ受精をさせるため、卵を取り出す「採卵」を行う。

とにかく体外授精において、ここがまず難関と言われる。卵が適切に育つまで何度も病院に行き観察する時間的コストに加えて、その採卵手術自体が痛みを伴う苦しいものだからだ。

また、いくつか卵が取れ精子を授精させても成熟しないなどの難関もその先にある。もし受精卵ができずにまた次の採卵ステップに戻る場合にも、おかねは当然かかる。私の場合、採卵自体にかかったおかねは、24万円。それ以外に凍結費用が数万円。幸いにも受精卵まで育って、女性の体内に戻す移植というステップに一回あたり12万円程度。採卵して移植するという1サイクルに約36万円である(病院による。もっと高額のところもある)プラス通院、診察費用がかかってくるので40万円弱と考えていいだろう。

体外授精(顕微ふくむ)は、不妊治療の最終地点であると同時に一回あたりが高額だ。成功するまでやり続けるものでもないし、そもそも経済的に10回も20回もできない家庭がほとんどだ。その分、主に通院や治療の主体になる女性側を精神的に追い詰める。

ここで諦めたら一生子供をもつことはできない、という閉塞感。

常に何の感慨もなく、「また明日病院に来てください」と言い渡され、常時予定未定となる恐怖感。

そして数十万円単位でおかねを病院におさめていくときの寂寥感。

最新の技術に頼らなければ子供が持てない自分への無力さとおかねを不妊治療という名の穴の中に投げ入れているような虚無感を抱えながら、多くの女性が多くの夫婦がきっと頑張っている。

不妊治療とおかねの話に、まだ自分なりの解が出せていない。

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