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転職市場から見る鉄道業界からの転職について

こんにちは。
本日は鉄道業界から未経験で人材領域に転職を経験した私自身の経験を元に、
「鉄道業界から転職を考えている方への最初の一歩」について書いてみようと思います。

転職活動はキャリアの健康診断

以前も記事にしたのですが、鉄道業界というのはかなり閉じた世界であり、
終身雇用が未だに当たり前の価値観としてあります。
コロナ禍以降、業績の悪化に伴い不安を感じている若手社員も多くいるかとは思いますが、業界全体として見れば依然として世間の企業のような離職率とはなっておらず、インフラを担う企業の安定性を感じさせます。

ただ、離職率が低い=良い会社であると認識するのは危うさもあります。
人材の流動性が低い会社には2パターンあり、1つは社員の定着率が高い組織であること、そしてもう1つはそもそも転職しようにもできない組織であるということです。

鉄道会社に限らず歴史のある大手日本企業の多くは、未だ年功序列型の賃金を採用しているケースが多々あります。年功序列型賃金はもちろん生活の見通しの立てやすさなどの多大なメリットがある一方で、自らが望むキャリアを積むために順番待ちが必要となるなど、個人の能力面よりもむしろ会社への依存度(年数)が評価につながっていくという負の側面もあります。

私自身が転職を考える上でネックになったのもここで、やっとキャリアについて考えられる年数在籍してこれからなのに、今転職するとこれまでの在籍年数が無駄になるのでは、、という恐怖は正直大きかったです。

ただ、やはりこれも大企業独特の感性だとは思っていて、「自分の希望するキャリアを歩むために会社からの評価を待つ」というのはあまり本質的ではないというか、健康的な選択肢ではないなと今では強く思うようになりました

働く上で、入社当初と志向性が変わってくるというのは至極当たり前のことだと思っていて、やってみたい仕事や自分の大切にする価値観も年を経るごとに変わって良いのだと思っています。

なので、望むキャリアを得るために自分でコントロールし得ない環境下でチャンスを待つというのは、この変化の時代においてはもはやリスクとして大きすぎると感じています。特に鉄道会社のようなインフラ企業は個人の業績が目に見える形で表れるわけではありませんので、余計にそう感じます。

だからこそ、転職を実際にするかどうかはさておいて、定期的に自分の市場価値を測るといったアクションは、自身のキャリアにおける健康診断的な意味合いでも非常に重要だと考えています。

転職市場の構造

では、実際にキャリアを見つめ直すという意味で転職を捉える前に、一度求人を出す側、つまり企業側がどうやって候補者を見つけるか、という視点に立ってみます。

  • 企業HPの採用情報

  • エージェントからの紹介

  • 求人媒体への掲載

  • SNS

  • リファラル採用

  • etc…

ざっと上記のような経路かと思います。
そのうち中途採用であれば、エージェント経由での紹介が主になってくるかと思います。
これには理由があって、どの企業も中途採用枠は基本的に経験者であったりそれに準ずる即戦力人材を採用したいのですよね。じっくり育て、会社の風土を根付かせられる新卒との違いはそこにあります。また、ある程度時期を決めて採用活動ができる新卒採用と違い、通年実施していることの多い中途採用では明らかにミスマッチな候補者との選考に社内のリソースを割けないという懐事情もあります。そのため、エージェントに求人票を出し志向の合った求職者を選考へと進めていきます。

さて、ここでポイントとなるのは、「エージェントはどのタイミングで報酬を得ているか」ということです。

会社によって違いはあると思いますが、基本的にはエージェントの報酬は、求職者を紹介し採用に結びついた段階で支払われます。つまり、出来高制のような仕組みです。ここでの報酬は、採用された求職者の年収をベースに支払われることが多く、年収の3割〜がフィーといったケースが主流でしょうか。
競争の激しいIT人材などだと、フィーが年収の100%を超えることもあるなど、求人を出す企業側の姿勢によってもエージェントの動きは変化してきます。

なぜこの話をしたかというと、上記のような構造において、自分がエージェント側だとすると「どのような人材に出会いたいか」ということは逆の立場に立って一度想像してみた方が良いと考えているからです。

つまり、求人年収の30%のフィーで活動するエージェントがいたとして、
年収1000万の企業に入社できる求職者と、年収300万の企業に入社できる求職者とでは、同じ手間をかけ入社に結びつけたとして得られるフィーは3倍以上の差があるのです。

ですので、求職者の価値がそこまで高くないと判断した時点で、手間をかけずに入社させられそうな求人を紹介するのは至極当たり前の行動なのです。求人を出す側としても、明らかにミスマッチな候補者を多く連れてくるエージェントへの信頼は当然低くなりますから、リスクは背負いたくないわけです。

鉄道会社で勤務をしていた経歴、つまり同業他社以外は基本的に未経験となる人材の市場価値は、こうした構造の中で冷静に判断されています。

少し転職活動を始めてみて折れる人の大半はここにぶち当たってしまうからではないでしょうか。
酷な事実ですし、現職に留まってもそれなりの給料をもらえるから、とここで転職という選択肢自体を諦めてしまう気持ちも勿論わかりますが、これこそ健康診断で黄信号もしくは赤信号なのに生活習慣を改めないことと同じです

これはその人自身が悪いわけではなく、規律を最優先にせざるを得ない鉄道会社の構造的な問題でもあります。年次や職責による命令系統がはっきりしているが故に、大半の人にとっては個人で特徴を持ったキャリアを積もうとしても積める環境ではないからです。

今現在、市場価値が低く判断される環境にいたとして、社内ですぐに好転できる材料がない、もしくはきっかけを待つ必要がある、といった状況を正しく認知することは状況を改善していくためのスタート地点です。もし環境を変えたいと考えているならば、現状のキャリアの不健康さに目を瞑らず、エージェントとのやりとりを通して自身のキャリアの棚卸しをしてみてはいかがでしょうか。

そんなに数多くはないかもしれないですが、かつて自分がこんな記事があったら良いのにな、と思っていたリアルな思いを書いてみました。鉄道会社の流動性の低さは想像以上で、エージェントも結構戸惑うんですよね、前例がなくて。なので、もしそんな悩みを抱えている方がいらっしゃればコメントや反応をいただけるととても嬉しいですし、何か力になれることがあれば私の経験であればいくらでもお伝えします。

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