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大人の発達障害グレーゾーンと境界知能の併存例

こんにちは、精神科医のはぐりんです。
※4分で全部読めます。お時間がない方は末尾のまとめだけでもご覧いただけたら嬉しいです。

今回は大人の発達障害グレーゾーン、正確には「大人になってから発覚した」発達障害グレーゾーンの実際のケースをご紹介したいと思います。

先日、とある40代の女性が、発達障害かどうか診てほしい一人で来院されました。診察した限りではそこまで特性は気にはなりませんでしたが、小学生のころから忘れ物が多く、最近では仕事で失念することが増えて困っている、と自身で判断し来院されました。

また一番の問題は夫婦関係にありました。日常生活のうっかりを夫が強く指摘し本人が萎縮してしまい確認行為が増え、ついには職場から引き返して確認し遅刻することも出てきました(強迫性障害?発達障害の二次障害)。と同時にほとんど口をきかないほど夫婦関係は冷め切ってしまったのです。

仕事と家庭の両方での度重なる失敗体験や自己不全感から、自身の判断で単独で来院されたのでした。

診察してみると、少し独特の言い回しであったり、年齢の割にはやや幼い話し方で、心理検査もいくつかやってもらい、不注意優位型のADHD(ADD)+ASDのグレーゾーンと診断しました。またWAISでは(短大卒ですが)IQ80台の境界知能と、ASDの方によく見られる処理速度の低下もみられました(以前の私の記事、論文紹介〜でも紹介しました)。

この方にとって何よりも重要なのは自身の特性を旦那さんや職場に理解してもらうことでした。私から電話をかけて説明するともお伝えしましたが、ご本人が希望されず(修復不能なほど夫婦関係は難しくなっていたよう)、心理検査の結果と診断名を書いた紙を持って診察を終えました。

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最近は大人の場合はこういった仕事上の困りごとからどうにもならなくなり一人で来院され、私の外来にこられる方のほとんどが発達障害(もしくはグレーゾーン)の診断に至っています。そして受診は診断のための2.3回のみ、一人で来院して家族や職場の方に説明する機会がなくそれっきりという方も多いです。

以前の記事(ウィングの三つ組)でも書きましたが、発達障害の中核症状は社会性の障害にあると思っていて、1人で来院して診断がついても、状況はほとんど変わらないのです。

また大人の場合は、すでに家庭や職場などある程度生活の基盤が固まっていて(子供がいたり、年齢的に転職が難しかったり)、その段階で「あれ、何かおかしい、私は発達障害かもしれない」と思っても現実的には環境を変えるのは難しく、特に今の3.40代の方の幼少期は発達障害という概念自体に乏しかった時代を生きてきたので、苦悩を抱えたまま大人になっている方も多いです。

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まとまらなくなってしまいましたが、

・3.40代になってようやく発達障害外来に来られる方も少なくない。
・そういった方は、幼少期〜若い頃に特性に気付かれず、原因がわからず長い間苦悩を抱えている方が多い。特に発達障害グレーゾーンや境界知能の場合、気付かれにくい
・実際に外来に来た方で診断がつく方はかなりいる。裏を返せば、受診していない大人の中にも、職場や家庭で発達障害による苦悩を抱えている方がかなりいると思われること。
・発達障害は極論社会性の問題なので、一人で受診するのではなく、周りへの相談、理解や協力が不可欠。
・大人になって気づいた時には、すでに社会基盤も固まっていて現実的には対応が難しかったり、あるいは夫婦関係や職場においてすでに関係性が破綻してしまっている方も少なくない

最後に、今現在発達障害で苦悩を抱えている方、また同僚や家族がそうかもしれないという方、仕事や家庭、関係性が破綻する前に受診してほしいし、本人は周りが思っている以上に苦悩を抱えているということを理解していただければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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