つらい過去を乗り越える〜自分自身を認めてあげるということ
※この記事は3分で読めます。最後までお読みいただけたら嬉しいです。
※ご自身のつらい体験を想起してしまう可能性のある表現を含みます。今現在治療中の方、症状がすぐれない方は読むのをお控えください。
「自分に自信が持てない」
先日とある20代の男性患者さん(Aさん)がそう言って来院されました。
聞けば、幼少期より父親から繰り返し暴言・暴力を受け続け、10歳頃に兄妹含め、みな保護のため別々の家に預けられたとのこと。状況的に壮絶な虐待が日々繰り返されていたことは想像に難くありません。
大人しそうな若者で、多少緊張はしつつも穏やかな表情で分かりやすく話を伝えてくれ、やり取りも自然で違和感がなく(神経発達症ぽさがない)自身の辛い過去を話す際には多少声を詰まらせながらもしっかりと話してくれました。
個人情報保護のためにあまり詳しくは書けませんが、私がこれまでに見てきた患者さんと比較しても、かなりの壮絶な過去を経験してきた方でした(逆境的小児期体験と言います)。
そんなAさんですが、驚いたのは外見や話しぶり、社会適応の様子からはそのような過去がある方にはあまり見えなかったことです。
仕事も転職はしつつも年単位で欠勤なく続けられており、異性との交際もそれなりの期間しっかりと関係性を築けているような方でした。
たまに虐待されていた当時の夢を見たり(再体験症状、フラッシュバック)、怒りっぽさが出たりと、幼少期の虐待体験の影響は少なからず見られてはいましたが、自身でそれを自覚し書籍などで知識をつけ対処されていたのです。
「自分に自信が持てない」
虐待を含めた愛着障害の方全般に一番よく聞かれる訴えです。親にかまってほしい時期に、話しかけても取り合ってもらえないといった幼少期の体験が続けば、大人になってから自分に自信が持てなくなるのは当然です。
Aさんには「幼少期にこれほど壮絶な体験をしながらも、今現在本当によく頑張っているし自信を持ってほしい。どうか自分自身を認めてあげてほしい」そうお伝えしました。
加えて、Aさんが自身の過去と向き合い、それを受け入れうまく対処できている一因として、神経発達症(発達障害)らしさがなかったことも挙げられます。他人の意見を素直に聞き入れ、それを正しく理解し、客観的に自分自身のことを把握すること(メタ認知)ができていたのです。
「親と関わっていない今が一番楽なんです」、最後にそうおっしゃっていたのが印象的でした。その後どうなったのか、何かサポートできることはないのか、今でもたまに気になりはしますが、便りがないのは良い便りと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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