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医者が一番わかっていない!?〜精神科治療における医師の役割とは

こんにちは、精神科医のはぐりんです。

今回はやや攻めた題名にはなりましたが、精神科医療における、特に病院内・地域における医師の役割をお伝えしていこうと思います。

精神科病院には色々な職種の方々が勤めていますが、医者はどの職種の方々にもその分野においてはかないません。当然といえば当然かもしれませんが、意外と分からなかったり出来なかったりすることが多いのです。例えば看護師さん、病棟で一番長く入院患者さんと関わり話しをしているので、病棟生活の中で医者が気づかないような細かなところでの気づきも多く、実は点滴や注射も医者より上手です。心理士さんも心理検査やその解釈においても医者より詳しいことが多いです(そもそも医者はほとんどの心理検査を実施できないです)。あと精神保健福祉士さん、法律のことや地域の福祉や介護の知識、それとコミュ力が高い方が多いですね。薬剤師さんや放射線技師さんも同様で、医事課の職員さんは保険点数やレセプト関連に関して医者の何倍も詳しいです。

特に実感するのが、入院中の患者さんが退院する際に開かれる関係者会議。精神科病院にお勤めの方ならご存知だと思いますが、入院中の患者さんがいよいよ退院するという時期に関係者を集めて開催される会議です。関係者がみな集まるこの会議、医者によるかもしれませんが、最初の3分くらい入院中の経過を話して、あとは医者は蚊帳の外と言うか、実際に地域で生活していくにあたって各専門家が注意点などを共有します(医者によってはそもそも会議に参加すらしません)。医者が下手に発言すると発言力だけはありますから(笑)無視するわけにもいかず、まとまる話しもかえってまとまらなくなったりもします。とはいえ年季を重ねるに連れて段々と慣れてきて地域の仕組みや制度もイメージできることもあるのでたまには口を挟みますが、みなさんプロなので基本的にはおまかせモードです。

では医者の役割と専売特許ってなんなのでしょうか?もちろん医者も大事な役割を担っていると思っていて、一つは全体を広く浅く把握する監督的な役割です。これまで色々な患者さんを診てきた経験則から全体の方向性を定め、たまには軌道修正をかけたりもします。患者さんが普段どういった生活を送っているのかを把握しておくことは治療にも繋がってきます。二つ目は当然、精神症状に対する治療的な側面。実際に診察して患者さんの状態を把握したり、薬の効果を判断したり、経時的な変化も含めて症状を把握して適切な薬の種類や量を選択するというのは医師しかできないことです。

やや過激なタイトルで書き始めましたが、内容的には言われてみれば当たり前の内容になってしまいました。精神科における具体的なチーム医療の様子を少しでもお伝えできたかと思います。医師一人にできることは限られていて、どの診療科にしてもそうですが医療はチーム医療で成り立っています。どの職種の方々もやりがいを持って働いているし頼りがいがある方が多いですね。

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