【医師エッセイ】清廉潔白な医療社会には程遠い
■お金の問題をなくして
見るに耐えない、聞くに耐えない、政治資金のキックバック。こういう話は我々の身近にもあります。東京大学卒、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長である上昌広先生が、医師と製薬マネーを明らかにしています。
「これまで製薬会社から個人や病院向けに年●●億の不正なお金があるのではないか?」
医師は20ドルの弁当などの利益供与があれば何らかの便宜を図ると言う報告もあり、実際、研究にそのような不正な行為が白日の元に晒されたことがあります。
こういった告発で、ステルスマーケティングがなくなる。なくなるとまでは言わないまでも減るでしょう。2023年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となりました。景表法の規制対象は「事業者(広告主)」のみ。これは薬機法の規制対象「何人(なんびと)も」という記載との大きな違いはあります。遅きに失していますが、非常によい試みです。
■インボイス制度によって
個人的にはインボイス制度に批判がありますが、税金を公平に徴収するためには必要な制度です。税金が正しく納められ、不正をするものが排除され、真面目に生きている人が評価される。そのような社会のあり方であれば、医療業界も変わるでしょう。
先発医薬品メーカーが何年もかけて開発し、長年社会において貢献してきた薬剤が、後発医薬品メーカーのずさんな管理に端を発して、入手できないなどということはあってはならないはずです。物価高、ステルス値上げもある中で、医療費も上がらない。そうなると、医療従事者の給料も上がらない。厚生労働省の報告では、医療・福祉分野の就業者数はこの20年間で410万人が増え、8人に1人が就業している。8人のうち1人と非常に多く占める人たちの給料が上がらないので、景気など良くなるわけがありませんし、少子化もますます進むでしょう。
会計検査院は、2022年度の決算検査報告書において税金の無駄遣いなどを指摘した事業は344件、金額は580億2214万円で、いずれも前年度を上回りました。
■清廉潔白な日常
さて、私の大胆予想とは、不正なお金がなくなり、適切な税金が徴収されることです。収入も上がらない、先の見えない閉塞感ばかりの中で、真面目に就業している者たちに目が向けられ、医療が華やぐ未来……とはならないのでしょうね。
なぜ、このように清廉潔白を望むのでしょうか?
私は2023年10月に高速道路上に前車から落ちた積荷に衝突する大事故に遭いました。しかし相手方は罪を逃れようと虚偽の報告をした上、謝罪すらしませんでした。それは加害者を擁護する法律さえ世の中にはあるからです。
人は嘘をつく。しかし、いくら嘘をついたところで必ずバレてしまう。私も日新工業というクソ株式会社の事故で思い知りました。そして、嘘をついたことを一生後悔することになるのだと教わってきた私とすれば、そのようなことがない世の中、そして医療を心から望むのは当然です。清廉潔白な日常が訪れることを願っています。