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■大阪出身の先輩医師


ここで、大阪出身の先輩が…。と言ってしまうと語弊があるのでしょうが、生まれは東京、育ちは神奈川県、大学は石川県の私にとって関西弁は全くと言っていいほど、馴染みがありません。

大学では全国津々浦々から学生が集まってきているので、関西弁の方もいましたが、これからお話しする先輩ほどドギツイ感じではありませんでした。なので、あれは明らかに先輩の口癖でしょう。先輩は普段から関西弁。そして先輩の口癖は、「あほんだら~」でした。

講演会や研究会など、ちょっとした集まりで私などは緊張してよく、「すみません。早口でよく聞き取れませんでしたのでもう1回お願いします」と言われてしまうことがあるのですが、先輩から言われたのは、「あほんだら~。ここで大声ださんでどないすんねん」です。

なれてしまえば平気なのですが、初めて聞いた時は怖かったですし、なれるまで時間もかかりました。だから先輩から、そんな言葉を言われると、私の場合は、さらに緊張が強くなってしまい縮こまってしまいます。すると先輩も苛立ちを隠そうともせず、「早くて聞き取れへん。おどれどつきまわしたろか」などと出るときさえあるのでした。

■口癖?方言?先輩の関西弁


先輩は頭と口がつながっているのではないか、というぐらい反応が早いので、こちらが少しでももたもたしていると、「なんや。はよせい」とすぐに言われてします。そして、何かあると実況中継みたいに、ずっと話していますし、行列に並ぶと「ほんま、おっそいわぁ。こんなん新幹線やったら博多についてまうで」なんてことも大きな声で言ってしまいます。一緒にいるとドキドキすることが多いのですが、先輩は文句だけを言うわけではありません。

「あかんがな。先生みたいに早口やったら才能の無駄遣いやで」なんて持ち上げてくれたりもしてくれます。普段から関西弁になじみがない我々は、TVで見る芸能人もこれほど口が悪くはないので、知らない先生からは大阪弁って本当にあんな感じなのかな?と、最初は疑問に思っていました。

ですが恐らくそうではなく、シャイだからこそ周りと馴染もうとして、大げさにやっているんじゃないのかという風にも言われていました。私もそう思います。

■関西弁が先輩を思い出させてくれる


先輩のいいところは何かあるとすぐに言ってくれるところです。例え言葉がきつく感じたとしても、これが悪かったんだなとわかりやすいですし、あとには引きずらないので、ねちっこく何度も嫌みのようには言われません。そうやって指摘されることで、私は鍛え上げられたのだと思います。学会発表で、ついつい下を向いて原稿を読みがちな私は、
「しっかり前向いてはなさんか。こんなもん床に向かってはなしとるやないか」
という、聞こえるはずのない先輩の声にはっとして、前を向いて発表をいまだにするぐらいですから。

ただ、先輩が厄介なのは、先輩と話したあとに大阪弁がうつってしまうことです。イントネーションがおかしくなってしまうので、みんなに変な大阪弁話しているとか、なんで関西弁始めたの?と言われたことも何度もあります。

東京で医師として仕事をしていると、関西弁を聞く機会は全くと言っていいほどありません。ただ、たまに関西弁が聞こえてくると先輩を思い出して、つい笑いだしてしまうのでした。

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