【児童精神科エッセイ】愛着を育てるということ
愛着とは「養育者との安心感・安全感を基盤とした心理的な結びつき」と言われる。妊娠中の母親には子どもを育てる力が、胎児には育つ力が遺伝的に組み込まれているが、子どもを生んだだけではスイッチが入らないようにできており、人は生まれてきたときは、一人では何もできず、養育者(主に親)の手厚い世話を受け育っていく。
お腹が空いた時、オムツが汚れた時、赤ちゃんが泣いて訴えると、親や養育者がミルクをくれたり、オムツをきれいにしてくれたりする。自分の欲求を訴えたら満たされるということが繰り返されて、心理的な信頼関係や愛情、きずな等が芽生えて、愛着形成に至るのだ。母親は赤ちゃんを抱いたり、語りかけたり、母乳を与えたり、自然のスキンシップを行う。新生児も不思議な能力で母親に反応し、ここで初めて親と子のふれあいが始まる。このふれあいにより、母親の「育てる力」と赤ちゃんの「育つ力」にスイッチが入る。愛着形成は子どもの心が育つ基本である。子どもは産まれてから成長していく段階で、親や養育者を心の拠り所として成長していく。赤ちゃんの時から繰り返すお世話や、スキンシップの中で育った安心感や信頼感が親や養育者を心の拠り所にしていく。これを心理学では「安全基地」と呼び、「安全基地」があることで見知らぬ世界や環境にチャレンジして、成長していくための自立心や自尊心が育っていく。また、「安全基地」(親や養育者)があるという無意識の安心感は、心の安定や成長に繋がっていく。
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