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二つの舞台への一歩

FCアウグスブルグと契約を交わした後初めてのバイオリンのレッスンに行った。先生は以前にバイエルンミュンヘンに呼ばれたらバイオリンを趣味にしていいけれど、それ以外だったらバイオリニストを目指せと言っていた。
僕はアウグスブルグと契約を結んだことを伝えた。すると、先生は椅子の上で上半身をのけぞりながら、細い目で僕を見て一瞬時間が止まった。”アウグスブルグのコーチと話をしたのか、コーチの指導方法を知っているのか?そのコーチに習いたいから行くのか?”と聞いてきた。鋭い質問だ。実は昨夏アウグスブルグと試合をしたときに一目見た以外はそのコーチと接触をしたことはなかった。”先生はただのチームブランドで移籍してはいけないよ、どうしてもこの人に習いたいというところに行くべきだよ。”と言った。僕はレベルが高い環境でプレイすれば、自分自身も自ずと成長すると思ったので、やはりアウグスブルグに行こうと思うと言った。”ではバイオリンのキャリアを諦めるということ?”と先生は眉をひそめた。”いや、リオはバイオリンは今までのようにできる限り続けるつもりです、現在通っている学校が終わってからではアウグスブルグのトレーニングに間に合わないし、バイオリンの練習時間も取れなくなってしまうので、アウグスブルグに引っ越して学校も転校する必要があります。全てバイオリンとサッカーの時間をとるためです。” と母が続けた。
先生はバイエルンミュンヘンならバイオリンを趣味にしていいよと言っていたけれど、先生こそチームブランドに惑わされている気がした。なぜなら、バイエルンは育成に問題があると有名だからだ。バイエルンは潤沢な資金力であちこちから良い選手を買い漁ってできているチームだからだ。だから僕はアウグスブルグで経験を積んでバイエルンミュンヘン行こうと思っている。

ところで、先週バイオリンのマスタークラスに参加した。そこで先生の師匠のAna Chumachenco先生に指導を受けた。彼女は僕の演奏を見た後、なにかスポーツをやっているのと僕に聞いた。サッカーをやっていますと答えると”あーやっぱりね、君の演奏はアスリートのようだわ。”と言われた。横から先生が”彼はアウグスブルグと契約をしたのだよ”と口を挟んできた。Ana Chumachenco先生は”両方は絶対無理だから2年くらいの間にどっちにするか決めないとね、でもサッカー選手の方が絶対稼げるよ”と笑った。Ana Chumachenco先生はサッカー観戦が大好きらしい。バイオリンもサッカーもメッシのようにプレイするといいよとアドバイスしてくれた。

マスタークラスの最終日にコンサートの演奏者として唯一バイオリン部門から僕1人が選ばれた。街の人たちが来る有料のコンサートだ。朝先生から今日弾いてね。と突然メールが来た。僕は飛び起きて、準備ができていなかったのでやばさに青ざめた。コンサートまでの七時間が地獄のようだった。本番前のピアノ合わせもうまくいかなかった。だが本番前に気持ちの整理をして落ち着いて挑めた。演奏後、拍手とブラボーが鳴り止まなかったのでもう一度ステージに戻った。
コンサート後には観客の方が僕のところに来てくれて、”あなたはまるでアクターみたいで私をすごくハッピーにしてくれたわ、あなたは必ず有名になるわ、いつ次コンサートなの?”と言ってくれた。僕は嬉しくてバイオリンもやっぱりやり続けたいと思った。


練習室からの風景
曇り空は不安な僕の気持ちを表しているようだった



コンサートホールの前には桜が咲いていた。



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