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夜森蓬
2024年3月3日 12:43
*「その特殊眼、生まれつきか?」「そうだよ」博士の問いに、レミールは頷いた。目蓋を伏したほんのわずかな眼差しからも、仄青い光が滲み出ていた。彼はうっすらと自嘲気味に笑う。「何の役にも立たないうえ、一族破滅させちゃったけどね…」「お前を破滅させようとした一族など、破滅すればいいだろう」アタール・プリジオスは表情を変えぬまま、強い語気で言う。そして、隣りの美しき僧侶
2024年3月14日 22:09
*締め切られたカーテン。暗い部屋。午前中は、ずっと部屋に閉じ込められていた。朝食も運ばれてくる。下僕の少年は外から鍵を開けて入ってくる。黙ったまま、ぎこちない手つきで配膳し、出ていくと、また鍵を閉めて廊下を歩き去る。それをいつも1人で食べていた。大概は、冷めていて不味かった。生まれたときから、そうだったので、慣れるも何も無く、何も感じはしなかった。学校に行くこと
2024年3月20日 22:00
*日が昇った。…部屋が明るさに包まれる。レミールは机に向かって座っていたが、特に何かをしていたわけではない。『水晶玉』の姿に立ち戻った、アタール・プリジオスを無言で見つめていた。アタールもまた沈黙し、眠っているかのように動かなかった。朝の礼拝から部屋に戻ってきたファンダミーア・ガロは、少年の様子を窺いながら、ゆっくりと近寄る。「…お帰りなさい」レミールは、彼女のほうを
2024年3月29日 21:39
*あの家の“鎖”を、引きちぎって、出た、あの日から。たどり着いた、今日…。…不思議な『水晶玉』と出会い、アリエル・レミネ・オットーが、新たに、生まれ落ちる…。 午後の日が差す。彼は顎近くまで伸びていた自分の黒い髪を鏡を見ながら裁ち鋏でジョキジョキと雑に切り落とし、耳たぶくらいまでの長さにした。「長さはこんなものかな…」呟くと、僧侶にもらった『髪の毛