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CASE 9 ジェニー・カラン(映画『フォレスト・ガンプ』)はAIDSで死亡?感染症非専門医が考察 HIV/AIDSの仕組みがよくわかる

はじめに

わたくしHaruくんは読者の皆様の人生の貴重な時間をなるべく使わせないように、記事を3分くらいで読めるようにいつも心がけていますが、今回は5分くらいかかっちゃうかもしれません。ごめんなさい!(ノ_<)


1994年公開の不朽の名作『フォレスト・ガンプ 一期一会』の主人公フォレストの幼馴染で彼が心から愛するジェニーのお話です。

Haruくんが大好きな映画。

〜物語の概要〜

主人公のフォレストが自分の過去を回想していくことでストーリーが進んでいきます。

フォレストは幼少期から知的障害を患いながらも幼馴染のジェニーをはじめとした様々な人物とのふれあいの中で成長していきます。フォレストとジェニーはお互い大切な存在でした。

ジェニーの人生は壮絶でした。ジェニーは幼少期に父親から虐待を受けたり、ある時期に薬物濫用など荒れた生活を送り人生に疲れてしまいます。

ある日彼女は心の支えを求めてフォレストを尋ね一夜を共にします。そしてまた去ってしまいますがフォレストの息子をお腹に宿し出産します。

その後ジェニーは病気を発症し、余命はわずかとの宣告を受けます。フォレストに連絡をとり再開を果たした2人は結婚し、息子をフォレストに託します。

それからまもなく病状は悪化し療養生活に入った彼女は36歳でこの世を去ります。

ジェニーを死に至らしめた疾患とは何か?

ネットで調べてみると、ジェニーはHIVに感染しAIDSを発症したという話が有力なようです。また、C型肝炎という説もあります(続編の小説ではC型肝炎とのこと)。
物語の中のジェニーの荒れた生活の中に病気のヒントがあります。

ではカンファレンススタートです!

CASE 9 ジェニー・カラン 診断: AIDS


【症例】36歳女性(1945-1982)

【主訴】不明

【現病歴】
幼少期に父親から虐待を受けて過ごすが父親が逮捕される。5歳の時に母親を無くしていることもあり、ジェニーは祖母の家で暮らし始める。

大学進学後はタレントになる夢を持ち始め、20歳前後で成人雑誌に写真(ヌードではない)を掲載されたジェニーは大学にバレて中退。

22歳くらいでストリップクラブ?でシンガーとして活動を始める。

20代後半でヒッピーの反戦活動に関わり始める。

29歳の時、ベトナム戦争から無事生還を果たしたフォレストと再開する。反戦活動継続のため再びフォレストの元を去るが、その後薬物乱用に走り自殺未遂を図ることもあった。疲れ果てた彼女はフォレストと翌年再開し、1986年7月4日に2人はセックスをする(29歳)。そしてその翌日に再びフォレストの元を去る。

30歳の時にフォレストの子供を妊娠・出産

31-32歳前後で生活のため真面目に働き出すが、その後HIV感染の診断を受ける。

【診断】
#AIDS
#HIV感染症

【経過】
おそらく29歳の薬物乱用していた時の注射の打ちまわしでHIVに感染。診断を受けた後フォレストと再開し結婚。その後AIDSの合併症を併発し療養生活に入る。1982年3月22日、36歳の若さで永眠。




考察


✅ ジェニーはAIDS?C型肝炎?現病歴から考察

<C型肝炎だとすると>
C型肝炎は注射の打ちまわしで感染することがあり、ジェニーは薬物乱用した場面があるため感染する可能性はあります。しかし注射の打ちまわして感染しているとしたら29歳です。

C型肝炎の多くは慢性化して10年から20年以上を経て肝硬変や肝細胞癌に至り未治療では死に至ります。

つまり言いたいことは、36歳で死んでいるとしたら遅くても25歳頃には感染成立していないと矛盾だらけということです。

そうするとジェニーは母子感染で母親から感染したのでは?ということも考えられますが、それを言い出すときりがないのでやめます(ノ_<)


<AIDSだとすると>

AIDSの場合はHIVに感染してから1-2か月でインフルエンザ様の症状が出現し、そこから数年〜10年の経過を経て免疫細胞が減少していきます。そして免疫不全に至ると日和見感染(普通は感染しないような病原菌に簡単に感染してしまう状態)や悪性腫瘍を合併してきます。

ジェニーの場合29歳で感染したとすると、35歳まで比較的元気に過ごしていることから、約6年は無症候の時期を過ごしたと考えられます。そして35歳からAIDS期となり何かしらの合併症を起こした可能性があり、余命が僅かであることを認識していたかもしれません。何故なら、その時にフォレストとの結婚とフォレストに息子を託す決意をしているからです。
この経過であれば矛盾なくAIDSで説明ができます。

以上から、私は「HIV感染症/AIDS」説に一票です。

そして、一応答えがあるみたいです。↓

”2019年、フォレスト-ガンプの脚本家エリック-ロスは、ジェニーが実際にHIV/エイズの合併症で死亡したことを確認した”

✅ 疑問点
フォレストフォレストJr.はHIVに感染していないのか?

「HIVの母子感染の確率 20-30%」
「1回の性行為での感染率 0.3%以下」


と言われています。

なのでリスクはありますが、2人が感染していなくても別におかしくはありません。

✅ ジェニーのAIDS期の合併症とは?
・物語では合併症については詳細不明です。ヒントが全くないので考察は難しいです。頻度の多いものから考えればニューモシスチス肺炎でしょうか?


HIV/AIDSについての超基本知識

〜AIDSとは〜
まず免疫システムは自衛隊でイメージしましょう!
日本の自衛隊は敵国から日本を守りますね!
免疫システムは外敵から自分の体を守ります!


〈正常の免疫の場合〉
免疫担当細胞には"ヘルパーT細胞"という司令官の役割をするリンパ球があります。そして"ヘルパーT細胞"は"CD4"という免許証を首にぶら下げており攻撃部隊の"キラーT細胞"に命令して侵入者を叩きのめします。

〈AIDSの場合〉
HIVはスパイみたいな奴です。こいつが感染すると"CD4"の免許証をぶら下げている司令官の"ヘルパーT細胞"を認識して静かに襲いかかります。"ヘルパーT細胞"は長い時間をかけて破壊され続け減少します。すると命令系統が脆弱化し、攻撃部隊の"キラーT細胞"を動員できず外敵に対する防御が弱くなるのです。これを免疫不全といいます。

免疫不全になると正常の免疫状態では感染しないような病原体にあっさりと感染したり、がんに侵されすくなります。

なお、感染者全員がAIDSを発症するとは限りません。

※言葉の整理
HIV=Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)
AIDS=Acquired Immune Deficiency Syndrome(後天性免疫不全症候群)

〜感染経路(もはや常識)〜
・性交渉(異性・同性関わらず)
・輸血
・母子感染
・麻薬の注射器での打ちまわし
・医療現場での針刺事故
通常の日常コミュニケーションではまず感染しない

〜免疫不全に伴う合併症について〜
・一般的に頻度も致死率も高いのがニューモシスチス肺炎です。健康な人は通常感染しない真菌が抵抗力のないAIDS患者には感染します。
・他にも各種臓器を侵す様々な合併症がありますが、きっと読むのが嫌になりますのでやめます。興味があればちゃんとした本を読むのをお勧めします。

〜治療について〜
・複数併用薬物治療によりウイルスの増殖や病状の進行を阻止します。
・発症してから治療を開始しても20〜40年の生存期間が見込めるとの報告があり、適切な治療で天寿を全うできる人もいます。
・日本はワクチン開発の研究も頑張っているそうです(Yahooニュース)
・『フォレスト・ガンプ』の時代背景的には治療薬が発売されていません。もしジェニーが薬物治療ができる時代に生きていたら、フォレストもJr.も3人で幸せに暮らしていたことでしょう。


ジェニーと私からのメッセージ

・もはや常識ですがHIVは

「感染しないようにする」
「感染させないようにする」

この二つに尽きます。

・コンドームの目的は避妊だけではない!!感染予防器具としてもしっかり認識しておけばそれだけでお互いの人生を守れることがあります。

・Haruくん的にはワクチンの動向にも期待です!

・HIV感染の8割以上は性交渉が原因のため性病という認識が強いです。一昔前は偏見や差別が横行している時代がありました。昨今はWHOを中心にAIDSの啓発活動が進み、以前より差別や偏見問題は改善されていますがまだまだ改善していくべき人権問題は残されています。

・確かに欲望のまま不適切な性交渉を行った結果感染を広げるどうしようもない人もいるかもしれません。しかし全員が全員そうではありません。レイプなどの不可抗力による感染者もいるかもしれないし、特に発展途上国では検査不十分のままの妊娠・出産や輸血などによる感染が相次いでいます。

正しい知識を持っておくことが重要です。不可抗力による感染者が差別されないようにしなくてはいけません。

・そして心当たりのある人はHIV検査を受ける機会があることを知っておきましょう!全ては感染の蔓延を防ぐことが目的です!

※余談ですが、Haruくんは2回HIV検査をしたことがあります。
1回目は背中のでっかい良性のホクロを切除した時のスクリーニング検査です。
2回目はここでは言えないある理由で保健所で検査しました。(//∇//)

どちらも陰性でしたが、、、

コロナウイルスだけでなく、このような感染症もしっかり予防していきましょう!



参考資料
・映画『フォレスト・ガンプ 一期一会』 脚本 エリック・ロス 監督 ロバート・ゼメキス
・yearnote 2023
・エイズ予防情報ネット


映画『フォレスト・ガンプ』より




次回予告


酒の飲み過ぎで肝硬変になった、作曲家でピアニストのベートーベンです。

お楽しみに!


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