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[本読んだ] スウェーデンのミステリ『犯罪心理捜査官セバスチャン(上・下)』

《本記事には掲題作品のネタバレが含まれるかもしれません。オチを書かないように注意してはいますが、読まれるかどうか慎重にご検討ください》

年末年始の休みを利用して読んだ本の紹介である。

『犯罪心理捜査官セバスチャン(上・下)』(創元推理文庫)
(著者:M・ヨート、H・ローセンフェルト)

本作は日本人にとっては割と珍しい(?)ような気もするが、「スウェーデンのミステリ小説」である。

2人の脚本家による共著である。
日本の岡嶋 二人(おかじま ふたり)さんみたいである。

本作を始めて知ったのは10年前くらいになる。
エルキュール・ポアロ、古畑任三郎、刑事コロンボのようなクセツヨな主人公が活躍するミステリ小説を探していて、本作に出会った。

ネットでも往々にして本作の評判が良かったことから興味を持ち、実は「上巻」は何年も前に読み終わっていた!
従って、今回は何年か越しでようやく「下巻」を読み終わったことになる。

あらすじを簡単に説明する。

※※※※※

スウェーデンヴェステロースという町で、心臓をえぐり取られた少年の死体が見つかる。
国家刑事警察の殺人捜査特別班に救援要請が出され、地元の刑事たちとともにチームを組んで捜査にあたることとなった。
かつて心理捜査官として難事件を解決した主人公のセバスチャンにも声がかかり、彼もチームに入ることになる。
しかし、この男は自信過剰で傲慢な性格をしており、その上「おセッセ中毒」で、捜査中でも関係者を口説いてベッドを共にしてしまうというクセツヨぶり。。。

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↑ 上の「おセッセ」は別に隠語にしなくともよいのだが、あまりシモ系のワーディングをズバリ書くとマークされやすくなるらしいとスズムラさんからアドバイスを受けた(何のアドバイザーやねん^^;)。

そんなこんなで、捜査官としての腕はあるもののクセツヨな主人公が、チームの輪をかき乱しながらも、徐々に事件の真相に迫ってゆくという北欧ミステリ小説である。

すでに書いたが、概して本作の評判は良い。
日本にとって必ずしも人気のあるエンタメ国とも言えない「スウェーデン」の作品が、わざわざ日本語に翻訳されて好評を得ているだけあって、結論として内容は面白かったと思う。

それにもかかわらず、、、上巻を読み終えてから下巻を購入するまで、何年もの時間が経過してしまった

正直に打ち明けると、、、上巻を読み終わった時点では、「まあ……先が気にはなりますが、、、」くらいの感想で、そこまで「すぐに続きが読みたい!」というレベルのインパクトではなかった(すみません、あくまでも私には!ということです……^^;)。

何と言うか、主人公のセバスチャンの活躍に物凄く期待して読み進めていたのだが、上巻では「あの引退した伝説の心理捜査官が現場に戻って来た!」みたいに「主人公は何か凄そうな人だ! でもクセツヨだ!」みたいな描写はあるのだが、そこまで活躍せず、「単なる面倒でスケベなおっさん」なイメージが強かったように記憶している。

ただ、ネットのレビューを見てると、「全編通して読むと、非常に面白い!」、「下巻の途中から面白過ぎて、ページをめくる手が止まらなくなった!」……など、特に下巻に対する高い評価が気になってもいた。

そんな事情もあり、上巻ではさほど気持ちを持っていかれなかったのだが、下巻が「いつか読みたいリスト」に入ったまま何年も経ってしまった次第である。

※※※※※

私は本作の「上巻」を紙の文庫本として購入し、「下巻」は電子書籍を購入した。
このあたりも、「上巻」から「下巻」に移行するまでの年数の経過を感じさせる。

電子書籍には便利な面もあり、読みかけの本を「何パーセント読み終えたか?」というのが数字で確認できる。
紙の本も「何ページまで読んだか」は分かるので、似たような話かもしれないが^^;

さて、多くのレビューにあるとおり、下巻の途中から面白くなってきた。
具体的に言うと、「70%」を読み終えたあたりから非常に面白く感じた(←遅いだろうか?^^;)

本作は、セバスチャンが明智小五郎とか古畑任三郎のようなカリスマ名探偵として単独で推理を進めるというより、むしろ刑事チームとしてのドラマの色が濃い作品であると感じた。

セバスチャンだけでなく、捜査チームのメンバーの一人ひとりのキャラクターを丁寧に掘り下げており、内面の葛藤も細かく描写している。
各々が単なる脇役で終わらず、むしろ主人公より^^; 感情移入してしまいそうな面白いキャラクターも登場する。

ちょっと間の抜けた刑事が登場したり、「警察本部 vs 所轄」みたいな対立構造が読者をヤキモキさせたり、警察小説としての面白さを描き出すことも忘れてはいない。

トリックも秀逸で、レッド・ヘリング (red herring)も上手く散りばめられ、「犯人は……この人か?」みたいに読者も何度か振り回される。

「犯人分かったぜ!」みたいに調子に乗ったことを書きたいわけではないのだが、脳内で私のスキなアメリカ人弁護士兼推理作家が書いた超有名な海外ミステリにラストが少しかぶってしまい、最後の犯人は「……あー、こっちだろうな」と分かってしまったのは若干寂しかった。

本作には、メインのトリックが明かされた後、最後の最後にちょっとした「おまけのサプライズ」がある。
映画のエンドタイトルを最後まで見ていたら、「おまけの1カット」が出て来たみたいで面白かったし、「えぇ~っ!」みたいになった。

※※※※※

私も評判の良い本作を楽しんだわけであるが、残念だった点を挙げるとすれば、私自身があまり主人公のセバスチャンのファンになることができなかった。

ポアロとか、明智小五郎、古畑任三郎、刑事コロンボ……なんかは、「かっこいい~、この人の次の活躍も気になる~」みたいに、これらのクセツヨ主人公に強く惹かれるわけだが、本作の主人公には、そこまで感情移入ができなかった。

本作の主人公は、鼻持ちならない性格であると同時に、心に大きな傷を負った人物として描かれる。
破天荒な行動の合間に苦悩に満ちた顔が見えたり、たまに思いやりが溢れ出くるといった人間臭い一面が見えたりもする。
そういう意味で、その人物に興味を惹かれないでもない。

ただ、上にも書いたとおり、本作自体がカリスマ名探偵である主人公にのみフォーカスしたような作りでなく、捜査官全員に満遍なくスポットを浴びせている。
そのような設定が、逆に性格の欠陥を補うほど主人公を輝かせることの邪魔をしてしまったのかもしれず、「主人公よりも気になる刑事キャラ」に心を持って行かれたりもした。
主人公のカリスマ性に鳥肌が立つというより、捜査チーム全員が頑張って事件を解決してゆくストーリー展開に面白みを感じた。

物語に対する全体的な印象は、「ヴェステロースの刑事たち」というような内容と感じたが、それだとあまり本が売れないのかもしれず^^; このような「セバスチャンのクセツヨ大冒険」のような設定になったのかとも感じたが、それは邪推し過ぎだろうか。

因みに、本作はシリーズ化されているらしい。
恐縮ながら、続編は読んでいないが、回を追うごとに主人公の魅力がどんどん深掘りされてゆくのかもしれない。

最後に批判的なことも書いたが、総合的に判断すると、本作は面白いと思う。
海外ミステリ小説が好きな方であれば、十分に一読をお薦めできる作品である。

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