【創作の中毒×中毒の創作(1)】
「先生、最近、小説をネットでアップしているんです」
三田は言った。
――ここは、都内の心療内科だ。
三田は、精神障害者手帳3級を持っている。
重度の発達障害である。
以前から、診察室にある、人体標本模型が気になる。
なぜ、心療内科に人体模型があるのか。
なぞだ。
どんな素人が考えても、心療内科に、人体模型は不必要な気がする。
それに人体模型は2つあり、平気な顔をして、医師の両隣に並んでいるのだった。
意味、不明である。
(キモいよ)
それに、その人体模型の着色された内臓は、江戸川乱歩の猟奇小説のような禍々しさを兼ね備えている。
狂っている?
世の中には、狂った医師も多いと聞く。
この精神科医も、例に漏れないということだろうか。
そして、今日も江戸川乱歩そっくりのメガネをかけ、頭をツルツルにそり上げた精神科医が、人体模型の中央に座っているのだった。
奇怪な老医師。
「創作、おお。創作ダンスみたいなものかね。ワシも、創作は患者に勧めている。創作は、生きる動機付けになる。人は、動機付けがないと死ぬ。ワシが強いクスリを、処方しても、生きる目的のないものは、人間に限らず、自ら死ぬ。コレはご多分に漏れない。まあ、火星人は知らないけどね。うひゃひゃ」
医師は、甲高い笑い声を上げた。
窓から、青山霊園が見えている。
夜はともかく、三田が心療内科へいく時間は、青山霊園は素敵な場所だ。
特に、不気味な雰囲気はない。
幽霊の類いも見たことがない。
怖がりの三田にとっては、一安心と言った感じである。
「操作は、続けた方が良い。ただ、あるルールだけは守った方が良い」
医師は、皮肉な笑みを浮かべている。
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