厨房03

全力の『ジュラシックパーク』ごっこ

◆ 巨匠への愛と敬意と感謝を込めて

 さいきん、幼い息子が頻繁に恐竜ごっこ、というか『ジュラシックパーク』シリーズごっこに興じ、周囲を巻き込みたがる。残念ながら彼の母と姉は恐竜に興味がなく、ティラノサウルスの腕の小ささをあざ嗤い「パラサウロロフス」も「コンプソグナトゥス」も覚えられない体たらくなので、どうしても父がごっこ遊びに参加することになってしまう。

▲ パラサウロロフス(左)とコンプソグナトゥス(右)

 思えば私がはじめて自分の意思でレンタルビデオ屋へ行って借りた映画はスピルバーグの『ジョーズ』で、小学5年生だった。しばらくの間、風呂で湯船につかれなくなったし、布団の中で足を伸ばすのも怖かった。その翌年には『ジュラシックパーク』に度肝を抜かれ、数々の天才的な名場面を何度も友人たちと再現して遊んだ。

 そして20数年後。まさか自分の子どもと共に似たようなことをやっているとは。息子がひとたびごっこ遊びをおっぱじめると、小さな脳みそが記憶している名場面を一通り再現し終えるか、転んだりぶつかったりして泣くかするまでは止まらない。「インドミナス vs アンキロサウルス」「インドミナス vs ティラノサウルス・ラプトル・人間・モササウルスの混成チーム」「ティラノサウルス vs スピノサウルス」「イルカショー風モササウルスショー」「ヤギを食べるティラノサウルス」「シャッター音に驚いて暴れまわるステゴサウルス」など、シリーズ歴代の恐竜対決シーンや見せ場に始まって――

――「厨房で子どもたちがラプトルから逃げ回る場面」「病気のトリケラトプスの診察と検便」「ラプトルの訓練」「パキケファロサウルス狩り」「『ウェルカム・トゥー・ジュラシックパーク』を渋くキメるリチャード・アッテンボロー」「絶対絶命のピンチに都合よくティラノサウルスが現れラプトルを蹴散らして吼え、〝When Dinosaurs Ruled the Earth ” と記された垂れ幕が完璧なタイミングで舞い落ちる場面」など、なかなか細かい設定まで再現したがるあたり、息子の人間的成長が感じられて微笑ましい。BGMまで付けるところがばかっぽくていい。

 そして私の心と体と時間に余裕があるときは、さらに細かくディープな、巨匠スピルバーグへの愛と敬意と感謝に満ちた世界へと息子をいざなう。「めおとティラノサウルスに両側から襲われるおじさんが超がんばる場面」「翼竜の群れに囲まれて墜落する社長のヘリ」「恐竜かと思ったらコンテナ登場、そして事故」「ローラ・ダーンが初めてパークのブラキオサウルスを見たときの顔と挙動」「ラプトルの罠にはめられた監視員マルドゥーンが『clever girl……』と呟く場面」「デブのネドリーがディロフォサウルスの毒をくらう場面」など、挙げ始めればキリがないのでもうやめとこう。幸い息子はあっけにとられることもなく飽きもせず、真剣に恐竜役を演じてはゲラゲラ笑ってくれる。

◆ ぜんぶ楽しかった前3部作

 昨年夏、15年ぶりくらいの新作となった『ジュラシックワールド』が大ヒットし映画史上第4位の興行成績を記録、2018年にはさらなる続編も公開予定で、倍以上の製作費が投じられるとか。

 早くも「前3部作同様、続編はコケる」を心配する声もがあがっているようだが、私は前3部作はすべて好きだ。当然のことながら1993年の第一作目は別格のA級として、評判が悪すぎる二作目の『ロストワールド』(1997)も、個人的には〝無駄に高級な傑作B級映画〟として擁護したい。あれは「ティラノサウルスが町で暴れまわるシーンにゲンナリ」みたいな批判が多いせいでダメ映画のイメージが蔓延してしまってて実にもったいない。公開当時、私の周囲にも「キングコングじゃないんだからさ」などとしたり顔で語る級友がいた。くだらない。そういう奴には、「おまえはあの素晴らしい恐竜狩りのシーンを見なかったのか? あのコンテナ墜落のくだりで、ジュリアン・ムーアの手の下でガラスにヒビが入っていくシーンに息を飲まなかったのか? かわいらしいコンプソグナトゥスたちが活躍してる間てめー寝てたのか?」その他いろいろスピルバーグならではの天才的なシーンや演出の数々を列挙したものだった。また、恐竜ハンターのローランドや恐竜オタクのロバートをはじめ、悪者側にいい面構えが多いのも〝B級〟っぽくてよかった。そして、続く『ジュラシックパーク3』(2001)。これがびっくりするほどの超C級映画だったのがまたよかった。A級、B級、C級ときれいに分かれた3部作なんて、かつてあっただろうか。愉快だ。あんまり悪くいわないでほしい。

 それより何より、毎回いろんな恐竜たちがあんなにいきいきと動いてる。まずそれだけで最高じゃないか。基本的に、とにかくいろんな恐竜が動けば動くほど私はうれしいし息子も喜ぶ。というわけで『ジュラシックワールド』の続編にはぜひどんどんお金をかけて、どんどん恐竜を動かしてほしい。楽しみです。

(次回ブログに続く)

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